6 分からない状況
目が覚めると、俺はベッドの中にいた。そして・・・、俺の脇にはセリーヌが寝ている。
これは何? 状況が分からない。
俺は目をつぶった。多分、夢だろう。目が覚めれば・・・ しばしの沈黙・・・
これは夢じゃない。リアルだ。
俺の左を見る。やはり、セリーヌが寝ている。間違いない。寝顔が綺麗だ・・・
そんなこと思ってどうする。状況を考えろ。どうなっているのか、サッパリ分からない。
目覚めた以上、起きよう。
ベッドを離れても彼女は寝ている。狸寝入りか? 良く分からない。
洗面所は何処だ? ここは・・・ ホテルじゃない。俺の宿泊しているホテル・カルディナルじゃない!!! 誰の家?
俺は寝ている(多分そうだろうな)セリーヌを起こそうと、軽く彼女の肩をゆすってみた。一度じゃ起きないので、二度三度とゆすった。
「セリーヌ、起きて」耳元でささやいた。すると、彼女起きた。
「おはよう、ハジメ」
「おはよう、セリーヌ」
彼女の日本語かわいい。フランス語も良いけど、少し、イントネイションの可笑しい日本語はたまらなくかわいい。
おっと、こんなこと考えている場合じゃないよ。早く聞かなくちゃ。
「セリーヌ、ここは何処なの?」
「テスのマンションよ」
「なんで俺がいるの?」
「昨日のこと、覚えてないの?」
「ごめん、覚えてない」
「貴方、私を愛しているって言って、後は分かるでしょ」
「今、なんて言ったの?」
「私達は愛し合ったの」
「日本語で言ってるよね、フランス語で言ってくれる?」
「ヌヌソム・エメ・トゥトゥラニュイ」
「それ、日本語に訳して」
「私達は愛し合ったの」
「本当?」
「本当よ」
「そうなんだ」
「そうよ」
驚天動地、茫然自失、顔面蒼白、沈思黙考。
パニクるな、冷静になれ。よ~く考えろ・・・ 彼女の言ってることは、正しいのか? パーティーで酒を飲んでて、テスとセリーヌと会話して。それから・・・ 記憶にない???
待て、待て。思い出せ、思い出せ。
記憶が飛んでる。そんなに酒飲んだか?
「セリーヌ。記憶がないんだ、覚えていないんだよ」
「しっかりしてよ」
「テスを紹介されて、3人でお酒や会話を楽しんだことは覚えているんだけれど。その後が・・・ 分からない」
「パーティーの後、あなた泥酔していて、ホテルに送ろうとしたけど、全く起きなかったの。
それで仕方なくテスの部屋へ運んだの。そしたら、貴方いきなり起きて私を押し倒したのよ。嫌がる私を無理やり・・・」
「えっ、えええ!!!」
「ビックリしたのは私の方よ。突然なんですもの。『止めて』って何度言っても貴方『セリーヌ愛してる』の一点張りでしょ。それで、情にほだされたというか、諦めたというか。兎に角、男性の方が女性より力は強いでしょ。結局、私が根負けしてね・・・」