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プロローグ 『初めての』
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大地は血に渇いていた。
無数の裂け目が大地を引き裂き、その傷口からは黒い血が滲み出している。まるで巨大な生き物の死骸のように、大地そのものが息絶えたかのよう。
1人そこにうずくまっていた。涙は乾き果て、今は只々震えている。その傍らで少年が喉を潰されたように音を立てている。ヒューヒューと風切り音のような呼吸音を漏らしながら、血の泡を吹き、それでも必死に体を動かそうともがいていた。
四肢は、まるで人形の部品のように転がっている。腕、脚、胴体、そして――頭部。どれもが生きていた証を示すように、まだ温かい。
その光景を前に、彼らの心の底から何かが這い上がってきた。今まで感じたことのない、どす黒い感情が魂を蝕んでいく。憎悪か、怒りか、或いは絶望か。それは言葉にできないほどに濁り、渦を巻いていた。
「くそっ!くそっ!」
少女の怒号が死体の散る荒野に木霊する。その声は悲鳴なのか、それとも呪詛なのか。
「絶対に殺してやる」
少年は歯を食いしばり、血の滲む唇から言葉を絞り出した。
その日、大地は血に渇き、魂は憎しみに濡れた。