インストール
超能力。
それは魂を包む直方体”^3”に刻まれた能力であり刻む事が出来れば誰でも使う事が出来る。超能力紋様は無限にあり同じ文様を刻んでもヒトによって効率の差がある。これはヒトの意識問題だというのが定説である。ヒトの^3表面積に差はほとんど無いと言う研究結果が出ている。性格や思考の差が超能力に反映されているのだという。
使用する為のエネルギーもうんうんかんぬん。以下略。
と、タカハシは前弊社で学んだ超能力の話を頭の奥底から引っ張り出した。
1万年も色々な部署を回り続け会社員を続けていたのだ大抵の事は出来る。タカハシに出来ない事はあんまり無い。
タカハシはまず最初になぜ超能力を知らないのに身体強化の超能力だけ刻まれているのか調べる事にした。
シロに出入りする戦士たちの^3をじっくり観察して刻まれた紋様を比べてみた。驚いた事にどれもほぼほぼ同じ紋様だったのだ。
手で刻んだとは思えないほど精巧に同じ紋様を刻まれた^3を持った戦士たち。
もしかしたらと戦士以外の^3も見てみたがこの惑星の住人はもれなく同じ紋様を^3に刻まれているらしい。
タカハシは大きく溜息を吐いた。
下調べは重要だとてって的に叩き込まれたのは幸運だったな。そう思ったが自分が座敷おっさんだった事を思い出して自分は幸運を与える側だったなと再び溜息を吐いた。
そこから数日、紐を手繰る様に調べてゆくと何とか言う土着宗教の洗礼がインストールの役目を担っていたと言う事実をタカハシは掴んだ。
事業への障害か! と身構えた訳では無くタカハシはその洗礼システムに興味を持った。
この洗礼は巡回聖者と呼ばれる鉱物、つまりインストール用の機械が各地を巡って巡って巡り続けていた。その数は2,3百体ほどが毎日産まれる赤子に余す事無く同じ紋様をインストールし続ける。この惑星に文明をもたらした者がそう言った方針だった、としても。
「妙だなあ」
タカハシは違和感を覚えた。
この身体強化の紋様、新しすぎるのである。
「最新過ぎる紋様なのに文明はまだまだ。ちぐはぐ過ぎる」