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雪の雫石  作者: 六華優羽
純白の光
22/46

22話 少女の戦い そして─

「ダ、ダブルス勝者!一年一組Dチーム!シン・クオーレ、レミリア・エストワールペア!」


審判の宣言を受け、ようやく緊張の糸を一旦切る。


…特に歓声はないようで、戻ってきたウィズ、セラに労いの言葉をかけ…どこか放心状態の相手選手と試合後の握手を交わした後、これまたどこか放心状態のエストワールさんを促してクラスメイトの元へ戻る。


次は遂にヒカリの試合…なんとか繋ぐことができて本当によかった。試合前で萎縮していないといいが………萎縮はおろか緊張すらしていない様子であった。が、なんというか…口をポカーンと開けて、唖然としているのだが…?それも、ヒカリだけでなくクラスメイト全員。


「誰も君達が勝つとは思ってなかった上、あんな光景を開始直後に見せられたらこうもなりますよ。」


「!い、いや勝つとは思ってましたよ!シンとウィズですから!ホント!うん!絶対勝つって信じてたもん!けど、けどっ!あれはない!速攻過ぎて茫然くらいするよ!」


「…入学試験でも同じようなことしたと思うけど…。」


「今回は“転移”まで使ったじゃない!えげつなさ過ぎる極悪コンボで流石に引いたわよ!」


あ、分かったんだ。“速化”による速度向上だけではかわされるかなと思ったし…というかえげつないとか極悪って…。


「“転移”で背後を取り、“速化”で接近、攻撃モーションを最短で終わらせ、“攻化”に切り替えアーツを叩き込む…三つのスキルとアーツを駆使した超速攻。普通の学生に初見で対応しろというのは酷でしょうねぇ。」


…そんなことないと思うが。スキルやアーツの発動時におけるマナ回路の励起やマナの流れ等を見抜かれたら簡単に対応されるし。正直、通じるかどうかは賭けであった。それでも…普通のダブルスでは勝負にならないのは目に見えていた以上、リスクを負ってでも一体は即座に落とす必要があった。ただそれだけなのだ。


従って、「あいつ何者?」やら「本当は凄いのか?」やら「実力を隠していたとか?」やら「よく見ると格好いいしそれでいて強いって結構良物件?」やら騒つくのはやめて頂きたい。本当にそういうんじゃないです。運良く博打に勝っただけなんです。


それに、


「仮に、最初の一体を落とすことができたのはこちらの成果だとしても、もう一体は彼女らがいなければどうなったかは分かりません。だから…ありがとう、エストワールさん。」


「………お世辞は、いい。」


世辞でもなんでもなく本心なのだが…。


「あ〜…あのねレミリア、シン本気でそう思ってるし、本心からありがとうって言ってるはずだよ。前に私と組んだ時も言ってたもん。ダブルスは依り代二人とスピリット二体でやるもので、結果も皆で掴むものだって。」


覚えてくれていたのか。


「……そう。なら、貴方も、自分の功績を、ちゃんと認める…べき。」


「あ、それは私も同感。ねぇシン。」


「………………。」


二人の少女からのジト目に対し、消費したマナをマナ供給器で回復しながら罰悪そうに視線を逸らす僕……を見かねたのか、珍しく担任が割って入ってくれた。


「さて、これで一勝二敗で首の皮一枚繋がり、試合も応援も続きますよ。次はシングルス3です。…フィールセンティさん、準備はいいですか?」


「あ…は、はいっ!すぅ…はぁ…。よし!いくわよフィア!」


『ええ。』


「続けよヒカリ!」


「君の力、見せてやれ!」


「うんっ!シン、絶対繋げるからね!」


「…ああ、頑張って。」


ヒカリは大きく頷き、フィールドへ駆けて行った。


──────────


「これよりシングルス3の試合を始めます!両選手握手を。」


「宜しくお願いします。」


「ええ、宜しくね。」


相手は二年生の女の先輩…むぅ、胸に私にはない母性の塊を持ってらっしゃる。これが一年の差…。


『…マスター、これから試合だって時に何か妙なこと考えてなんかないわよね?』


「へっ?も、勿論!」


いけないいけない!集中!


えーと、相手のスピリットは水属性、アサヒのライカと同じ猿に似た幻獣タイプで…。


「では両選手ボックスへ。」


…でも、私も早く大きくならないかな。ママだって結構大きいんだし遺伝的に私も─


「ねぇ。」


っやば、チラチラ見てたの気づかれた…?


