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3 迎えはセリーヌ

 翌日9時前、ホテルのロビーで俺は迎えを待った。7時には目が覚めていたんだけど。新聞もテレビのニュースも全部フランス語なんで、何が何だか。手持ち無沙汰のまま食堂に向かった。

 朝食はフランスパンとカフェオレ、それに洋ナシ。結構慎ましい食事ですね。一般的な家庭の朝食ということです。

 時差ボケはなかったですね。旅行本には東行き(フランス行)はOKで、西行き(日本行)がヒドイそうです。


 9時を少し過ぎ、一人のフランス人が俺の方に向かって来た。周りのソファには誰も座っていない。

 凄く綺麗な女性だ。身長もピエールより高くて、スタイル抜群。彼女なの? フランスに来て良かった。これですよ、こういう出会いを待っていました。


 「ボンジュール。アンシャンテ。ジュスイ、タナカ」〇〇の一つ覚えじゃないけれど。俺はソファから立ち上がり、満面の笑みを浮かべて右手を差し出した。


 「おはようございます」

 日本語だ。

 「日本語話せますから。セリーヌです、よろしく」

 なんてツイてるんだ!!!

 「通訳もしますから」

 神様、ありがとうございます。モンデュウ。

 どうしようかと悩んでいたのが吹っ飛んだ。ラッキー。いや、フランスだからボン・シャンスか?

 昨日のピエールといい、今日のセリーヌといい、何てフランス人は日本語を知っているんだ。日本国の対ヨーロッパ政策の成果ですかね。クールジャパン万歳!!!


 「本日は本社で副社長のアレクサンドルがJC社の概説を致します。その後、各国毎に担当者と交渉して頂きます。私は日本担当になりますので、宜しくお願い致します」

 「こちらこそよろしくお願いします」


 セリーヌの運転する車でJC本社に向かった。アメリカ、イタリア、チュニジア、ドイツなど色々な国から来てるそうだ。

 

 10分程で本社に着いた。宮殿のような建物で驚いた。まるでベルサイユ宮殿の縮小版のようだ。なんでも、地元ではパレスとよばれている、と彼女が教えてくれた。

 外見が豪勢だけじゃない。建物の中もハッキリ言って凄かった。観葉植物なんてもんじゃない。4mはあろうかと思う木ですよ。樹木がいたる処に、大きなプランターに植えられて配置されている。

 ボタニックガーデンか?


 セリーヌに案内されて、2階の会議室に入った。10数人の外国人(俺もそうだけど)がいる。後ろの席に二人で腰かけたけど、どの席がドイツ人で、どの席がイタリア人なのか、俺には判別できない。

 ヨーロッパの人間からしたら、日本人と中国人、韓国人の違いが分からないのと同じなんだろうな。


 しばらくして副社長のアレクサンドルが入って来て、説明を始めた。フランス語だけどセリーヌの通訳でなんとか助かった。

 良く見ると、俺以外に通訳を付けているバイヤーがいない。こいつらフランス語が分かるのか? 俺は通訳の合間に彼女に尋ねてみた。

 「彼らはフランス語が理解できるの?」

 「ヨーロッパは元来、ローマ帝国の影響下にあったの。そこから枝分かれしたので、例えばスペイン語とフランス語やイタリア語は、ラテン語が母親のようなものなの。ですので、この三ヶ国の言葉は学習しなくともある程度理解できるの。但し、英語やドイツ語はアングロサクソン系なので、一寸違うわね」


 「セリーヌは何か国語喋れるの?」

 「スペイン語、イタリア語、英語なら喋れるわ」


 「俺なんかフランス語は“アンプ”だからね」

 「それは分かるわ。貴方のアクセント可笑しいもの」

 ハッキリと言われた。仕方ないか。それにしても何ヶ国語も話せるなんて、どういう頭してるのか? うらやましいやら、自分が情けないやら。


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