12話
第4章 狐と天才の化かし合い
ここは街から少し離れた別荘。1階がダンスホール、2階は似たような部屋が無駄に沢山ある。持ち主はメタリック社の出資者であり会長の石田。
キツネ(杵塚)の任務はこの人が所有しているクラフトメタルを盗む事。黒豹さんの話では会長が持っているクラフトメタルは、不純物が全く無い純度100%らしい。
「さてと、では始めますか。確かこの辺に……あったあった」
キツネが壁際に置かれた茶色の棚を移動させると、隠し金庫が現れた。暗証番号は確か会長の生年月日とメタリック社の創立日だったな……
「よし、開いた」
中に入っていたクラフトメタルは、純度100%だけあって漆を塗ったように光沢を帯びていた。
「では頂きますね」
キツネはクラフトメタルを奪うと2階の窓から外に投げ捨てた。この後ヘビが回収するはずだ。
「それでは、会長、おやすみなさい」
キツネは窓と寝室の鍵を締めたことを確認すると、夜の街に消えて行った。
翌朝……
「ない、ない! ない‼︎ ワシの大切なクラフトメタルがない! おい村田! 知らないか⁉︎」
翌日、まだ早朝にも関わらず石田会長の叫び声が別荘に響く。
「村田、杵塚を呼べ! それと警察にも連絡をしろ!」
「はい、分かりました」
側近である村田が電話をかけると、黒塗りの車が別荘にやって来た。中から会長のボディーガードを務めている杵塚が降りて来る。
「杵塚! ワシの大切なクラフトメタルが盗まれたんだ! 犯人を捕まえてくれ!」
会長は杵塚の肩を激しく揺すって訴える。当然、この男こそが犯人とは知らずに。
「まぁ、まぁ、会長、落ち着いて下さい」
「落ち着いていられるか!これは窃盗だ!」
石田会長が怒りのあまり体を震わせて喚いていると、2台のパトカーが到着した。中から年配の刑事と新米刑事のコンビが降りて来る
「詳しい事は署で聞かせてもらいます。よろしいですかな?」
「はい、もちろんです。必ず犯人を見つけて下さい!」
こうして、石田会長と側近の村田、最後にボディーガードの杵柄はもう一台のパトカーに乗り込むと、署に向かって行った。
* * *
「さて、どうしたものか?」
現場に向かうと、ベテラン刑事さんが部屋を見渡した。
「盗まれたのは昨日の夜……出入り口はこの扉が一つ……窓は閉まってるなぁ……」
「あっ、警部! 署から電話が来ています」
「代わりに出てくれ」
「分かりました」
言われた通りに新米刑事が応対していると、ベテラン刑事がふと顔をあげて外を覗いた。
「ん? 何だあの3人の子供たちは?」
「えっ子供たち?」
「ちょっとついて来い」
「あっ、はい、分かりました」
新米刑事は電話を切ると慌ててベテラン刑事の後を追いかけた。
* * *
「初めまして、メタリック社の精鋭部隊に勤めている絵梨香です」
「同じく精鋭部隊の万丈です。それと、こいつが実月です」
2人がいかにもベテランそうな刑事さんに挨拶をすると、
「あんたらがクラフトメタルの専門家か? まぁ、あまり邪魔するなよ」
刑事さんはいかにも嫌そうな顔でチラッとボクたちを見る。多分、こんな子供が来たから目障りなんだろうなぁ……
今回の仕事はこの館で起きた窃盗事件を解決する事。メタリック社が関係しているため警察に全て任せるわけにはいかない。
「あの、状況を教えてもらえませんか?」
ボクがそう尋ねると、『何だこのガキは?』っと言いたげな目で睨まれた。
「私は忙しいんだ。おい、新米! 代わりに説明してやれ」
「はい、分かりました!」
ベテランの刑事さんはそれだけ言うと別荘の中に入ってしまった。
「なんだよあの刑事! なんかムカつくな」
万丈さんが不満げに愚痴を言うと、新米刑事さんが申し訳なさそうに謝る。
「うちの上司がすみません。腕は確かなのですが口が悪くて……皆様がクラフトメタルの専門家ですね? 今日はよろしくお願いします」
