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11 サンジェルマン・アン・レイ

 翌日、2人で出社して、午前中仕事をこなし、昼食を食べて、午後はアレクに日本進出をプッシュ。明日結論が出るので、何が何でも日本に輸入したい。今、俺にできることをやる。そして、セリーヌもアレクに熱心に日本進出のメリットを説明してくれた。やる事はやった。


 午後5時になったので、セリーヌと一緒に帰宅した。途中、昨日寄ったスーパーマーケットで赤ワインを購入した。彼女が俺に会わせたいと言った人物に会いに行くに際しての土産ですね。一応、家で飲むワインより倍のお値段にしたんだ。見栄を張った訳ではなく、気持ちの表われですから。


 マンションに帰って一息入れると、彼女は何を着て行くのか、あれこれ衣装棚から洋服を取り出して俺にどれが似合うか聞いてきた。

 ここで適当に答えようものなら、女の感は鋭いから、「私のことを大切に思っていない。私のことはどうでも良いのだ」とか、俺を非難するのが目に見えているので、面倒くさいと思いながらも、言葉のキャッチボールを交わした。

 女性のファッションについてはセンスのない私ですから、どう答えようと彼女のお気には召さないと思います。俺は適用に過ごし、彼女はファッションと化粧に時間を費やして出かける時間となった。


 午後7時になり、彼女の運転する車でコルマールアヴェニュー(国道190号線)を西に向かい、蛇行するセーヌ川を越えるとサンジェルマン・アン・レイがある。直線距離にして8kmだ。

 道路が若干渋滞していたので、20分程かかり、男の家に着いた。


 緑の多い閑散とした住宅街の一軒屋だ。いや違う、一区画が相当大きい住宅街だ。どの家も敷地が三反歩(=60m×50m)以上ある。敷地を囲うフェンスや石壁が延々と続いているから、高級住宅街ですね。


 ゲートに到着して、彼女が左脇にあるインターフォンに到着した旨を告げた。直ぐに門扉が開き、車はスムーズに中に入れた。

 玄関に着くと、この家の夫婦が外に出て待っていてくれた。車を降りて、セリーヌが俺に夫婦を紹介してくれた。


 「こちらはベルナール・ペランさん。そして奥さんのマリーヌさん。こちらはハジメ・タナカさん」


 「アンシャンテ、田中肇です」俺は日本語で自己紹介し、それを彼らにセリーヌが通訳してくれた。


 「私がベルナールです。こちらは妻のマリーヌです。ようこそ、お待ちしていました」

 通訳がいて良かった。ディクテは学生の時も最悪だったから、こちらに来ても未だに聞き取れない。


 「どうぞ、お入り下さい。先客がもう来ていますよ」

 誰だろう? セリーヌが持参したワインを旦那に手渡し、二言三言話している。小さくて聞き取れない。

 間違いはないと思いますが、フランス語で話しているので意味が分からないし、フランス語自体も聞き取れないということです。


 奥さんが俺を案内して自宅に入れてくれた。フランス語で何か俺に語り掛けてくるが、分からないので、愛想笑いをして誤魔化す。 奥さんの後について行くと、リビングで待っていたのはテスだった。

 彼女は俺を見つけるなりソファから立ち上がり、俺に近づいて来た。相変わらず、お美しい。大人の色気が感じられる。


 「こんにちは、ハジメ。うれしいわ、貴方が来ると聞いて私も来たのよ」

 「こんにちは、テス。俺も貴方に会えて大変うれしいです」

 彼女にはパーティーで酔って前後不覚になり、随分迷惑をかけたのに、そんなことは一言もおくびには出さず、俺に会いたかったいと言う。テスにそんなこと言われ、俺は完全に舞い上がってしまった。

 セリーヌと同棲したことを俺は後悔し始めた。こんなことなら、テスとデートして告白できたかな?

 「ベルナールは私の友達なの、とっても紳士な旦那さんなのよ」

 そんなことはどうでも良い。もっとテスのことが知りたい。どんな料理が好きなのか、どんな映画が好みなのか、どんな趣味を持っているのか、そしてそんな男がタイプなのか。彼女のことはなんでも知りたい。


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