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せかいでいちばんつよいひと  作者:
第1章:訓練所
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9,風組と魔術談義

 翌日の模擬戦闘訓練。ウィローはシアンと対戦していた。

 二人とも剣術も魔術も訓練所へ来てから覚えた者同士で、同期の中では真ん中か少し下くらいの強さである。しばし剣を打ち合わせていた二人だったが、シアンが少し大きく剣を振ったところで、ウィローが風魔術を使った。

「ここだ!」

 風に利き手側の肩を押されて、シアンがバランスを崩した。

「くっ」

 二番目に重い水属性という事もあって、シアンは魔術が少し苦手である。彼は魔術でやり返す事なく、少し大袈裟なくらい転がってウィローから距離を取った。

 これまではシアンの方がちょっと強いくらいだったが、ウィローが効果的に魔術を使い始めた事で、良い勝負をする様になったようだ。これからは良きライバルとして、切磋琢磨していけるだろう。


 その隣ではベルが、ラセットと向かい合う。

 昨日の今日では、さすがに細かい使い方は出来なかったようだが、ベルは剣を構えてからいきなり追い風に乗って突進した。

「うおっ、今日は随分と気合が入ってるな」

 それをどっしりと構えた剣で受け止めたラセットは、しかしいつもより若干余裕がないように見えた。

 風魔術を載せたベルの一撃は、それでも彼を崩す事が出来なかったが、意表を突く事には成功したようである。

「そろそろラセット君にも勝ちたいですから」

 そう言うとベルは一歩下ってから、再び風の後押しを受けた突進をする。いつもと違い随分と荒々しい戦い方だが、どうやらラセットを相手に力任せの勝負をするのが楽しいらしい。まあ楽しいのは結構な事である。


 そして僕はと言うと、今日もカルミンを相手に勝利を収めていた。

「くっそー!」

 カルミンは悔しがっているが、段々と目潰しに対応される事が多くなってきている。まあ目を閉じたまま戦う事が出来ない以上、全く効かなくなる事もないだろうけれど、このままではいずれ負ける日が来るだろう。カメリア教官にもこれに頼り過ぎるなと言われているし、何とかしたいところなのだが。


 そんな事を考えていたその日の昼休み。職員用の食堂で昼食を摂ってから、再び運動場へ向かおうと一階まで降りて来たところで、僕はまたしても呼び止められた。

「ライ君、こっちこっち」

 見れば空き教室の入口から、ウィローが手招きをしている。まさか四日連続で誘われるとは思わなかった。しかも今度は昼休みにだ。まあ前にも言ったが、僕はちょっと付き合うくらい別に構わない。

 そう思って誘われるままに空き教室へ入ると、そこには笑顔を浮かべたベルが待ち構えていた。隣でウィローが少し困った顔をしているところを見るに、どうやら今回の主犯格は彼女のようである。

「お呼び立てして申し訳ありません。ライ君には中々面白いアイデアを頂いたので、今度は私たちがお返しに、光魔術の新しい使い方を考えられればと思いまして」

 果たして本当に『私たち』だったのかどうか。まあそれはともかく、正直に言ってベルの奢りは怖いので遠慮したいと思っていたところだが、また魔術談義をしようと言う話なら僕としても望むところだった。

 僕らは空き教室の席に、顔を突き合わせて座った。

「まず確認なのですが、光属性で何が出来るのか教えて貰えますか? 私も光属性の人に会ったのは初めてなので」

 まあそうなるか。風属性については、一般にも知られている程度には僕も知っていたけれど、光属性となると本人でなければまず知らないだろう。前にも言ったが、魔物討伐に使えない力というのは、人々から求められていないのである。

「そうだね。まず前提として、僕は太陽の光は操れない。だから基本的に自分で生み出した光を操る事になる」

 まず僕は、リラに話したのと同じ説明をした。この辺りは基本中の基本なのだが、リラの時のような事もあるし、言われなければ分からないところかもしれない。

「あぁなるほど、そうですね。私も、いつも自分で風を生み出していますから、そちらの発想はありませんでしたけど、光属性だとそういう事になるんですね。太陽は自然の光ですから」

 実際ベルは当たり前だと言ったりせずに、納得の表情で頷いた。

「そう言えば、いつもは剣を一瞬だけ光らせていますけれど、あれは一瞬だけしか出来ないのですか?」

 続いてベルは、ふと思いついた様にそんな質問をしてきた。まあいつも目潰しばかりしていたので、そう思われるのも無理はないだろう。

「いや、光らせたままにも出来るよ。まあカッコイイだけで、特に意味はないけど」

 光属性は軽いのでやろうと思えば、訓練中ずっと光らせている事も可能である。まあカッコイイだけでランプの代わりくらいにしかならないが。

「へぇ、そうなんだ。それは僕も見てみたいな」

 しかしその話にウィローが食い付いた。記録によれば聖剣は光輝いていたそうだし、ウィスタリアの剣も斬撃を飛ばす際には光っていた。以上のような理由から、男はみんな光る剣が大好きなのである。

「見せるだけなら、剣がなくても出来るよ」

 ちょっと気を良くした僕は、実演をして見せる事にした。

 椅子から立ち上がると右の拳を突き出し、それに左手を添える。そしてゆっくりと左手を滑らせながら、そこに剣の形の光を生み出していく。傍目には何もない所から、光る剣が出現したように見えるだろう。

 正直に言うとこれは、自分が光属性だと知ってから、一番最初に練習した事である。討伐者になる光属性はほとんどいないが、それでもこれは光属性なら全員一度はやっているはずである。

「わあ、カッコイイね」

 ウィローの反応が思いの外よかったので、僕は軽く剣を振り回してポーズまで取った。この辺りも当然、練習済みである。

「なるほど、そうしていると意外と本物の剣に見えるものですね。…これを使って、何か出来そうです」

 そうして僕が光る剣で遊んでいる間にも、ベルは真面目に僕の魔術の事を考えてくれていた。僕はちょっと反省すべきかもしれない。

「例えば、こんなのはどうでしょう?」

 そしてベルは、思い付いた技の説明してくれた。

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