表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せかいでいちばんつよいひと  作者: イカロ
第4章:英雄崇拝
PR
44/48

44,王様の執務室

 三人称視点。

 ここはサウスラントの王城にある執務室。今ここでは使用人を除き、三人の男たちが仕事をしていた。

 その内の一人であるこの城の主、サウスラント国王セオドリックは、溜め息を一つ吐いて仕事の手を止めた。すると自然に紅茶が用意される。

 彼はカップを手に取ると、立ち上がって窓の外を眺めた。

「………」

 正面には遠い祖先がホロビと戦ったと言われる中央山脈も見えたが、彼が目を向けたのは足元の訓練場である。そこには城の騎士たちを指導する兄ウィスタリアの姿があった。

 騒いでいる連中がどう思っているか知らないが、このサウスラントにおいて国王など所詮裏方である。より多くの魔物を倒す仕組みを作り上げ、それを維持する事。それこそが初代国王がこの国を造った最大の理由なのだから。

 彼も子供の頃は人並みに英雄に憧れ、兄を羨む気持ちもあった。だが今は…。

 もちろん兄の事は尊敬しているが、同時に畏怖もしていた。いくら便利な魔力を持っているとはいえ、より強力な魔物と戦おうとするなど気が知れない。

 そして、そんな兄の後に続こうとする自分の娘の事も、彼は理解出来なかった。

 だから娘の友人だという者たちと、一度話がしてみたいと思ったのだ。そして家族である二人には聞けない疑問を、その者たちに問うてみた。

 その結果。ああ英雄志願者とは、自分とは異なる生き物なのだと理解した。そう納得すると、スッと気持ちが楽になった。

 だから娘が供も付けずに、その友人たちに会いに行くと言い出した時も、彼はそれを許可した。

 英雄の仕事は、英雄とその志願者たちに任せればいい。

「はは…」

 彼は紅茶を飲み干すと、席に着いて自分の仕事に戻った。


 この部屋で仕事をする内の一人、宰相のトルーマンはそんなセオドリックの様子を横目に見ながら、用意された紅茶に口を付けた。

「………」

 彼は救世神話に登場する五人の英雄の内、二人が国を造った理由も、三人が中央山脈に残った理由も知らされている王の腹心である。

 そんな彼はセオドリックが英雄と呼ばれる兄に対して、複雑な感情を抱いている事に気付いていたし、その感情が今では兄と同じ道を選んだ娘にも向けられている事にも気付いていた。

 しかし彼はセオドリックが王になって以降の忠臣である。だからセオドリックが王としての責務を果たしている限り、その内面に関しては干渉しない事にしていた。

「ふぅ…」

 しばし紅茶の香りを楽しんでから、彼は自分の仕事へと戻った。


 そしてこの部屋にいる最後の一人、第一王子のアルバートは同じくセオドリックの様子を横目に見ながら、また別の事を考えていた。

「………」

 四人の子供たちの中で最も父と似た性格をしている彼だったが、彼にとって伯父のウィスタリアはそれこそ親子ほど年が離れている為ごく普通に尊敬していたし、妹のベルディグリに至っては年下の女性だ。それも魔力持ちとはいえ、あまり戦いに向かない風属性とあっては、素直にその身を案じる事が出来た。

 そもそも父王がやっている裏方仕事こそが王家に課せられた使命であって、英雄として魔物と戦う事は元々彼らの役目ではない。伯父のウィスタリアが例外中の例外であるだけだ。

 そんな彼が今考えているのは妹の事、そしてその妹が城に招いたという討伐者たちの事である。訓練所の同期だという話だが、さてどれ程の信頼が置けるものか。

 だと言うのに父は、妹が供も付けずに会いに行く事を許可してしまった。

 父が伯父に対して何を思い、どのように接しようと構わないが、その伯父と妹を同一視するのは止めて欲しい。

「やはり、ここは…」

 妹の事は心配だが、彼には成すべき仕事があり、自由には動けない。ここは一つ、妹の事を可愛がっている伯父に話を持ち掛けてみようか…。

 彼はそこで思い出したかのように紅茶へ手を伸ばした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