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2話

「ここであっているかな?」


 翌日、名刺の裏に書かれた地図をたよりに来てみたけど……ここだよね?


 建物は白くて高い塀で囲まれていて中の様子はよく分からない。入り口にはガタイのいい男性が門番のように立ち塞がっている。何だか怖いな……


「あの……すみません」


「ん? 何だ? ここは子供が来るところじゃない」


 勇気を振り絞って尋ねてみたけど、やばい……もう心が折れそうだ。


「お疲れ様で〜す。ってあれ? 実月(みつき)くんじゃない! 来てくれたのね!」


 門番の威圧に戸惑っていると、入り口から絵梨香(えりか)さんが出てきてボクに笑みを浮かべる。


「絵梨香、お前の客だったのか?」


「そうだよ。実月くんが怖がってるでしょ? あんたはそのイカつい顔を何とかしなさいよ!」


「別に怖がらせるつもりはないんだがな……」


「鏡の前で笑顔の練習でもしてなさい! 実月くん怖かったよね〜 もう大丈だからね〜」


 絵梨香さんは少ししゃがんでボクと同じ目線に合わせると、よしよしと頭を撫で始めた。


「あの、絵梨香さん、ボクもう中3ですよ!」


 誰が見ているか分からない外でしかも年上の女性に頭を撫でられるのは流石に恥ずかしい。


「そうだったね、ごめんね。でも今日は来てくれてありがと。いろいろ案内するからついて来て!」


 絵梨香さんはそう言うと、ボクに手を差し出す。


「えっと……⁉︎」


「ほら、迷子になったらいけないでしょ?」


「でも、ボクはもう中3……」


「ほら、行くよ!」


 結局、絵梨香さんはボクの手を握って案内を始めた。

 



* * *


 早速中に入ってみて驚いたのはその広さだった。研究棟や本部、後は寮や製鉄所などが立ち並び、まるで1つの街みたいだ。


 各建物に向かう道は整備されているが、その両サイドは芝生が生い茂っていた。何人かそこに寝っ転がっている。気持ちよさそうだな……


「さぁ、着いたよ」


 本部は3階建ての白を基調とした建物だった。まだ建てられて新しいのか、傷や汚れが全くない。


「1階は研究室。クラフトメタルの実験をしているの。2階には実戦室。名前の通り実際に使えるか試す場所ね。そして3階は司令室よ」


「あの……メタリック社は一体何をする所なんですか?」


 これだけ広大な土地にこれほどの施設。しかも塀に囲まれているし、何か外には言えない凄い事をしてるのかな?


「ふふ、良く聞いてくれたわね。ここでは主に2つやる事があってね……」


 絵梨香さんの話を簡単にまとめると、ここではクラフトメタルを使って生活をより良くする()()()と、クラフトメタルを使った犯罪に対抗する()()()の2つがあるらしい。


「私は精鋭班だから主に昨日みたいな窃盗とか暴行を対処するのよね。まぁ、実月くんならすぐに精鋭班のトップになれるよ! よかったらうちの班に来ない?」


「精鋭部隊ですか? 面白そうですね!」


 なんだか興味が湧いてきて詳しく話を聞こうとしたら、


「おい、絵梨香、何の話をしてるんだ?」


 さっきの門番の人と同じか……それ以上にデカい男性がズカズカと歩いてきた。腕は大木のように太く、髪は炎のように赤い。


「あっ、番長!」


「番長じゃねーよ! 万丈(ばんじょう)だ!」


「似てるからどっちでも良くない?」


「良くねーよ!」


 2人は知り合いなのか、軽い言い合いを始める。


「ねぇ、聞いてよ万丈、この子凄いんだよ! 初めからクラフトメタルを使いこなしていたのよ!」


「初めから使いこなす⁉︎ 確かにそれは凄いな! でも精鋭部隊は危険だ。子供が安易に来る場所じゃない。帰りな」


 万丈さんがやんわりと帰るようにボクを諭す。でも絵梨香さんは引かない。


「でも本当に凄いんだよ! そうだ、万丈この子と手合わせしてみなさいよ!」


「はぁ〜? 何言ってるんだ。こんな華奢な子と俺が戦ったらまずいだろ」


「実月くん、いいよね?」


 絵梨香さんは万丈さんを無視してボクの方を振り返る。手合わせ⁉︎ えっ、嘘でしょ?


