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テオス・イストワールの世界へようこそ

 仮想空間の技術開発を重視して進めた結果、VRの技術がありえないほど発展した世界。今ではヘッドギア一つでフルダイブできることが常識となった。こんな世界で、突如として日本でとあるゲームが発売された。宣伝のためのCMが流れ始めたのも、発売三日前という狂気。VRゲーム界の異端児であるこのゲームは、発売初日の売れ行きは芳しくなかったが、SNSでゲームの情報が広まった結果、二日目から日本を飲み込み大ブームを起こした。そして、主流になったフルダイブ型のVRゲームの中でも、一線を超えた完成度にゲーマーを度肝を抜かれた。『テオス・イストワール』このゲームは、社会を巻き込んでどこまでいってしまうのだろうか…


◇◇◇◇◇


 先生の面白みのない長々しい話にオチがつき、帰りのホームルームが終わった。少しばかり急いで帰る支度をしていると友人がこっちへ走って来た。一瞬コケかけた友人に「どうしたんだ?」と問いかけてみる。


「なあ悠真、せっかくお前が大学に合格したんだからよ、記念にステーキでも食いに行こーぜ」


 ステーキという言葉に不意に気持ちが揺らいだが、決めていたことがあるからと自分に言い聞かせて何とか絶える。


「…今日は無理だ。すまん!」


「そんな、親友を差し置いてしたいことだなんて…。まさか、彼女が出来たとかか!?」


「なわけないだろ。ゲームだよゲーム」


 食い気味に否定する。女っ気ひとつもない人生を送っている俺をバカにしてんのかこら。


「そのとおり。バカにしてるとも」


「ナチュラルに心読むなよ…。俺は、取り置きしてもらってるゲームを買いに行かなければならないんだよ」


「受験期間に発表されてお前がブチ切れてたアレか。実際楽しそうだしな。ならしゃーねーか」


「誘ってくれてありがとな。今度行くとき奢るから許してくれ」


「さすがに合格祝いで奢らせるなんて鬼畜なことはしねーよ。1:3で勘弁してやる」


「ははっ、ありがたき幸せ」


 ひとしきり笑って友人と別れた。


 学校を出たあと、予約をしておいたゲームを買いにダッシュで店に向かった。


◇◇◇◇◇


「ふー、なんとか閉店する前に間に合った…。店長と仲がいいから何とか取り置きしてもらえてたけど、千円の上乗せは高校生にはつれぇよ」


 家の自室に入ってソフトを開封する。同封している世界観などについての説明はどうせログインしたらNPCが説明すると割り切り早速ヘッドギアにカセットを入れ装着する。


 フルダイブするときの意識が電子の海に沈んでいく感覚は、何回ログインしても不思議な感じがする。


◇◇◇◇◇


「テオス・イストワールの世界へようこそ!君はこの世界についての説明が欲しい?それとも聞かずに設定を決めるかい?」


 目を開けるとそこには喋る2足歩行の猫が宙に浮いていた。


「説明をしてくれ」


 そう食い気味に答える。


 すでにテオス・イストワールについては調べたが、やはり雰囲気というものは大事だと俺は思う。そのため、少し時間がかかるが聴くことにした。


「了解したよ。テオス・イストワールは、今までのVRゲームの中で二つも三つも頭が抜けたリアルなものになっているんだ。匂い、触った感覚、味などが感じることが出来るよ。これについては、設定でオフに出来るから自由に決めてね。文明レベルは中世ぐらい、君たちは開拓者としてこの大陸を繁栄させてってね。そして、この世界では現実の三倍の速さで時間が進む。そのため、一日で三日分この世界を楽しむことが出来るよ。HPが0になる、つまり死んでしまうと一定時間全ステータスが低下するから出来るだけ死なないようにね。職業、この世界でいうジョブは、一定の条件で取得できるものも多数あるから頑張って条件を満たしてね。ちなみに、ゲーム開始前の設定で初期のジョブを選んでもらうよ。そして、基本は自由なのだけれど、プレイヤーのキルやNPCの殺害など、要するにNPCに対しての犯罪行為をするとカルマ値というものが貯まっていって賞金首になって指名手配されるんだ。カルマ値が大きく貯まると処刑人のNPCがやってきて、殺されると手持ちのアイテムが半分なくなるから気をつけてね。あと、この世界で強くなるために重要なとこなんだけど、『ユニーク』などのレア度がつくものがあってそれは世界に一つだけのものなんだ。スキルや武器防具、ボスだってそうだ。だから、早い者勝ちってこと。強くなりたければ頑張って探してね。これで説明は終わりだけど、なにか質問はあるかな?」


「もしかしてその処刑人って倒せないレベルの強さしてる?」


「お、いいことに気がついたね。その通りだよ。やってくるNPCの強さは異なるけど、一番弱い処刑人ですらヒットボックスの小さい強いボスとでも思っといた方がいいよ」


「そうか。じゃあ、設定に移るよ」


「了解。ここの時間も現実の3分の1になってるからゆっくり考えて決めてね」


 キャラクターの見た目は、めんどくさいからリアルを元としてちょっと髪を伸ばしたショートヘアに変えるだけでいいかな。てことで、早速どんなジョブがあるのか見ていくか。


・剣士(短剣)

・剣士(双剣)

・剣士(片手剣)

・剣士(両手剣)

・拳闘士

・魔法使い

・騎士

    etc………


 結構種類があるな。狩人(弓)ってのがあるが、弓だと明らかにDPS低そうだよなぁ。まあ、後々成れるようになるジョブもあるらしいから一番安定しそうな剣士(片手剣)にしよう。

