ブンカサイ
7話目投稿しました。
2020年9月5日。今日はなんと文化祭。夏休みも終わりたくさん準備してきた甲斐もあってか、私たちのクラスの出し物、夏祭り延長隊は大繁盛したの。有馬くんが学校の先輩や他校の友達をたくさん呼んできたかららしいわ。なんといっても盛り上がったのは射的かしら。どこにでもあるように見えて、大きな祭りでしか見かけたことがない人が多くてやってみたいとの声がたくさん上がったわ。そんなに珍しいものでもないと思うけれど、私もやったことはないの。いつかやってみようかしら。
自分の担当時間が終わって、どこから巡ろうか手元のパンフレットを見ていると、急に後ろから声をかけられてびっくりしたわ。
「秋山さん、どこから行くつもり?」
「わ、有馬くん」
「びっくりしてどうしたの笑」
「急に後ろから話しかけられたら誰だってびっくりすると思うわ」
「そうかな、ごめん。で、どこから行くの」
「このお化け屋敷から行こうかなって」
「いいね、そこから行こう」
「有馬くんも来るつもり?」
これは想定外だったわ。あなたはてっきり男友達と巡るのかと思ったもの。まさか私と巡りたいっていってくれるとは思わなかった。嬉しいけれど。
「もちろん!一緒に巡ろうぜい」
そうして私と有馬くんと私たちの友人と一緒に巡ることになったわ。といっても5人だけれど。男3人、女2人の組み合わせはドラマや映画みたいなフィクションものでしかないと思っていたけれど、まさか現実で起きるとは思わなかったわ。意外と楽しいものね。
あちこち巡って、終了時間が近づいてきたことに気づいたわ。でもまだ最後、1クラスだけ巡れていないの。もし巡っていたら集合時間に遅れてしまうかもしれない時間。私と有馬くん以外は既に戻ろうとしているから私も戻ろうとしたのだけれど。
「俺は巡るわ!あと一個だし!」
怒られても知らないぞー、とクラスメイトから返事が返ってくる。ごもっともね。でも。
「私も残る。理由は同じく。」
「まじ?後で怒られても知らないからな?」
「ふふっ、それをあなたがいうの?」
じゃあまた後で、という軽い挨拶を交わしたあと、私たちとクラスメイトと別れたわ。
その後、ちゃんと巡ってちゃんと遅れてちゃんと怒られたのはいうまでもないわね。なんでこんな行動をしてしまったのかは未だによくわかっていないのだけれど、きっとあなたがいたからこその魔法だと思うことにしてるわ。私たちだけが体感した青春だものね。これは誰にもいえない秘密の青春なの。
そしてその日の放課後。
「いやあ、ものの見事に怒られたねえ」
「当たり前よ、ほんとなんであんなことしちゃったんだろ」
「秋山さん、そんなことするタイプじゃないのにな」
「先生にも驚かれたわ」
「あれ笑いそうになった」
「笑ってたら多分もっと怒られてたと思う」
「違いない、でも」
「でも?」
「すんごい楽しかったからいいや!」
「それは怒られた甲斐があったわ」
「どういたしまして!」
「もう何言ってるの」
そんな会話をしながら一緒に教室を出る。
あなたもこの時に私に恋心を抱き始めていたのかななんて、そう思ったわ。なんとなくだけれど。
読んでいただきありがとうございます。
今回は学生の青春をイベントに合わせて書いてみました。ホラー要素がほぼ皆無だったのは申し訳ないです。