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42 最後迄秘密にしよう

 今回が最終話となります。半分は実体験ですので、面白くなかったかも知れませんが、ご容赦願います。

 「ハジメ、聞いて欲しい事があるの」

 「何だい?」


 「私ね、貴方とテスの事疑ったの・・」

 俺は心臓が止まりそうになった。何か弁明しなくては。

 「んんん。黙って聞いて。私、起きて貴方達を見て、直ぐに気付いたのよ、二人の服が皺だらけなのを。私はこんな男と結婚するのか、友を裏切る行為をする人と付き合っていたのかと。それで情けなくて、情けなくて。だけど、不思議な事に涙は出てこなかったのね。良く言うでしょ。『心にポッカリ穴が開いたようだ』と。そんな心境だったの。先の事が考えられなくなって、どうしたら良いのか分からなかったの。でもね、テスの説明を聞いて納得したわ。二人の服装が皺だらけなのも、二人からシャンプーリンスの匂いがしたのも。私から悪魔を追い払う為に、二人で悪魔祓いをしてくれたからだと。私、何て浅ましい女かしら。私の為に色々してくれた、そんな二人を疑うなんて。恥ずかしいやら、情けないやら・・・ ゴメンねハジメ」

 何も言えなくなった。セリーヌは黙ったまま俺を見ている。沈黙が少し続いたが、その雰囲気に耐え切れず、俺は口を開いた。勿論、テスとの事は話さないと決めたから、それ以外の事だけど。


 「息災法と言って、仏の力で心身から魔を取り除く方法をテスに手伝ってもらってやったんだよ。護摩を焚くから熱いのなんのって、体中から汗が噴き出て来るから、下着迄お漏らししたようになったんだよ」

 少しお道化て喋ったら、彼女クスリと笑った。幾らか気持ちが楽になったかな?

 「それでシャワーを浴びて汗を流し、着物を洗濯機で洗っている間食事をしていたら、君が起きて来たって訳さ」

 都合の良い事に洗濯機の音も聞こえているから、信憑性はあるね。

 「だから心配いらないよ」


 「ゴメンね」

 「良いさ」

 そう俺が応えるとセリーヌが俺に抱きついてきた。その流れのまま俺がソファーに倒れ、彼女が俺の上に乗っかるように抱き合う。彼女、俺の唇を犯すような激しさでキスをしてくるので、彼女の身体を優しくさするようにタッチして、唇を離した。


 「待って。未だ午後だし、日も高いから待って」

 「どうして?」


 「『どうして』って言われても」

 「良いじゃない」


 「良くないよ」

 「何で?」

 何日か前にこのシチュエーションあったな?


 「俺は護摩行で疲れているし、君も厄払いした直後だから、こういう時は何時間か静かにして、心身の落ち着きを図るんだよ。そうしないと体調に変調をきたす恐れがあるから」

 「そうなの?」


 「そうだよ」

 「そうなんだ」


 「うん」

 何とか彼女を落ち着かせようと言うよりも、今求められても応えられるかどうか分からないから、適当に誤魔化したんだけど。彼女納得したような、しないような。狐につままれたような顔をしている。半信半疑な気持ちだってのが分かるから、夜に為ったらどうなる事やら。



 午後の10時を過ぎ、辺りは暗くなった。夜は思ったよりも早く来てしまった。



 「どういう事、ハジメ」

 「『どういう事』って」


 「何で元気がないの?」

 「何でだろう」


 「絶対おかしい」

 「そんな事ないから」


 「いいえ、可笑しい。私を愛してないの?」

 「愛してるよ。本当だよ」


 「嘘。愛してないのよ。だからこんなんなのよ!」

 日本に帰ってもこんな事が続くんだろうか。十分勤めは果たした積もりなんだけど。そんなに何度も求められても、体力というものには限界があって・・



 昨日の夜の事は言いたくない。セリーヌは文字通り憑き物が落ちた事が幸いしたのかすこぶる元気で、反対に俺は護摩行とテスとの事で粗方体力を消耗した後だったから、彼女の要求に全て応じる事は出来なかった。

 それでも努力はしたつもりだから、不満タラタラって訳ではないんだろうけどね。


 7月のパリ近郊の朝は、日本と比べると結構遅いんだ。夜が遅い分朝も遅くなる訳で、7時頃から白むからどうしても起きるのが遅い。決して昨日の夜が激しかった訳ではないよ。

 俺が起きた時には既にセリーヌは、朝食の準備を終えていた。相変わらずのカフェオレとフランパンだけ。毎日同じメニューだけど、もう慣れてしまった。

 「おはよう、セリーヌ。サバ?」

 「おはよう、ハジメ。大丈夫よ」


 「良かった」

 「ええ、良かったわよ」


 「何が?」

 「何がって、知ってるでしょ?」


 「え? 何を?」

 「意地悪」

 何を言っているのやら。



 こうして俺達は普段の生活に戻り、数日後、日本に向かったんだ。セリーヌの両親は見送りに来られなかったが、姉妹の一人が見送りに来てくれて。勿論、テスもね。

 20数年過ごしたナンテールを離れ、見知らぬ異国に向かうというのに、彼女全然しんみりしていない。はしゃいでもいないんだけど、落ち着いていると言うか、肝が据わっているという雰囲気だね。

 何はともあれ、日本で二人の生活が始まる。“終わり良ければ全て良し”だ。それとも“言わぬが花”かな? いやいや、今回の場合は“知らぬが仏”だね。


 読んで頂いて有難うございました。次回作候補が2本ありまして、1本はアダルト向けの章があるのですが、書き換えようか思案六法です。暫し、時間を頂きます。

 

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