紋様彫刻
「動物をなめてはいかん。あいつらは硬く、不思議な」
「そう、不思議なちからを使う。そのちからはあなた方も使っているのですよ?」
タカハシの言葉に長は目を見開いた。
「あなた方には視えないかもしれませんが私にはあなた方が使い続けるちからの光が視えます。長、あなたは人一倍力が強く体力がある。違いますか?」
長はゆっくりと首を縦に動かした。
「ひとつしか使えない、なんて事は無いのです。私はあなた方に新しいちからを刻む事が出来る」
タカハシの言葉に長を始め小屋の中に居たヒトビトは膝を折って祈り始めた。みつかいさま、みつかいさまとつぶやきながら。
「はいはい、立ってください。まず長からいきましょうか」
何を言っても祈り続けるので長を強制的に立たせ^3を確認する。
刻まれているのは身体強化の紋様のみ。ただ、位置が悪い。3面に渡り刻まれている。この身体強化の紋様は全身に作用する為それ自体が大きい。
一度刻んだ紋様を消すのは難しい事から紋様を刻むのは自分の人生計画が固まってからと言うのが根底にあった。
この惑星の彫刻機は巡回してインストールするだけの機械なので位置などお構いなしだ。そこは腕でカバーするしか無い。
タカハシは長から武勇伝を聞き取りそれに見合った紋様を刻んでいった。
長は伸び悩んでいた自分のちからが増した事を大層喜んだ。
厳つい顔で泣き喜ぶ長にタカハシはちからは万能じゃないから気を付けるんだぞと何度も言った。長はゆっくりと首を縦に揺らし小屋を出ていった。
同じ様に小屋の中に居る狩人たちの^3に刻んでゆく。外に出た狩人たちから話が広がりタカハシは寝る間も無く作業する事になった。社畜である。
その見返りは衣食住の拡充だった。と言うよりもタカハシを祀るための神殿が出来たと言ったほうが良いのだろうか。
タカハシは神殿から出られなくなった。騒ぎが酷いため出るに出られない。神殿には巫女と兵が置かれ深部にタカハシは軟禁状態となった。
座敷おっさんなのでこういった状況は別にどうとも思わない。むしろ自分の会社、領域を持つ事が出来たのは良い事だった。
貢物、給料を捧げられタカハシは訪れたヒトビトにちからを刻んでいった。
順調に進んでいると思っていたのだが、この惑星へタカハシがやって来てからしばし経った時、顔を真っ青にした巫女がタカハシの居室に駆け込んできた。その音でタカハシは飲んでいた水を吹き出した。