表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/42

14 勧誘された

 「具体的に言いましょう。アルビ派のように善悪二元論を認め、この世界をコントロールしている魔王サタンから神の創造物たる人類を守るのです。

 その為に私達はどう行動したら良いのか、考えて下さい。貴方は手相が見られるそうですね。先程も言いましたが、占いは魔女の技です。ハジメ、貴方は私達から言わせれば、現代の魔女なのです」

 「確かに、貴方の説からすると私は魔女、一寸語弊がありますが。魔法使いや魔術師でどうでしょう。日本では男性名詞、女性名詞という区分がない、性差別のない国ですから。どうしても違和感があるんです、その言われ方は」


 「呼称は分かりました。ハジメが嫌と言うのであれば、魔術師で良いでしょう。その魔術師ハジメにお願いがあるのです」

 「お願いとは何ですか?」


 「私達の力になって下さい。私達の活動に協力してもらいたいのです」

 「具体的に言いますと?」


 ベルナールがテスとセリーヌとマリーヌの顔を順番に見回しながら言った。

 「私達は悪魔を召喚しようとしているのです。勿論、私利私欲の為ではなく、教会を本来の姿に戻したいのです。荒れ野で主が永遠の真理を神から授けられ、人類救済の法を説かれた時に戻したいのです」


 ・・・しばし考えた。善悪二元論、悪魔の召喚、聖書の原点。どういう話の筋道になっているの? どういう教理なのですか? スッキリした回答が思いつかない。


 「迷われるのは当然でしょうし。そもそも私達の話しを初めて聞いて、即答出来るとも思っていませんから、ご安心下さい。唯、悪魔の召喚は魔女や聖職者でないと難しいのです。呼び出すことは出来ても、悪魔を従わせることは専門家にしか出来ませんから」


 彼の求めていることが、ようやっと分かった。話しの内容が教会改革と言っているので、彼は教会関係者、聖職者だ。そして悪魔を召喚する手助けが欲しいんだ。それには魔女、いや魔術師が必要なんだ。

 でも、俺はカトリックではなく、仏教徒の魔術師ですよ。両者共、異端なんではないですか? それがカトリックの聖職者と協力して悪魔の召喚なんて、出来るんですか? そういう言葉を飲み込んで、俺は答えた。

 「問題が問題なので、即答出来ません。しばらく猶予を下さい。自分なりに判断の整合性を付けてから返答します」


 「大丈夫ですよ。急がないで、色よい返事を待っています。何せハジメは異教徒の魔術師なのですから、これ以上の協力者はいません。アラビアの“ジーニー”と比肩する存在ですからね」


 何言ってるの、この人は? 協力すると、端から決めているんだけど。


 「ハジメも日本に帰国する日が決まっているようですから、じっくりと素早く決断して下さい。召喚日はそれから逆算すると4日後になりますから、明後日には返事を聞かせて下さい」

 「分かりました」

 それだけ言うと、俺はセリーヌの顔を見た。彼女の反応が気になって仕方がない。彼女がベルナールを紹介したんだから、仲間に加わってもらいたいと思っているのは、想像に難くない。マリーヌも彼の奥さんだから、当然仲間に加わってもらいたいのだろう。テスはどうなんだろう? 今までの話しは殆んどベルナールがしたから、テスの気持ちはどうなんだろうか? 

 何でテスの気持ちを知ろうと考えているんだ、俺は。セリーヌと同棲していて、結婚の届け出を日本で出すことに同意したのに。別の女のことを思うなんて、腰が引けているのか? 彼女との結婚は俺の本意ではないとでもいうのか? そんな気持ちをセリーヌに悟られないようにしないと。


 「5日後には日本に戻るんだけど、アレクは『判断は一週間かかる』って言ってたよね」俺はセリーヌに向かって聞いた。

 「そうよ。社内稟議を経て決定するから、どうしてもそれ位かかるわ」


 「大丈夫ですよ。全て順調に進みます。心配することは何もありません」ベルナールが俺に喋りかけてきた。

 随分自信満々に話すな。JC社の人間じゃないでしょ、貴方。未来が見えるとでも言うのですか? 彼の自信に溢れた言い回しが訝しく思えるが、その根拠は何処から来ているんだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