16話
第6章 旧敵
「こんにちは、今日はよろしくお願いします!」
今日の仕事はボランティア。この前と同じ児童館に来ると、宮下先生が出迎えてくれた。
「あら、いらっしゃい絵梨香ちゃん。万丈くんと実月くんも来てくれてありがとね」
「バウ! バウ!」
パグ犬のボスはボクを見つけると、全速力で飛びついてきた。勢い余って地面に倒され顔を舐められる。ははっ、くすぐったい!
「ボス! ほら、実月くんから離れなさい」
絵梨香さんに助けられて何とか解放されたけど、ボスは名残惜しそうな顔で小さく唸る。
「なぁ、絵梨香、忘れないうちに渡したらどうだ?」
「そうね。ねぇ、ボス! プレゼントがあるの。じゃ〜ん、はいこれ!」
絵梨香さんは、昨日ショッピングモールで買ったネックレスを取り出してボスに付けてあげた。
どうやら気にってくれたようで、ちぎれそうなくらい尻尾を振ってはしゃいでいる。
「あっ、実月ちゃんだ!」
「えっ、あっ本当だ! ねぇ、遊ぼ!」
外にいるボクたちの声が聞こえたのか、児童館から子供たちがわらわらと出て来た。
「久しぶり。ちゃんとお利口にしていた?」
「うん! もちろん」
子供たちはキラキラと目を輝かせてボクの周りに集まる。普段は絵梨香さんや万丈さんと一緒だから、こんな風に年下の子と関わるのは新鮮で楽しい。何だか本当にお兄さんになった気分だ。
「今日もいい天気だし、ボスの散歩に行かないか?」
万丈さんが首輪を持ってくると、ボスが「バウ、バウ!」と吠える。多分行きたいってことかな?
「わ〜い! 散歩行きたい!」
「ぼくも!」
子供たちは元気よく返事をすると、万丈さんの後について行った。
* * *
ボスのお散歩コースは以前と同じで車の通りも少なくて快適だった。子供たちはボスと一緒に道端の草花を拾い集めている。楽しそうでなによりだ。
「それにしても、前回の散歩は大変だったよな……」
万丈さんがぼんやりと子供たちの方を見ながらそう呟く。
「確かにそうね、まさかギャングのイノシシが襲ってくるとは思わなかったわ」
絵梨香さんも子供たちの方を見ながらそう答える。
「道を教えてほしいと近づいて来て、目的地はどこですかって聞いたら、キミがいる所って言ってましたね」
前回は本当に大変だった。やっぱりギャング達は危ない。ボク達で何とかしないと!
「バウ、バウ! バウ‼︎」
改めて決意をしていると、ボスが吠えながらボクらの元に走ってきた。
「どうしたのボス?」
絵梨香さんが抱き寄せて尋ねるが鳴き止まない。それどころかボスの目が鋭く光る。その視線の先には1人の男性がいた。
帽子を深く被っているせいで顔はよく見えない。でも何処かで会ったような……
「すみません、ちょっと道をお尋ねしたいのですが……」
男性はボクと目が合うとゆっくり近づいてきた。道を尋ねる……いや、まさかね。
「目的地はどこですか?」
「目的地は……」
男性はおもむろに帽子を外してボクを見下ろした。
「目的地は……君がいるところさ!」
* * *
「何で……どうしてここにいるんだ⁉︎ イノシシ!」
腕や顔の毛が濃くて獣のような巨大な体……見間違えるはずがない。こいつはイノシシだ!
「絵梨香、子供達を頼む」
「分かったわ!」
万丈さんが素早く指示を出して絵梨香さんが頷く。子供たちは不安そうにオロオロとしていた。
「脱獄して来たのか? イノシシ!」
万丈さんが腕にクラフトメタルを纏わせて尋ねると、イノシシも鋭利な爪を生やして突進して来た。
「お前には関係ない、クラフト・メタル・クロー!」
クラフトメタルの爪と拳が衝突して火花が散る。
「万丈伏せて! クラフト・メタル・ガン!」
絵梨香さんが放ったゴム弾がイノシシに向かって炸裂する。
「そんなゴム弾じゃぁ、無駄だ!」
「あっそう、ならもっとあげる! クラフト・メタル・ガン!」
絵梨香さんが左手に2丁目の銃を作って一気にゴム弾を撃ち放った。
「流石にそれはまずいな……」
危険を察知してイノシシが逃げようとしたが、
「クラフト・メタル・バリア!」
すかさずボクが両サイドに壁を作って逃げ道を塞いだ。無数のゴム弾が一気にイノシシに向かって炸裂する。
「クソ、邪魔だな!」
イノシシは手をクロスして防御の構えをとる。まさか受けるつもり? ゴム弾はイノシシにヒットしたが、地面にポロポロと落ちていく。
「何なのこいつ? 硬すぎじゃない?」
「絵梨香さん! イノシシの後ろを狙ってください!」
「後ろ? 分かったわ!」
絵梨香さんが誰もいないイノシシの背後にゴム弾を打ち込む。正面からは崩せない……だったら!
「クラフト・メタル・バリア!」
角度は38°! 敵の位置を確認して調整すると、ゴム弾は鉄の壁に当たって反射してイノシシの背中にヒットした。
「#$44332@@!1」
突然イノシシが壊れたロボットの様に喋り出した。えっ何? 怖い!
「おい、実月、あれを見ろよ!」
万丈さんがイノシシの腕を指す。流石に服にはダメージがあったようで、袖の部分がズタズタに破れていた。
「あれってまさか……」
イノシシの両腕はクラフトメタルで出来ていた。でも多分そこだけじゃない。
「最初にぶん殴った時に思ったんだが、あいつ全身がクラフトメタルだぜ。異常に固い」
「つまり、誰かがクラフトメタルでイノシシを再現したってこと?」
万丈さんがイノシシを睨み、絵梨香さんも警戒しながら尋ねる。
「多分当っていると思いますよ。どうやって操っているのかは分かりませんが……」
「クラフトメタルでイノシシを再現……あれ? でも、どうして会話が出来たのかな?」
「小型マイクでも仕込んでいたんじゃないですか? イノシシの声がおかしくなったのはゴム弾が当たって壊れたからでしょうね」
「##@!$$%#@$」
イノシシは何かを叫びながら突進してくるが、
「ここから先には行かせねぇ!」
万丈さんが前に出て受け止める。イノシシの腕はボロボロと崩れていくがそれでも動きは止まらない。
「多分、操っている人を倒さないとダメです!」
何とか攻撃を避けながら周囲を見渡してみたけど怪しい人は見つからない。
「バウ! バウ!」
猛攻を避けつつ建物の屋上や物陰を確認していると、ボスがボクの足元に寄って来た。その口にはクラフトメタルを咥えている。
「それは……イノシシの腕の一部だよね? もしかして匂いで制作者の位置が分かるの⁉︎」
「バウ!」
ボスは力強く吠えて尻尾を激しく振る。
「絵梨香さん! 万丈さん! ここはお願いしてもいいですか? 操っている人を探してきます!」
「うん、分かった。でも気をつけてね!」
「こっちは任せろ、実月!」
イノシシは2人に任せて、ボクはボスの後をついて行った。一体誰がイノシシを操っているんだ?
ご覧いただきありがとうございました。
次回、実月vs黒豹⁉︎ お楽しみに〜