新米刑事さんはさっきの人とは違って律儀に挨拶をする。
「では、早速説明しますね。今回の被害者は皆さんご存知のメタリック社の会長である石田さん65歳。昨夜、何者かによってクラフトメタルを盗まれました。話によると扉には必ず鍵をかけていたそうです。よければ現場ものぞいてみますか?」
「はい、是非!」
新米刑事さんに案内されて事件現場に行くと数名の警官が作業をしていた。なんかドラマで見るような光景だなぁ……
「なんだ? 来たのか? 色々と触れるなよ」
相変わらずベテラン刑事はボクらを見ると嫌そうな顔で念を押す。
部屋の中はどれも高そうな家具が並んでいた。床には真っ赤な絨毯が敷いてある。ベットも大きくて豪華だ。
「あの、先ほど扉の鍵は閉まっていたと言ってましたが、窓はどうでしたか? 何処か抜け道があったりとかは……」
「窓? 当然閉まっていましたよ。抜け道? そんなものはありませんよ」
新米刑事がボクの質問にそう答える。
「なるほど、つまり……密室状態だったという事ですね? ちなみにこの部屋の鍵は他に誰か持っていますか?」
「いいえ、会長しか持っていません」
「そうですか……なら犯人が鍵を盗んだのでは?」
「いいえ鍵は盗まれていませんでした……」
新米刑事さんは苦渋の顔を浮かべて首を振るが、絵梨香さんは何かを閃いたのか手をポンっと叩く。
「つまり……この密室事件のキーはこの部屋の鍵なのね」
絵梨香さんは何処か楽しげな声で言ったが、すぐに不安そうな顔でボクを見る
「あれ? 実月くん、気づかなかった? 鍵とキーを掛けていたんだよ? 扉の鍵が掛かっていたように」
「あの、絵梨香さん。今真剣に考えているので」
「あっ、はい、すみません……」
ボクが少し強く注意すると、絵梨香さんはしゅんと肩を萎めて謝る
「おい! そろそろ出ていってくれないか? 仕事の邪魔だ」
現場の検証をしていたベテラン刑事がギロリと新米刑事を睨む。
「ですが、この方たちはメタリック社からの……」
「いいから早く行け! 仕事の邪魔だ!」
「はい……すみません」
ベテラン刑事の剣幕に押されボクたちは一度外に避難した。
* * *
「でもどうやって忍び込んで盗んだのかしら?」
外のベンチに座って館を見上げていると、絵梨香さんが腕を組んで唸る。
「それなら思いつく方法が1つあります。このやり方なら鍵を盗む必要がありません」
「えっ? それ本当か?」
隣に座っていた万丈さんも興味深そうに食い付いた。
「はい。まぁ、あくまで可能性の1つですが……」
ボクがそう前置きして説明しようとすると、
「その話、詳しく教えてもらえませんか?」
さっきの新米刑事さんがやって来た。
「構いませんが、その代わりにそちらの情報も教えてくれますか?」
「うん、そうだよね。話すけれどくれぐれも内緒でお願いね」
新米刑事さんは周りを見渡して誰もいない事を確認すると手帳を取り出した。
「壁際にあった茶色い棚があったでしょ? 試しに動かしてみたらなんと隠し金庫が出てきたんだよ」
「えっ? 本当ですか!」
「絵梨香さん。声が大きいですよ」
ボクが注意をすると、絵梨香さんは慌てて口に手を当てた。
「犯人の狙いはこの金庫だろうね。じゃあ、鍵が必要ない理由も聞かせてもらおうかな?」
「それなのですが、もう少し後でもいいですか? 一緒に聞かせたい相手がいるので」
「聞かせたい相手? 誰ですか?」
「側近の2人です。まずは杵塚さんと一緒に現場検証しましょう」
「おいおい実月、また行くのか? ベテラン刑事に怒られるぞ」
万丈さんが嫌そうに渋るが問題ない。
「安心してください。実際の現場は使わないので」
それから数分後、1台のパトカーから杵塚さんが降りてきた。
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