「貴女、光属性なのよね?」


「あ、はい…一応。」


「…そう。噂には聞いているわ。」


「そう、なんですか…?」


…胸を見てたのに気づいたわけじゃないのよね?ならよかっ─あれ?なんか一瞬怯えられたような…。


それに、周りも騒ついて…指差されてる…?


「ないとは思うけど───暴走なんてしないでね?」


「───!」


脳裏に、あの時の光景が蘇った。


楽しい日々の中で、忘れかけていたあの感覚が。


『っ!マスター…!』


痛くて


冷たくて


怖くて


何が何だか…分からなくて


「?どうしたフィールセンティ。早くボックスに─」


沢山の人が怯えた目で私を見てて…。


「!?お、おい君!選手以外がフィールドに入っては─」


彼を傷つけ─


「───ヒカリ。」


耳に届いた澄んだ声


手を包み込んだ暖かな感触


雪のような純白の髪と綺麗な白銀の瞳の男の子


「ぁ…。」


彼がいた。


「シ、ン…?」


「うん。ハンカチ、落としてたよ。」


「…え?でも、これ…。」


私の手を包み込む彼の手から手渡された白いハンカチは…見覚えがなく……はなかった。これ、シンの─


「少しごめんね?」


小さく、私にだけ聞こえるように耳元で呟かれた言葉の後…優し過ぎるほど、優しい感覚に身を包まれた。…湖の時と同じように、シンのマナが流れ込んでくる。


「大丈夫。大丈夫だから。」


暖かい…。


「何か起きても…ううん、何か起きる前に、僕がなんとかするから。」


「…っ。」


「君に、あんな怖い思いはもうさせないから。」


「……うん。」


「約束するから。」


「うんっ。」


「…大丈夫そう?」


「……ん、もう大丈夫。頑張るね。」


「ああ。応援している。」


…ゆっくりと、シンの手が離れていった。けれど、来てくれた口実として渡されたハンカチからは…まだ温もりを感じる。


「失礼しました。」


彼は審判に一礼して…最後に私に微笑んで、アサヒ達のところに戻っていった。


『…マスター。』


「うん。勝つわよ、フィア。」


入学してから…ううん、出会ってからずっと傍に居てくれて、優しく支えてくれて、護り続けてくれた彼の為に。


彼との日々は、決して無駄じゃなかったと証明するために。


「それではこれより、シングルス3の試合を開始します!…試合、開始!」


「───絶対!勝つ!!フィア、突っ込んで!」


『了解!』


開始の合図と同時にフィアは相手のスピリットとの距離を詰めて、リボンで一撃を与える


「っ!一度距離を取っ─「逃さないで!リボンで捕まえて上に投げて!」っ!」


『マスター!』


「セット!」


「『“ホーリーレイ”!』」


リボンで捕まえて宙に投げた相手に光線を照射。特に翼といった空中での移動手段のない相手は身動きが取れず、アーツが炸裂。


「このっ…こっちもアーツよ!“バブルボム”!」


シャボン玉のような泡玉が無数向かってくる。…確か、当たったら爆発してダメージを与える水属性アーツだったはず。


“プロテクション”で防ぐ…いや、これくらいなら、


「(抜ける!)行ってフィア!」


『ええ!』


襲いかかる泡の波をフィアは縦横無尽に駆け抜けて一気に距離を詰めていく。


「嘘…!?」


シンのエレメントに比べたらこのくらい全然大したことない!


『はっ!』


ガァン!アーツを放って無防備な相手にフィアはリボンを叩きつけた。


「っ…“攻化”!」


「真っ向勝負!“エンチャント=パワー”!」


向こうはスキルで、こっちはアーツでの攻撃強化。


真正面からぶつかり合った二体のスピリットの力が拮抗する。


『ああぁぁぁっ!!』


「負けるなフィアー!!」


『っ!やあぁぁっ!!』


押し勝ったのはフィアだった。


吹き飛ばされて、体勢を崩した相手のスピリット。


ここだ!


「セット!“ホーリーレイ”!!」


光の閃光が真っ直ぐに相手向かって突き進む。


「かわしなさいっ!」


…それは、右に飛び跳ねて間一髪かわされて、


「チャンス…!接近して攻撃─」


右に曲がって命中した。


「…は?」


かわしたと油断して無防備だった所へのアーツの直撃は致命傷だったみたいで、二年生のスピリットはパタリと倒れて…静かに消えていった。


「…シングルス3───勝者!一年一組Dチーム!ヒカリ・フィールセンティ!」


瞬間、ワァァァァって周りから声が聞こえてくる。


……………やっ、た?


…勝った…?


