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6話

2年前 万丈の入社理由


美優(みゆ)、迎えに来たぞ」


 ここは、街から少し離れた場所にある児童館。少し年季が入っているが2階建ての豪華な作りをしている。


「こんにちは万丈(ばんじょう)くん。美優ちゃん、お兄さんが迎えに来てくれたよ」


「は〜い、すぐ行きま〜す」


 宮下先生に呼ばれて部屋の奥から美優が走ってくる足音が聞こえてくる。

 

「バウ、バウ!」


 しばらく外で待っていると、美優より先にパグ犬のボスがちぎれそうなくらい尻尾を振って走って来た。


「よう、ボス、また遊びに来たぜ」


 ボスはしわくちゃな顔をより一層しわくちゃにして嬉しそうに地面に転がる。


「お兄ちゃんお待たせ!」


「おう、帰るか」


「うん!」


 学校が終わったら児童館に寄って妹と一緒に帰る。そんな日々がかれこれ数年続いている。


「あっ! しまった!」


「どうした?」


「児童館に筆箱置いてきちゃった! ごめん、取ってくる!」


「暗いから走ると危ないぞ」


 最近、日が暮れるのが早い。美優に気をつけるように注意したその時だった、俺の視線が1つの物に釘付けになる。


「おい! 待て、行くな!」


「えっ?」


 それは一瞬の事だった……先を急いでいるのか、猛スピードで走ってきた乗用車が美優を吹き飛ばす。


「美優!!!!」


 学校が終わったら児童館に寄って妹と一緒に帰る。これからも普通に続いていくと思っていた。でもそんな日々は唐突に終わりを告げた……




* * *


「う〜ん、もう少し肩の力を抜いたらどうかな?」


 ここはメタリック社の研究部。クラフトメタルのマニアとして有名な日下部(くさかべ)さんが、頭をポリポリとかきながら俺にアトバイスをする。


 妹が死んで1年が過ぎた。事故があった日の事は今でも昨日の事のように思い出す。


 どうしてあの時、引き止めなかったのか? どうしてあの時かばう事ができなかったのか? どうする事も出来ない後悔が続き、自分の無力さに絶望する日々が続いた。


 そんな時に噂になっていたのがメタリック社だった。想像力によって自由に形を変える特殊な鉄。もしその力が使えたら妹を救えていたかもしれない。


 もう今更何をしても美優(みゆ)は帰ってこない。そんな事は分かっている。だけど……だけど! もう二度とあんな事を繰り返してはいけない。そのためにも力が欲しい! 大切な人を守る為の力が!


「クソ、どうしてうまくいかないんだ!」


 もう何度目になるか分からない失敗……でも、こんなところで諦めるわけにはいかない!


「クラフトメタルは想像力が大事なのよ」


 イライラしながら思考錯誤していると、知らない女が話かけてきた。年は同じくらいだろうか? 金髪のポニーテールを揺らしながら近づいて来る。


「誰だお前?」


「私は絵梨香(えりか)。貴方は?」


「万丈だ……」


 軽く自己紹介を済ませると、女は腕を組んで唸る。


「ねぇ、どうしてそんなに焦っているの? それじゃあ上手くいかないよ?」


「んな事言われても知らねぇーよ。放っておいてくれ」


「嫌、だってあんた凄く辛そうだもん」


「お前には関係ねぇーだろ!」


「そうかもしれないけど、意外と話してみたら楽になるかもよ?」


「うるせーな、とにかく俺は力が欲しいんだ! さっさと消えろ!」


 思い通りにならなくてイライラしているせいでつい口調が強くなる。


「あ〜! そんな事言ったらいけないんだ!」


 女はガキのように頬を膨らませるとデカい声で文句を言う。めんどくさい奴だな……


「じゃあ特別にあんたが欲しがってる力をあげる。実戦場に来て」


 あまり乗り気ではなかったが、無理やり俺の手を引っ張て実戦場に連れて行かれた。体育館くらいの広さがあるな……ここで戦うのか?


