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15 悪魔召喚

 マンションに帰って早速、セリーヌが俺に尋ねてきた。

 「ハジメ、私達に協力してくれるわね。堕落した今の教会が皆の心の拠り所、魂の安息所になるなんて、思わないでしょ」

 「少し考えさせてくれないか。悪魔召喚といったら、映画でもおどろおどろした場面として描かれているじゃないか。それを想像すると、気が引けるんだ」


 「何を考えているのかと思えば、随分と神経が繊細なのね。映画は所詮、フィクションでしょ。現実には映画のようなまがまがしい儀式なんてないわよ。ベルナールが信者の娘さんの様子が可笑しくなったと相談されて、悪魔祓いをしたことがあったの。それに一度だけ立ち会ったことがあって、悪魔召喚も悪魔祓いも同じようなものよ。もっとも、その子は神経症状だったらしいけど」


 「それなら俺も聞いたことがあるよ。悪魔憑きの殆んどが神経症かテンカン、妄想の類いで説明が出来るそうだね」

 「中世の教会では、魔女の殆んどはメランコリー症状だから、強要した自白は信頼がおけないと審問官などに伝えていると、文献に記されている程ですからね。そういう意味でも現実世界において、おいそれと悪魔憑きが出現するとは思えないもの。

 でもね、安心させて突き落とすのもなんだけど、プーミル(千分率)の確率で悪魔憑きはあるの。その良い例が、映画にもなった“エクソシスト”なの。映画では少女の最後の描写が、実際にはあり得ない状態に撮られていましたけれども、大筋は本当に起こった事件なのよ」

 彼女の言う通り、悪魔憑きなどの超常現象なんてあり得ないと安心させておいて、千分率の確率で存在するもんだと!!! ますます決断出来ないじゃないか。


 「御免なさいね。一寸、貴方を不安にさせてしまったわね。貴方の気持ちを楽にさせてあげようと思って、言ったのに」

 「気持ちはありがたいけど、少し不安になった。今迄超常現象や憑依現象があるなんて思わなかったもんで」


 「それでは、安心材料を一つ提供しましょう。悪魔の召喚についてですけど、魔法円を描いて召喚するのね。その時、魔法円は魔術師用、悪魔用と二つ書くの。そして、悪魔はその魔法円から外には出られないの。神に守られた空間なので、悪魔がそれを破って出てくることは出来ないの。安心した?」

 「少し」


 「じゃ、もう一つ教えてあげる。これは推測なのですけど、ベルナールが召喚する悪魔は、多分“オロバス”だと思うの。この悪魔は馬の姿で現れて現在、過去、未来のあらゆる物事について答えてくれるの。

 そして、これからが重要なんですけど、オロバスは召喚者に対してとても誠実なので、悪魔や悪霊の攻撃から身を守ってくれて、悪霊を使って召喚者をたぶらかすこともないの。安心して悪魔を召喚して、物事を頼めるのよ。不安が払しょくされたんじゃない?」

 「ベルナールの説明を聞いていた時よりは随分、気持ちが落ち着いたわ。でも協力するか、しないか、まだ判断出来ないよ。俺が納得出来る決定をするためには、もう少し時間をちょうだい」


 「良いのよ。明日か、明後日までにしてもらえるなら」

 「誰かが言っていたんだけど『時代を超え、地域を超えても文化は共通する』と。誰が言ったのか忘れちゃったけど、人間の思考パターンは今と昔で、東洋と西洋で大層変わりはないという意味なんだけどね。俺も自分を守る方法を考えてみるわ。防衛方法が見いだせれば、納得した決定が出来ると思うんだ」


 「そうね、じっくり考えてね。そして、良い返事を期待しているわ」

 「ありがとう。それじゃ、疲れたから寝よう」


 俺は歯磨きをして、寝間着に着替え、ベッドに入った。彼女は洗い物(と言っても食器は食洗機で洗うので、大した作業ではない)をし終えると、少し遅れてベッドに入ってきた。

 ベッドの中で彼女は俺の脚に、自分の脚を絡ませてきた。そのタッチ加減が絶妙に良くて、俺も彼女の方を向いて、右手を彼女の身体に伸ばした。彼女はニコリと笑った。そして俺の身体に、彼女の身体を摺り寄せてきた。

 “夜は長い”ということをフランスに来て、俺はようやく理解した。彼女の体力は有り余っているようだ。昼間は男と同じように働いて、家の跡片付けもして。それでもベッドの中でも強い。フランス女性はそうなのか?それともセリーヌが特別なのか?


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