「じゃあ実月くん。もし勝負に勝ったらこのクラフトメタルを分けてあげる」


「えっ、本当ですか?」


 あの不思議なメタルが手に入るの⁉︎ 欲しい、どうしても欲しい‼︎


「じゃぁ、やってみます!」


「マジで言ってるのか? 後悔しても知らねぇーぞ」


 万丈さんの後について本部の中に入ってみたが、これまた広い! 迷子になりそうだ。何とか逸れないようについて行くと、模擬試合場Aと書かれた場所に着いた。


「ここで手合わせをするのですか?」


 縦30メートル、横25メートル、高さは13メートル、ちょうど小学校の体育館みたいな広さだった。外では決闘の噂を聞きつけて大勢の人が集まっている。


「なぁ、本当にやるんだな? 警告はしたからな?」


 万丈さんはボクに拳を向けると、その手にクラフトメタルを纏わせた。なるほど、体に纏わせることもできるんだ。


「俺はよぉ、相手が()でも手加減する奴が嫌いなんだよ。だから全力でいくぜ!」


 えっ女? ボクは男なのに……


「クラフ・メタル・アーム!」


 ボクは女の子じゃない! と訂正する前に万丈さんが一気に距離を詰めてきた。振り上げた右手の角度は34°、狙いはボクの左肩。後ろに下がれば避けられる!


「おっ、やるじゃねーか」


 計算通り万丈さんの右フックがボクの肩を狙うが外れた。


「ならこれはどうだ?」


 今度は左フックをボクに打ち込む。でも何か違和感を感じた。右足の踏み込みが浅い。これは……フェイント!


 とっさにしゃがむと、回し蹴りがボクの頭をかすめた。


「ちょこまかとすばしっこいな!」


 何とか反撃したいけど隙がない……ジリジリと壁際に追い込まれていく。流石にこれ以上は避けきれない!


「えっと……クラフト・メタル・バリア!」


 ゲームやアニメにあるバリアをイメージすると、鉄の壁が地面から出現した。悪くない仕上がりだと思ったけど……


「それがどうした? ぶっ飛ばす!」


 万丈さんが放った一撃で鉄の壁は一瞬で粉砕した。鉄の破片が地面に散らばる……


「クラフト・メタル・アーム!」


 万丈さんの右ストレートが無防備なボクの腹部にめり込む。そのまま勢い余って後ろの壁まで吹き飛ばされた。


「うぐっ……ぐっ……こっ、こんなの痛くない!」


 お腹を抑えて何とか立ち上がろうとしたけど、足に力が入らなくてふらつく……


「さぁ、どうする? まだやるか?」


 場外からは「女の子に手を出すなんて最低!」とブーイングが飛び交う。だけど絵梨香さんだけは余裕の表情でボクの戦いを見守っていた。


「もう諦めろ、これ以上殴りたくない」


 万丈さんがボクを見下ろす。後ろは壁、逃げ道は何処にもない……うん、計算通りだ!


「クラフト・メタル・チェイン……」


 さっき壊されて地面に散らばったクラフトメタルのバリアが、ボクの想像力によって鎖に変化した。鉄の鎖が万丈さんに巻き付いて動きを止める。


「おっと、何だよこれ!」


「クラフト・メタル・ナイフ!」


 ボクは残りのクラフトメタルをナイフに変えると、万丈さんの首筋に当てた。外野のざわめきが消えて静寂が訪れる。


「そこまで!」


 静まり返った施設に覇気の籠った声が響く。ナイフをしまって振り向くと、スーツを着こなした男性が拍手をしながらやって来た。

ご覧いただきありがどうございました!

次回も20時30分に投稿します♪

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