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せかいでいちばんつよいひと  作者: イカロ
第1章:訓練所
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6,学究都市マナベル

 訓練所のあるこの街は、名をマナベルと言う。

 サウスラントの六つの大都市の中の一つで、学究都市とも呼ばれている最も新しい街である。王都からは南へ馬車で半日ほどの場所にあり、王都を王国の心臓とするなら、ここは王国の頭脳。様々な教育機関や研究機関を集めて作られた街だった。

 マナベルは大きく三つの区画に分かれている。動物・植物・料理等の機関がある食の区画。鍛冶・服飾・音楽等の機関がある技術の区画。政治・経済・医療等の機関がある知識の区画。ちなみに訓練所は、何故か食の区画にあった。


 僕はリラに続いて訓練所の外へ出た。普段は買い物か、それこそ外食でもしない限り、訓練所の中で事足りるので、外に出るのは久し振りだった。

 ここが王都の通りなら、両側に様々な建物が立ち並んでいるところだが、各種教育機関や研究機関が街のほとんどを占めるマナベルでは、敷地を囲む塀や柵が延々と続いているのが見えるだけである。

 ちなみに訓練所の隣は、恐らく動物関係の研究所で、敷地の中には牛が放牧されており、柵の向こうからこっちをじっと見ていた。

「さあ、こっちです!」

 そういって緩やかに弧を描く道を、彼女は道なりに進んで行く。何かを食べると言っていたので、てっきり中央広場の方へ行くのかと思っていたのだが。この様子だと彼女の目的地は、食の区画の中にありそうだった。

「そう言えば、ライくんはどうして訓練所に?」

 途中、訓練所へ来た理由を聞かれたので、子供の頃に孤児院を抜け出してウィスタリアと出会った話をした。

「なるほど、そんな事があったんですね」

 前にウィスタリアの話をした時は、反応の薄かった彼女だったが、今回はニコニコしながら僕の話を聞いていた。

「私はですね…」

 僕が話し終えると今度は彼女が、聖属性持ちだと発覚した出来事を話し出した。

 何でも、働いていた農場に小型の魔物が現れて、他の人が襲われそうになったところを、彼女が夢中で体当たりして倒してしまった、と言うのが発端らしい。

 夢中だったとは言え一度魔力を使っているのなら、そろそろ出来るようになってもいいと思うのだが。

「あは、あはははは…」

 そう言うと彼女は、おかしな笑いを浮かべて早足になった。


「さあ、ここです!」

 そんな話をしている内に、目的地へと到着していた。植物関係の研究所のものだろう畑の隣にあったのは、料理関係の教育機関のようだった。しかし何故か敷地内には、幾つもの屋台が立ち並んでいた。

「いらっしゃい! しっぱ…バラエティ豊かなソーセージを使ったホットドッグ、いかがですか!」

 そんな呼び込みの台詞を聞くに、どうやら学生たちが練習で作った物を安く売っているようである。幾つもある屋台の周りは、どれも様々な教育機関の学生たちで賑わっていた。

「こんな所があったんだ」

 なるほど、ここなら奢る側の財布にも優しいだろう。奢ると言われた以上、僕には自分の財布を出す気など全くなかった。

「今まで、他の皆と来たりしなかったんですか?」

 僕の言葉を聞いて、リラが不思議そうな顔で聞いて来る。

「誘った事もないけれど、特に誘われた事もないかな。これが初めてだよ」

 まあそれ以前に、訓練生のほとんどは良いところの子息であり、僕とはそもそも経済状態が違うのである。一人だけ同じく孤児院出身のシアンもいたが、毎日食堂で顔を合わせているし、彼の方も用がなければ特に話しかけては来なかった。

「むしろ君こそ、よくこんな場所を知っていたね」

 彼女がこの街へ来てから、そう日は経っていないはずである。中央広場の店ならともかく、こんな場所をよく知っていたものだ。

「ここしばらく、放課後は探検してましたから」

 そんな彼女の言葉に、僕はささやかながら感銘を受けた。

 探検か。なかなか心躍る言葉だ。こんなところでも目先の目標に囚われ、自分の中の憧れを見失っていたのかもしれないな。

「とにかく、そう言う事なら気合を入れて楽しまないとですね。さあ、ここでなら好きな物を頼んで良いですよ!」

 まあ奢りだからといって、そこまで図々しくはなれない。

 僕は一番安い、バラエティ豊かなソーセージのホットドッグを選んだ。これまで一度も食べた事のないような味がしたが、この日食べたホットドッグは割と美味しかった。

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