2 ラ・デファンスに到着
成田国際空港からANX航空でフライト。シャルル・ド・ゴール国際空港には12時間で着いた。直行便で向かうと、偏西風の影響で行きは12時間、帰りは11時間かかるとフランス旅行の本に書いてあった。
空港の時計は午後4時を指している。成田を午前11時に出発したから、日本では夜の11時になるはず。時差7時間と本に書いてあった。本当だ。少し感激した。
チューブで覆われたエスカレータを上下している内に税関に着いた。
税関は何処の国も同じで、目的と申告品の有無だけを聞き、何もなければOK。
到着ゲートを出ると、凄い!!! みんな外国人だ。書いてある文字もみんなフランス語。実感しますね、フランスに来たんだと。
恥ずかしながら、俺、在学中に渡仏したことないんですね。学生の時は、ゼミの大半の連中がパリだ、マルセイユだ、いやニースだと休み時間に楽しそうに話しているのを聞く一方でしたからね。
確か、JC社の人間が迎えに来てくれてるはずなんだけれど。
スーツケースを引きながら進むと、JC社の迎えがいた。俺より一寸高い奴だ(ちなみに俺は172cmだから、奴は177cm位だろう)。
30cm×15㎝程の紙に『歓迎 田中さん』と日本語で書いてあった。あまり綺麗な字ではないが、判読できるな。
外国で日本語を見ると気持ちがほっとする。初めての地で、右も左も分からない人間にとって、大げさかもしれないが地獄に仏、真夏の夕立。
「アンシャンテ。ジュスイ、タナカ」とフランス語で話しかける。これ位は俺でも喋れるんだね。
「日本語で大丈夫ですよ。私、日本に留学してましたから」
ビックリした。イントネイションは少し可笑しいが、立派な日本語になってる。
やったね。心の中でガッツポーズ。
「私の名前はピエールです。どうぞよろしくお願いします」
「よろしくお願いします。フランスは初めてなので、何も分かりませんから」
「外に車を停めていますので、早速行きましょう」
車でナンテールに向かってくれると。空港からどうやったら行けるのか、事前に調べたんだけど。タクシーは早いけど、初めての人間はボラれる危険がある。リムジンバスはパリ迄直通だけど、その先は? 電車はナンテール迄一本で行けるが、切符の買い方が?
そんな心配が一変で吹き飛んだ。俺は彼に向かい両手を合わせた。自然に出たのでびっくりした。彼も驚いたというか、キョトンとしている。
「今日は宿泊先のホテルにお送りします。ラ・デファンスのホテル・カルディナルを予約しました」
ピエールの車で一路、パリを通り越してラ・デファンスに。道々色々とフランスの説明をしてくれた。良い奴だな、ピエールは。
「ラ・デファンスは『1870年戦争』で、パリ攻防戦の戦闘地であったことから名付けられたんですよ」と、ピエールが教えてくれた。
普仏戦争はドイツ帝国誕生の戦争だと、世界史では習ったが。フランスでは『1870年戦争』って言うんだ。
30分程でラ・デファンスのホテル・カルディネルに着いた。
「今日はお疲れでしょうから、ゆっくり休んで下さい。明日、本社の者が9時に迎えにきます」とピエールは言うと、ホテル・カルディネルに俺を下して立ち去った。
ラ・デファンスは、パリとは対照的に現代的な高層ビルが林立する都市だ。角地に建つ高層ビルの一画にホテルがテナントとして入っている。
初めて来た人間は分かりませんね。彼の説明では、駅から徒歩圏内と言われたが、迷路と言うか、何と言うか。徒歩ではたどり着けません。
それに、明日の迎えピエールじゃないの? 誰が来るの? 俺フランス語駄目だからね
参考文献
図説魔女狩り 黒川正剛 河出書房新社 2011
魔女・怪物・天変地異 黒川正剛 筑摩書房 2018
幻獣辞典 ホルヘ・ルイス・ボルヘス マルガリータ・ゲレロ 柳瀬尚紀訳 晶文社 1975
図解悪魔学 草野巧 新紀元社 2010
ゴーストハンター 三猿舎編 新紀元社 2011
世界お守り大全 デズモンド・モリス 鏡リュウジ監訳 東洋書林 2001
密教曼荼羅 久保田悠羅とF.E.A.R. 新紀元社 2000