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惑星モビーディック

 

 えぐえぐと泣くミコの頬を髪が撫でる。

 何度も撫でる髪が進めと言っている。

 ミコは輝き脈動する心臓を回るように歩き見えてきた扉へと入った。

 自分がなぜそれを知っているのか、ミコ自身はみつかいさまが、タカハシが導いてくれていると思いこんでいた。

 再び先のわからない闇に包まれた道を今度はひとりで歩く。遠くで仄かに光る縦の線を目指して歩く。

 線に到達するとゆっくりと線が広がり強烈な光がミコの目を襲った。

 光に目が慣れミコが目にしたのは大きなガラスの外に広がる黒い空とちかちかと光る大量の四角いもの。そして、両手を横に広げた女。

「あら? 男は一緒じゃない?」

 女の言葉にミコは俯く。

「まあいいわ。ようこそ、惑星モビーディックの操縦席へ」

「そう……、じゅう?」

「そうよ。ここはこの惑星を動かす運転室。そして、惑星の管理をするところ」

「かんり……」

「あの男、みつかいさま? イレギュラーなのを放り込まないで欲しいわ、全く。下も何を考えているんだか。でも良いわ、あの男のコピーは手に入ったし」

 そう言うと女はミコに手を伸ばした。

「い、いやっ!」

「そう言わないで。何も、しなくはないけれども痛くはないから」

 女は素早くミコの手を取り腰に手を回した。

 軽々と持ち上げられたミコは手足をばたつかせ抵抗したがそれは虚しくも女にとっては些細な事だった。

 ミコは球体の槽に入れられ少しずつ分解された。

 ゆっりとミコの体が崩れてゆく。それと共にタカハシがより近くにいるとミコは感じた。

 ミコは巫女だ。非ヒトであるタカハシ、座敷童を感じる事が出来る存在。自身が崩れてゆく中でその感覚が研ぎ澄まされた。

 そして行き着いたのが簪だ。ミコは女に気付かれない様に簪へと意識を移動させた。

 タカハシの残滓とミコの意識がひとつに混ざり合い簪はひとつの個体へと再生された。

 溶液の中に残った簪を見て女は歪な笑みを浮かべた。

「これが核。これが神の一端」

 溶液を排出し槽の蓋を上げると簪は待っていましたと言わんばかりに飛び出した。

 宙に浮いた簪からミコとタカハシを足して2で割った様な少年とも少女とも思えるヒト型が生えた。

「1からやり直す。次の家を探す。さようなら、相棒だった者よ」

 そう言い残して簪は壁を通り抜け宇宙の彼方へ消えていった。女は呆然とそれを見ていた。

 そして、女の経営している会社は立ち行かなくなり潰れた。

 

 

 

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