シロと超能力
少し歩くと息が上がる。だが腐っても元座敷童、1時間もせずにこの惑星の環境に慣れてきた。
ヒトの存在感もだんだんと近づいてきた。それと同時に見慣れた物がタカハシの目に飛び込んできた。宇宙船だ。しかも巨大船。その巨大船の周囲に集落、と言っていいものかぽつぽつと建物が立っていた。
遠くから見る限り建物もヒトも近代的とは言えずどちらかと言うとまだまだ未発達であろうと言う印象が見て取れた。
タカハシはネクタイを緩めてようとして気が付いた。
「首輪って物理的につけたのか。まあ、ファッションって事で」
そう楽観的に見て集落、特にヒトの服装を観察する。
小一時間見ていて理解したタカハシは自分の服装をTPOに見合ったものに変化させることにした。
タカハシは座敷おじさん、その場その場に合わせた衣装に替える事など造作もない。童には一向に戻れないが。
深呼吸を一つして自分の服を観察して理解したこの惑星の服装に入れ替える。戦闘職では無く一般人。目立たないような服装だ。首輪はついたままだが。
集落にゆっくりと近くと簡素な槍を持った巡回警備がタカハシを止めた。
「どこんもんじゃ?」
「遠くから来まして」
「しけん見つけったばけりのシロだあ。やっはり話ははええな」
訛りは酷いが一応連合共通語で会話だった。
「シロ、と言うのはあの建物の事ですか?」
「そだあ。あーなかに動物がすうつくてなそれを殺してやあんとロクに鉱物がとれんのよ」
「私でもシロに入る事は出来るのでしょうか」
「えいよえいよ。狩人が増えるのはえいことよ」
「ありがとうございます。行ってみます」
「がんばって殺してくれや」
巨大船、現地民の言う所のシロへ向かいながら周囲に目を走らせる。
シロに近づくとヒトは増え専門的な店が多くなった。しかし、この惑星ではまだ超能力技術は未発見の様だった。剣や槍、槌、弓矢と言った物理的な攻撃手段は多様だがいわゆるファンタジー的な魔法の様な超能力を扱う物は無かった。
ただしそれはこの惑星のヒトが気が付いていないだけのようだった。日常的に身体強化能力を発動している。
この惑星の住人に超能力を受容する器は存在している。
タカハシはそこに目を付けた。
超能力付与士になって一旗揚げよう。そう思った。