『マスター!』


駆け寄ってきたフィアが笑顔で見上げてくる。え?後ろ?


…アサヒやソウマがクラスの皆と大騒ぎしてて…


フロウ先生が拍手してて…


シンが、嬉しそうに笑って…自分の試合でも見せなかったガッツポーズまでしてて…っ


「っ…!いやっったーーー!!」


『マ、マスターまだ試合後の握手…って聞いてないわね…。』


フィアがなんか言ってたけど頭が認識しなくて湧き上がる感情のまま全力疾走して───白髪の男の子に飛びつく。


「ちょっ…ヒカ─」


「シン勝った!勝った!!私達勝ったよっ!!見てた見てた!?」


「あ、ああ…本当におめでとう。でもちょっと落ち着いて離れて─」


「やったやったやったーー!!ホントありがとーー!!」


「いやっ礼を言われることなんて僕は─」


「いくらお礼言っても足りないもん!ホントにホントにシンのお陰!!」


「わ、分かった…分かったら少し離れて…!皆が見てるから…!驚いているから!」


「シンーーっ!!」


「お願いだから話を聞いて…!?」






「ご、ゴメンなさい…。」


「い、いや…謝ることでもないから、あまり気にしないで…。」


十分後、顔を真っ赤にして、同じく顔が赤い白髪の男の子に謝る女の子の姿があった…他ならぬ私のことだけど。


「嬉しいのは分かるけど喜びすぎだろ…。」


「全校生徒の目の前で抱きつくとか中々ないよね…。」


「いや〜、若いっていいですねぇ。」


「うぅ…。」


アサヒとソウマ、それに先生からの指摘に更に顔に熱が溜まっていくのが分かった。クラスの皆もコソコソ話してたり、呆れてたりと色々だけど全員私とシンを見てきてるし…。


やっぱりさっきの皆…それもクラスだけじゃなくて学校全員に見られてたんだよね…?改めて握手しに行った相手の二年生からも「大胆なのね貴女。頑張ってね」って笑われたし…。…でも頑張ってって何をだろう?二回戦もってことかな?でもまだ二勝二敗で勝負は分かんないし…。といっても、最後のシングルス4はシンだし、私の中では既に勝ち確なんだけど。


『ヒカリに抱きつかれて嬉しいからって、興奮の余りヘマしないで─「黙ろうかウィズ。」っむぎゅ!?』


「あぅ…。」


「…心配しなくてもそんな下手は打たないから、もう気にしないで。」


…目を閉じて深呼吸を一回。それだけで、次に開かれた彼の目は相手の二年生を真っ直ぐ見据えて、戦闘態勢に入ったことが誰の目にも明らかだった。


…もう少し気にしてくれてもいいのに。


『マスター、邪な考えが顔に出てるわよ。』


はぅ!?


「ってか!なんだかんだで二勝二敗じゃねーか!いける!ぜってぇいけるだろこれ!」


「ああ!なんてったってこっちのラストは…!」


「シングルス4を開始します。選手はフィールドへ。」


───ワァァァァァァアアァァァ!!!!


コールと同時にアリーナ全体が一気に湧き上がった。


「ス、スゴ…。」


「………当たり、前。一回戦の、最終試合で…二勝二敗。歴史が、変わるかも…しれないんだから。」


あ、そういえばすっかり忘れてたけど、クラス対抗戦が始まって以来…一年生は一回戦すら勝てたことがないんだった。


そうなると、次の試合に出ることになるシンは……大丈夫。シンなら大丈夫。私が信じなくてどうするってのよ!大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫!よし!


「…わたくしが勝っていれば、今頃変わっていたのですが…面目ないですわ。」


「やめなよネーナ。それを言ったらあたしだって同じだしさ。…ダブルスは厳しいなんて言って悪かったね、レミリア。」


「……別に。誰だって、そう思うし…わたしも、そう…思ってた、から。」


「もうっ3人共なんか暗い!だいじょーぶ!誰が相手だってシンはぜぇったい勝つもん!シンとウィズはスッゴく強いんだから!私達は信じて応援あるのみ!」


「…根拠も理論も何もないただの絵空事ですが…そうですわね。あとは託すしかありませんもの。」


「何も出来なかった分、せめて笑顔で送って…応援してやんないとね。」


「…ん。」


「えへへ。…あ、来たよ!」


アサヒとソウマの激励を受けたシンが、チームメイトである私達のところにやって来─


「───ナンセンス。」


…………あ゛?


