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5 テス登場

セリーヌに続いて新しいフランス女性の登場です。

 セリーヌは俺に気を使ってくれたのか、彼女の知り合いに俺を紹介してくれた。

グランクレマンさん、パリ都市圏事務局。べグブデさん、ブイグ社勤務。セリーヌやピエールなら分かるが、フランス人の名前は一度言われた位では無理だ。

結構な会社役員や国家公務員だと紹介されたんだけど、正直いってチンプンカンプンで当たり障りのない会話しか話せなかった。

 それはそうですよ。フランス語で喋られても分からないから、セリーヌの通訳で内容を理解して言葉を返す状態が続き、段々落ち込んできた。


 俺に元気がないのが分かったのか、赤ワインにフルーツをふんだんに入れたパンチを彼女が持って来てくれた。良く冷えていて、口当たりの良い飲み物だな。アルコールが入って、気分が高揚したんですかね。腹が減ってきた。

 オードブルは初めて見る物ばかりで、知らない物ばかり。多分日本じゃ食べられない物なんだろうな。何でも良いから手に取って口に入れた。美味しいものばかりだ。それに量が多くて腹持ちが良いし、いろどりが良くて、ついつい手が出てしまう。


 何杯目かのパンチを飲んでいると、綺麗なフランス女性が一人、こちらにやって来て、セリーヌと話しだした。時折、俺を見てほほ笑む。

 誰だろう?


 「ハジメ、紹介するわ。テレサよ。今日のホストなの。日本語は話せないけど、英語なら少しは話せるわ」


 「アンシャンテ、ハジメ。私はテレサよ。テスと呼んでね」

 なんて、涼やかな声なんだ。

 「アンシャンテ、テス。ハジメです」

 セリーヌも美人だが、テスも美人、と言うよりも麗人、佳人の類だな。


 「仕事でフランスに来たのですね」

 「はい。しかし、買い付け前のリサーチ段階です」

 高校の英語でも通じる。テスがゆっくり、はっきり喋ってくれるので、非常に聞きやすい。俺の英語も満更でもないか。

 テスの会話は楽しく、客を飽きさせない。慣れているんだな、こんなパーティーは。


 会話が弾み、お酒も美味い。時折、絶妙なテスのボディタッチが会話のアクセントとして入る。

 一遍に、俺はテスの艶やかなその魅力の虜になってしまった。惚れっぽいのは俺の欠点だけど、セリーヌやテスを見れば俺の気持ちが分かると思うよ。


 しばらく、3人で会話を楽しんでいると、変だな、呂律が回らなくなってきた。結構飲んだからな、飲み過ぎた?

 セリーヌの顔もテスの顔も、俺に向かってほほ笑んでいる。


 ほほ笑みながら、俺の目の前が真っ暗になった。しかし、周りの声は暗闇の中でも聞こえる。セリーヌの声だ。何かテスと話しをしているようだが、フランス語なので意味が分からない。

 段々と俺の意識が薄れていく。セリーヌの声も徐々に聞こえなくなってきた。すーと俺の意識が飛んだ。


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