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島流し



「タカハシい」

「な、何ですか? 部長」

 背に声をかけられ振り向くと部長が居た。

「今回の成績、下から5番目だってな」

「え、ええ。力及ばず……」

「お前、営業部(ここ)に来て何年目だ?」

「えー、えっと……」

 部長は肩に手を回し声に笑気を含めながら小声で耳に囁いた。

「40。40年目だ。お前が営業部(ここ)に来てから40年間ずっと下から5番目だよな」

 おかしいなあと部長の手に力が入る。

「わたしのちからがそれくらいしか発揮できないと……」

営業部(ここ)は入れ替わりが激しい。早くて1年、長くても3年ほどで転属してゆく。そんな中で40年も続いてんだ。才能がある。なのになんでずっと下の方なんだ? ん?」

「力及ばず……」

 目を伏せるタカハシの肩に回した手の力が更に強くなる。

「狙ってんだろ? でもやりすぎだったな。流石に40年間下から5番目をキープし続けるのは不自然過ぎる」

「……何の話だか」

「お前の転属履歴見たよ。すげえな、この会社(ウチ)のほぼ全ての部署に1度は入ってんだな」

「わたしが無能だからたらい回しに」

「産業スパイか何かか? あ、いいよ。答えなくても。近頃はそういうのがごろごろしてる。掃いて捨てるほどいるから情報セキュリティの方を強化してるぐらいだし。いたちごっこだけど」

 タカハシは悟った。もう全て明るみに出ているのだと。だからもう諦める事にした。

「……何を、したらいいですか?」

「お前の歴代上司たちも交えて上と話し合った。遠域営業に出てもらう。ああ、そうだ。営業って付いてはいるが別に売上とかは気にしなくていい。野放しにしていい人材じゃないって事もわかった。だからウチに留めたまま首輪を着けて閉じ込めようってなった訳よ」

「左遷って事ですか?」

「一国一城の主だぞ。表向きはこの会社(ウチ)の末端会社って事になる。ちなみに部下は居ないぞ」

「島流し……」

「首輪は付くがそれ以外が好きにしたらいい。むしろ好きにしろ。規則違反以外なら、な。返事は?」

「……ハイ」

「よし。これ辞令な」

 目の前に出された書類をなめる様にして読む。読んでいると何度も同じ文字列が書類に記載されていた。

「あの、この番号は?」

「それは惑星番号だ。固有名が付いていない放置惑星ってやつだな」

「……、やはり島流し」

「と言う訳で早速行って貰うからな」

「準備とか、は」

「そんな物は無い。お前、会社に住んでんだろ? 知ってるぜ?」

「……、ハイ」

「では、行って来い。帰ってくんなよ」



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