約一週間前と同じ言葉、同じ発音、同じ声量で、周りの空気を一気に急低下させたそれは…私の額に青筋を立てるに十分過ぎた。


観客席からの歓声が鳴り響く中、私達の周囲だけは無音となって…そんな状況下、シンは声の主に振り返った。


「…というと?クロア・サイファー君。」


「分からないのか?シン・クオーレ。なら、やはり君は無能の愚者だよ。」


ブチッ


「っ!あんた─「ヒカリ。」……わかった。」


…我慢、我慢よヒカリ…シンが冷静である内は我慢。


けどやっぱりさっきの試合で“ホーリーレイ”を曲げた時、こいつに当てれば良かっ─


「君の言いたいことはなんとなく分かるよ。次の試合、僕に任せるわけにはいかないってことだよね?」


………は?


「へぇ。無能の自覚はあって何よりだよ。」


は?


「あはは…。けれど、ルール上、同チームからは出れないから当初の予定だったテルマーサさんは駄目になる。…Aチームのメンバーか、アサヒなら大丈夫だと思うけど…二回戦のことも考えた方がいいよね。」


何、言ってるの…?


「ふん。君に指図される謂れはないよ。ほら、何皆ぼぅっとしているんだ。歴史を変える重大な場面なんだぞ。この栄誉ある試合に誰が出るべきなのか、しっかり話し合って決めよう。」


───っ!!


「何言って─「何言ってんだ!!出んのはシンに決まってんだろうが!!」っ!?…アサヒ…!」


「同感だね…!シン以外ありえない!」


ソウマ…。


「シン!!何お前も言われるがままになってんだよ!!シングルス4はお前じゃねーか!!見ろよあの掲示板!!お前の名前が乗ってんだろ!!もうメンバー変更できねーんだか─「できるよ。」はあ!?」


「代理ルールの権利が残っているから。」


……どうして?


「各クラス一度だけ、同クラスのチームに限り、他のチームの試合に代理として出られる特殊ルールが対抗戦には存在する。」


なんでなの…?


「切り札のテルマーサさんは残念ながら適応することは出来ないけれど、A、B、Cチームの人なら問題ない。…Dチーム以外の誰かが、僕の代わりにシングルス4に出場することは可能だよ。」


なんで、そんな悲そうなのに、笑ってるの…?


「この権利が残っている以上、この場面での選手の選出は、クラスの総意で決めるべきなのは確かだ。1チームでも二回戦へ進み、歴史を変える…それが皆の願いだったはず。これ以上、僕が勝手をして迷惑をかける訳にはいかない。」


「っ!分かってない…!分かってるのに分かってない!だからだよシン!だから君が出るべきなんだ!君じゃないと駄目なんだって!!2勝の内一つは君がダブルスで上げて!もう一つだって君がヒカリを支え続けたからだ!皆もそれくらい分かって─「ナンセンス。」っ!何だと!」


「ナンセンスだよ。他にも彼に任せるつもりの奴もいるみたいだけど、冷静になりなよ。仮に2勝に彼が関わっていたとしても、そんなのただの偶然に決まってるじゃないか。忘れたのかい?彼は───無属性なんだよ?」


まるで夢から覚めたように空気が変わったことがはっきりと分かった。


「…そういえば、そうだったよな。」


「確かに、無属性じゃ…。」


「こんな機会、二度とないんだし…やっぱり無属性の人には…。」


「負ける可能性の方が高いし、任せられないよね。」


…ぇ?え?


「分かったら早くシングルス4を決めよう。誰も手を上げないなら僕が─「それ、だけ?」ん?何か言った?」


「っそれだけで…無属性、ってだけで…ダメなの…?」


何、それ…?


「…いくら依り代になったばかりとはいえ、ここまで無知とはね。そんなの───当たり前だろう。無属性のスピリットとしか契約できなかった依り代は、無力で無能で無価値。常識だよ?」


「─「ヒカリ。」…止めないでシン。」


もう許さない。


あいつも、掌を返した奴らも…!


アサヒとソウマも私と同じ気持ちなんだろう。ウィズとフロウ先生の制止を振りほどこうとしている。


「駄目だよ。彼の言ったことも、皆の反応も…普通なんだから。」


「ん……こんなの…いつもの、こと。」


っシンも、レミリアも、なんで納得してるのよ…!


「…教えてなくて、ごめんね。」


「っ!なんでっ…なんでシンが謝るの!?」


何も悪くないのに!何も間違ってなんかいないのに!


「いつか、ちゃんと分かる日が来るから。今は我慢して。」


「分かんない…!分かりたくないよっ、そんなの…!」


「…………………。」


「分かってない!皆もっ、シンも分かってない!」


なんで、なんで…!


