13話
キツネ(杵塚)視点
「では、現場検証をしていくので、よろしくお願いします。杵塚さん」
警官に案内されてあの別荘に向かうと、実月くんが出迎えてくれた。
彼とは以前、密売の時に出会っているが、今の私は変装して石田会長のボディーガードをしている。化けキツネと呼ばれた私の変装は一度もバレた事がない。
「刑事さんに話せる事は全部伝えました。もう解放してくれませんか?」
「安心してださい。すぐに現場検証が終わりますから」
「そうですか……分かりました」
とりあえずここを乗り越えれば晴れて開放される。大丈夫だミスはない!
「杵塚さん、聞いてますか? 中に入って下さい」
「あぁ、すみません。考え事をしてました」
扉の横には会長室と書かれた札が付けられている。内装も昨日の夜と何も変わっていない。さて、勝負といこうか!
「もう一度杵柄さんの昨日の夜から今朝にかけての出来事を教えてもらえませんか?」
「昨夜は自分の家で過ごしていました。風呂に入って寝て……朝起きたら側近の村田から『直ぐに来てほしい』と言われて現場に向かいました。まぁ、ざっとこんな感じです」
「では、直接この部屋に入ったのは今が初めてですか?」
「はい、そうです」
キツネは息を吸うように嘘をつくと部屋を見渡した。
「この豪華なベットを見たのも初めてですか?」
「初めてです」
「窓から見えるこの景色もですか?」
「初めてだと言ってるじゃないですか」
キツネは少しイライラしながら答える。
「じゃあ、隠し金庫のことも?」
「えっ? 何の事ですか? 知りませんよ! 棚の裏にある金庫なんて」
そこまで言ってキツネはやばいと気づいた。今度は実月くんが驚いた様子で私を見る。
「あれ? 今どうして棚の裏とおっしゃったのですか? ボクはただ隠し金庫としか言ってませんよ。皆さんも聞きましたよね?」
実月くんが振り返ると、絵梨香くんと万丈くん……それから新米刑事が現れた。やられた……でもまだ慌てるな。まだ修正できる!
「さっ、さっき見えたんですよ。この部屋に入る時にちらっと」
キツネはとっさに誤魔化すた為に嘘とつく。
「そうですか……ちなみにどの棚の裏ですか?」
「あれです。あの壁際に置いてある茶色い棚の裏です! ほら見て下さい」
キツネは慌てて棚をどかしてみたが……
「なぁ⁉︎ どういう事だ⁉︎」
何故か昨日の夜まであった隠し金庫が無くなっていた。
「まだ気づきませんか杵塚さん? もう一度部屋の札をよく見たらどうですか?」
「部屋の札?」
言われた通り部屋を出て確認してみたが確かに会長室と書かれている。だけど妙に分厚い。嫌な予感がして剥がしてみると、その後ろから空き部屋と書かれた札が出てきた。
「ここはただの空き部屋です。ただし会長室と全く同じ内装を再現しました。あなたがクラフトメタルで鍵を作ったようにね」
(くそっ、そこまでバレていたのか!)
「えっ? ここ会長室じゃないの?」
後ろで見ていた絵梨香くんがキツネと同じように驚く。まさか味方にも話していなかったのか?
「昼休みに言ったじゃないですか、実際に現場は使わないと。流石に本物の事件現場を使ったらベテラン刑事さんにまた怒られますから」
実月くんが肩をすぼめてボヤく。
「あの、クラフトメタルで家具と鍵を再現するとは、どういう事ですか?」
いまいち話について来てない新米刑事が手を上げて質問をする。
「えっと、簡単に言うと想像通りに形が変わる鉄があるんです。それがあれば家具や鍵だって簡単に作れます。盗む必要なんてありません。あってますよね?」
実月くんが確認するようにチラッとキツネの方を見る。ダメだ……返す言葉が見つからない……
「なぁ実月、それにしてもよく会長室を再現出来たな。バレない様に覗きに行ったのか?」
「いえ、違いますよ万丈さん。一緒に見たあの1回だけです。あの時に家具の配置を全て覚えました」
随分と簡単そうに実月くんは答えるが普通の人では到底真似できない芸当だ。なるほど、黒豹さんが気に入るわけだ。
「あれ? でも実月くん、どうやって赤い絨を再現したの? 棚も茶色だよ? クラフトメタルは黒一色なのに……」
赤い絨毯、茶色い棚、おそらくそれは……
「実は以前、タヌキの拠点に忍び込んだ時に便利なものを頂いたんです」
案の定、実月くんは3色のクラフトメタルを取り出した。いつもタヌキが偽物フィギアを作る時に使っていた3色クラフトメタル……まさか利用されるとはな……
「これを使うと様々な色を再現する事が出来るんです! 杵塚さん、もう一度聞きますがどうして棚の後ろにある金庫の事を知っていたのですか? どうしてこの部屋に入ったのが初めてだと嘘をついたのですか?」
いよいよ逃げ道がなくなった。何も言い返す事が出来ず黙っていると、
「その辺にしてやれ」
ベテラン刑事が部屋に入ってきた。
「実月と言ったな、素人だと思って見下した態度をとってすまなかった」
ベテラン刑事が実月くんに深く頭を下げると、手錠を取り出して近づいて来た。
「まだだ! まだ終わっていない!」
こうなったら仕方ない。キツネは覚悟を決めると、窓に向かって走り出した。バリン! と音を立て窓ガラスが割れる。そのままキツネは着地と同時に前転をして勢いを殺した。
「待て! 逃げるな!」
予想通り実月くんが私を捕まえようと窓から顔を出す。よし、今だ! ヘビ!
私が合図を送ると。林の奥から乾いた発砲音が聞こえて来た。
ご覧いただきありがとうございました♪
密室事件を書くのは本当に大変でした……長編ミステリー作家さんは凄いですね……
と、タイトルを変えました!(えっ?)