次に、初期ステータスポイントはどう振ろうか。


「剣を主体にして戦うとしても、いろんな割り振り方があるからな。迷うな…」


 長い間考え、考えに考えた結果。自分好みの振り方にすることにした。このゲームの強いテンプレとか知るかってんだ。


「よーし、STRとAGIに多く振って………これだ」


 頭の中で思い浮かべたように初期のステータスポイントを割り振っていく。それと、初期のジョブを設定しておく。


「こんな感じでいいかな」


Name:ベイル

──────────────

Lv.1

HP:10

MP:10

VIT:10

STR:40

AGI:70

LUC:10

──────────────

SPステータスポイント:0


 LUC以外の初期ステータスは10だったから、STRに30、AGIに60、LUCに10振った。調べた情報によるとクリティカルは基本対象の弱点を攻撃したときに発生するが、LUCを上げると弱点以外でのクリティカル発生率が0から少しずつ上がっていくらしい。そのため、LUCも上げておいた。ちなみに、何も振っていないHPとVITに関しては当たらなければどうということはない精神だ。


「設定を終了するかい?一度終了したら、絶対とは言えないけれどほぼ確実に振り直すことが出来ないけど、これでいいんだね?」


「ああ」


「じゃあ、今から君をテオス・イストワールの世界に移動させるよ。準備はいいかい?」


「ばっちりだ」


「では、テオス・イストワールの世界へようこそ!」


 視界が眩い光に包まれた。


◇◇◇◇◇


 光がやみ視界が活性化されると、噴水の前にいた。


 視界の左上辺りに『最初の街エスタ』と表示された。


「凄いな、NPCの動きが本当に人間みたいだ」


 少しばかり感動していると、肉が焼けるような濃厚な匂いが流れてきた。


「ふあっ!?こ、この匂いは肉っ!」


 匂いのする方向を向くと、何かの肉の串焼きを売っている露店があった。


「おっちゃん。一本ちょうだい」


「姉ちゃんいいセンスしてるな。はいよ。一本120グランだ」


 初心者ボーナスで貰えた一万グランから支払う。1グランがどれくらいか詳しくは分からないが、串焼きの値段的に恐らく日本円と同じぐらいだろう。


「ありがと。それと姉ちゃんじゃない、お兄さんだ」


 一応170近くあるんだがな。やはり、顔か。


「お?マジか。ホントだな、よく見たら兄ちゃんだ。こりゃすまなかったな」


「大丈夫。女顔なのは自覚してるから」


 串焼きを頬張りながら歩いていると、街の外に出れる門を発見した。前情報によると、基本的に街中にはモンスターが湧かないようなので、モンスターとの戦闘は街の外が基本らしい。そのため、串焼きを食べ切り、足早に駆けだした。


 門を出ると、そこには数多くのモンスターと戦っている人がいた。


 少し歩いていると、目の前に角の生えたウサギがスポーンした。モンスターの名前はそいつの頭上にHPバーとともに浮いて現れた。どうやらこいつは、ホーンラビットというみたいだ。


 選んだジョブ〈剣士(片手剣)〉の初心者用配布武器の剣士の片手剣を装備する。ついでに盾も貰ったが、盾は装備するとAGIに下方補正がかかるので売った。およそ、串焼き八本分だった。あ、やばいヨダレが…。じゃなくて、戦闘に集中しよう。


 片方の足を後ろに引き、立ったままで走り出す姿勢をとる。狙いを定めてホーンラビットに向かって走り出した。


 こっちに気づいたホーンラビットは飛びかかってきたが、冷静に首元を斬るとクリティカルが発生した。ホーンラビットのHPは四割ちょい削れた。ホーンラビットはダメージで怯んだので、追撃をしに行った。さきほど振り上げた剣を振り下ろしトドメの一撃を食らわせた。ホーンラビットは小さいブロックの塊が崩れるように消滅し、初めてのバトルは終了した。


《レベルが1上昇しました》


 お、レベルが上がるとこの文が表示されるんだな。


「ふぅー。なかなか臨場感があって最高だ!しかし、二回目の攻撃はクリティカルが発生しなかったな」


 1.5倍のダメージ補正がかかる代わりに発生させずらいみたいだ。


 テンションが上がってきた俺は、取り敢えずレベルが10になるまで狩りを続行することにした。


◇◇◇◇◇


 ふぅ、やっとレベルが10になった。こっからはご褒美の時間だ。


「………よし、貰えた分のステータスポイントを振り終えた」


 表示している、ステータスボードを見る。


Name:ベイル

──────────────

Lv.10

HP:10

MP:30

VIT:10

STR:60

AGI:120

LUC:10

──────────────

SP:0



「AGIが100超えると見栄えがいいな。なんとなくでMPを上げたが、剣士ってMPの使い道もしかしてない?」


 ワンチャン魔法使えるようになるんじゃねとかMPを上げたときに思っていたが、今思えば魔法使いと言うジョブがあったのを思い出した。凄いポンコツなことをした気がするが、もう振り直せないので、取り敢えず考えないことにした。


 え、MPくんのことなんてもう知らないっ!

《ちょこっと説明タイム》

・グラン:ほぼ日本円と価値が同じ。1グラン=1円

・HP:いわゆる生命力

・MP:魔法的なものを使う時に消費するもの

・VIT:防御力ようは硬さ

・STR:力 is パワー

・AGI:どれぐらい俊敏か(剣を振る速度とかにも関係する)

・LUC:幸運。ただしドロップ率は上がらない。つまり、ただのクリティカル発生率

・LUCが10上がるごとにクリティカル発生率は1%上がる

・基本的に1レベル上がるごとにSPが10貰える


《作者コメント》

 2日に1度ぐらいのペースで更新できればと思っていますので、続きがみたいと思ったらブクマでも評価でもいいんでしてください。私が喜びます。

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