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名の無いふたり

 

 ヒトの居ない方へ、居ない方へと足が棒になるほど歩きタカハシと巫女は大きな穴に辿り着いた。

 底の見えないほど深いその穴からは空気が出たり入ったりしている様だった。

 ふたりは限界だった。

 ろくに食事もとらず歩き続けたので巫女はタカハシの背に居た。タカハシも精神の摩耗がひどく目が虚ろだった。

 何かの気まぐれだろうかタカハシの背を風が押した。

 抵抗する事も無くタカハシと巫女は穴の底へ落ちていった。

 ようやく、終着点だ。そう思ってタカハシは目を閉じた。

 しかし、いつまで経っても落下の衝撃は来なかった。

 

 どれくらい落ち続けていたのだろうか。

 1時間? 1日? それとも1週間?

 永遠と思えるほどの時間が経った時、下から強い風が舞い上がり優しくふたりを穴の底へ横たえた。

 タカハシが目を開くと暗い空間だった。遠くに小さく灯りが見える。

 巫女の手を引き灯りを目指して歩く。

 タカハシは思った。限界が近いと。落下の衝撃を和らげる為に力のほとんどを使ってしまっていた。

 明かりが強くなりそれが視界いっぱいに広がった。

 脈動する心臓。惑星の心臓。

 タカハシはつまづきながら心臓に近づくともたれかかった。

 巫女の手をとりタカハシは言った。

「キミの名前は、何ていうんだ?」

 巫女は首を横に動かした。

「そうか、キミも俺と同じで名前は、無いんだな」

 タカハシはあくまでもこの姿(タカハシ)だからタカハシなのだ。元々の座敷童には名は、無い。

「後ろを、向いて」

 巫女の髪を結い上げ出来る限り力を込めた簪を刺す。

「キミは、ひとりの、女性、だ。名前はミコ。俺から、わたしからの、祝福」

 タカハシは言い終わると共に手を落とした。

 慌てて振り向いた巫女、ミコが見たのはその体が消えゆくタカハシの姿だった。

「みつかい、さまっ!」

 ミコはタカハシの手を取ろうとするがその小さな手はごつごつとした大きな手を取る事は無かった。

 タカハシは笑みを受かべてその身を光に変えて、散った。



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