伝わらない歯痒さが、伝えられない自分の無力さが…悔しくて…!


「無属性なんて関係ないっ!シンは、無力なんかじゃない…!無能なんかじゃない…!無価値なんかじゃ絶対ない…!」


「ヒカリ…。」


「私を、助けてくれたっ。優しくて、強くて…!絶対負けない…!誰が相手でも勝つもんっ!誰よりも信じられる人なの!」


なのに、どうして…!


どうして誰も、シンを見てあげないの…!?


「…ありがとうね、ヒカリ。もう十分だから…ごめ─「でも」…エストワールさん?」


……レミリア…?


「………ん。無属性だけど、わたしも、貴女に…ヒカリに、賛成。」


───!


「中々決まらないな…。おいテルマーサ、君も代理で出れないとしても意見くらい聞かせてくれ。」


「…あら?敗北した者に意見する権利なんて無いと思ってましたけど?まあ、同じ敗者の貴方が仕切っているのですし、気兼ねなくさせてもらいましょうか。」


「…御託はいい。手早く頼むよ。」


「ええ。では、わたくしは───我がチームのシン・クオーレを推薦しますわ。」


「………は?」


「なら折角だしあたしも言わせてもらおうかな。あたしも、今更って言われるだろうけど、こいつ…シン一択ってことでよろしく。」


「…無属性の意見、なんて…どうでも、いい、だろうけど…同じく。」


「フィールセ…いえ、ヒカリは…聞くまでもありませんわね。わたくし達Dチームは、シングルス4の選手として───シン・クオーレ以外を認める気はありません。」


ネーナ…ノゾム、レミリア…!


「フガッフガガッ!…ぶはっ!ったくいつまで口塞いでんだよ先生!あと俺も!誰がなんて言ったってシンだ!シン以外あり得ねー!言うこと聞かねー奴は力づくで言うこと聞かせてやる!」


アサヒ…


「繰り返すけど、ぼくもだ。友達だからっていうのもあるけど、それだけじゃない。皆が願ってる一年生初めての一回戦突破の悲願。絶対に負けられない場面。だからこそシンだ。」


ソウマ…!


「つかシン!おめーが自分が出るってはっきり言わねーからややっこしいことになってんだろが!!文句ある奴はかかってこいくらい言えっての!!それか自分のランクはサ─「はいヴィレイズ君お口チャックしましょうかー。」フゴゴッ!?」


「…まあ、君のことです。対戦相手の実力を感知して吟味し、自分以外でも勝てると踏んでいるのでしょう。その上でクラスの融和を考慮して、譲るべきと考えた。加えて、クラスで自分一人だけ自分勝手な願いの為に試合に臨んでいた…とでも考えていて、罪悪感もあるのでしょうか?」


?…自分勝手な願い?


あれ?今シンの肩がギクッて感じに震えたような…。


「…先生もその無属性を推すんですか?」


「いいえ?何度も言いますが、私は今回介入する気も意見を出す気も全くありません。皆さんが自分で考え、自分で結果を出し、現実を受け入れて貰わなければなりませんから。…ですが、ここまで頑張ってきた皆さんに一つだけ忠告をさせてもらいましょう。」


忠告?


「このまま勝てると思っているのなら、この学院の歴史を変えられると思っているのなら───浅慮にも程があります。」


「───っ!」


フロウ先生のよく分からない忠告を聞くや否や…シンが今まで背を向けていたフィールドへと振り返った。


「……ウィズ。」


『うん…あいつだ。』


「…そうきたか。」


シンも、ソウマのところから戻ってきたウィズも、なんか…恐い顔してるけど…。


「…訳がわからない。もういい、話にならない。ナンセンスな連中ばかりだ!いい加減時間も迫っているし僕が行かせてもら─〈えー、代理ルールにより選手の交代をお知らせします。〉…何?」


アナウンス…?


それに代理ルールって…えっ?


「なっ!待てよ!俺らは代理ルールなんて使う気は─〈代理ルール使用クラスは───二年二組。〉…は?二年?」


〈一回戦第十六試合、二年二組Bチーム対一年一組Dチーム、シングルス4において、二年二組Bチームの選手の交代をお知らせします。〉


「向こうが、代理ルールを使ったのかい…?」


「………なん、で…?」


「……待ちなさい。まさか!」


〈二年二組Bチーム、シングルス4に出場する選手は〉


「…嘘、だろ…!?」


〈───ラインハルト・ミッドサイオン選手です。〉




to be continued

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