「さぁ、どこからでもかかって来なさい!」


「本当にいいんだな?」


「もちろん!」


 女は胸を張って自信満々に答えた。イライラしていたから丁度いい。このうるさい女を殴り倒せば少しは気が済むかもしれない。


「しゃぁ! 行くぞ!」


 俺はとにかく全力で女に向かって突進した。体格さでは圧倒的に俺の方が有利だ! 抑え込めば勝てる。だがその考えはあまかった……


「クラフト・メタル・ガン」


 女は慌てる事なく右手を出すと、球体状のクラフトメタルが一瞬でハンドガンに変わった。

 

「おいおい、嘘だろ?」


 女が引き金を引いた瞬間、俺は後ろの壁まで吹き飛ばされていた。


「ごめん、ごめん、つい威力を上げ過ぎちゃった。まぁ、でもゴム弾だから平気よね?」


 女が慌てて駆け寄る。痛って……腹に穴が空いたかと思った……だけどこの力は凄い!


「なぁ、教えろよ! 今のはどうやったか教えろ!」


「えぇ、いいわよ。でもその前に貴方に何があったか教えて」


 女は銃をしまうと俺の横に腰を下ろす。それから俺は事故で妹を失った事をざっと話した。


「俺は……無力で何もできなかった俺自身が許せねーんだよ! クソ、どうしてあの時……」


 どうしてあの時足が動かなかったんだ? 手を伸ばしていたら届いていたかもしれないのに!


「そんな事があったのね……分かったわ、じゃあ私が鍛えてあげる! もう貴方が大切な人を失わずに済む為の力をね」


「すまねぇ……恩にきる」


 それから俺は絵梨香の元で猛練習をする事になった。




* * *


「だから、もっとこぉ〜 クリエーティブにいくのよ!」


「それじゃぁ、分からねぇ〜よ!」


 翌日、この日から絵梨香との特訓が始まったのだが、これが上手くいかない……


「どうやったらお前みたいにハンドガンが作れるんだ?」


「私を参考にするのもいいけど……もっと自分のオリジナルを表現しないと!」


「何だよオリジナルって? 俺はクリエイターじゃねぇーんだよ!」


「例えばの話よ! これだから頭が硬い人間は!」


 あれから色々試しているがクラフトメタルは一度も思い通りに形を変えてくれない。何だよクリエイティブって?


「まぁ、まぁ、2人とも落ち着いて。少しは休憩したらどうかな?」


 一歩離れて見守っていた日下部さんが苦笑いを浮かべる。


「万丈くん、アニメで見た武器とか何でもいいから真似したらどうかな?」


「真似ですか……でもパクリとか言われませんか?」


「パクリ? それは違うよ! パクリとは創作活動をしなかった人が使う言葉だよ。僕たちクリエイターは()()と言うのだよ!」


 日下部さんは自身満々にそう答えて話しを続ける。


「いいかい万丈くん、アイデアとはゼロからは生まれないのだよ。本を読んで学んだ事、旅行先で見たもの、そういった経験が思いもよらない所で噛み合う事で生まれるのだよ!」


「アイデアは知識や経験が噛み合って生まれるか……」


「万丈くんはどうしてメタリック社に来たの? 何のために力が欲しいの? その辺りを考えてみたらヒントになるんじゃない?」


「俺がここに来た理由……」


 そんな事は決まっている。もう二度とあんな悲劇を繰り返さないためだ。その為にも力が欲しい。


 どうしたらあの時、妹を助ける事が出来たんだ? すくなくとも絵梨香が持っているハンドガンでは無理だ。


 車を止めるだけの力……正面からでも受け止めるだけの強靭(きょうじん)な腕があれば助かったかもしれない。うで……腕……強靭な腕?


「そうか、それだ!」


 解決の糸口が見えたその瞬間、想像力は形を変えた。ただの球体だったクラフトメタルが俺の腕に巻き付く。


「これが俺の求めていた力だ!」


 何が来ても真っ正面から受け止める力が欲しい。その思いは鉄の拳に姿を変えて現れた。 


「やったじゃない万丈!」


 隣で見ていた絵梨香がまるで自分の事のように喜ぶ。やっと……やっと思い通りに出来た! 美優(みゆ)、見ているか? 兄ちゃんやったぞ!


「ありがとな、絵梨香! 本当に助かった!」


 その後、俺の想像を遥かに超えた戦いが待っているのだが、この時の俺はまだ知らない。今はただ、クラフトメタルが使えた事を純粋に喜んでいた。

ご覧いただきありがとうございました。

万丈の妹の魂は、多分死神が回収に向かっています!

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