オデカケ
6話目投稿しました。
2020年8月10日。今日は有馬くんとのデートの日。普通に大勢で遊ぶのかと思っていたら、まさかの2人きり。これは昨日いきなり明日は2人きりだから、と連絡が来て判明したの。もう出かける日時も決まっていたのに、急に夜に連絡してきて流石に驚いたわ。驚いたけれど、あなたと2人きりならいいわ。実際に大勢で出かけるとなると、緊張しちゃうもの。
今日のお出かけの服装は清楚系にするか、地雷系にするか、あなたはどんな格好なら好きかを想像しながら考えたわ。これは実際に聞いておけたらよかったのだけれど。まあ今更悔いても仕方ないから万人受けしそうな清楚系を選んだの。長い髪を下ろして、ちょっとしたフリルのついた白い服。下はパンツかスカートか迷ったけれど、黒のロングスカートに決めて、少しだけメイクをしてみたり。お気に入りの靴をいつでも履けるように靴箱から出してみたりして。
待ち合わせの時間まであと1時間と少し。電車で30分のところに現地集合と話し合っていたから実際の猶予はあと30分とか頭の中で考えながら、家でゆっくりするの。もちろん有馬くんの私服姿はどんな感じなのかも考えて。もしダサくても私があなたに見合った服をどこかで見繕ってあげるわ。
時間に余裕を持って駅のホームに行こうと家を出ると、蝉が鳴いているのがとてもよく聞こえたわ。もうすっかり夏を感じられる、といった雰囲気に、この暑さの中、できるだけ汗をかかないように駅に着くと、時間ちょうどに着く予定の電車より1本早い電車がちょうど到着したから、乗ることにしたの。先に着いて待ってみるのもいいかもと思ったから。電車の中は空調が効いていて涼しかったわ。涼しい風が肌を撫でて少し汗ばんだ体を冷やしていくのを感じたわ。
「涼しい...」
このままずっと涼んでいたら風邪をひきそうだと思い、風のあまり当たらない席に座ったわ。そのまま電車に揺られながら朝日に照らされた景色を眺めていたの。早く会いたいなんて思いながら。
電車が目的地へ着いたみたいで、駅に着いたとのアナウンスが流れたからゆっくりと降りたわ。
「さて...」
目的地に着いたはいいものの、まだ約束の時間までかなりの余裕があり、どこで時間を潰そうかと思って周りを見回していると、私たちと同じように今日お出かけのカップルが待ち合わせをしていたみたいで合流してたわ。私たちもこんなふうに見えてたりするのかしら。もしそうなら嬉しいけれど。
10分後の8時10分にあなたが時間ぴったりにやってきたわ。少し息を切らして。そういうところも可愛いのだけれど。
「ごめん!待った!?」
「ううん、私もさっき来たところよ」
「ほんと?よかった!」
10分前はさっきに入るでしょう?なんて言葉は言わないわ。でもほんとはあなたのためならどのくらいでも待てるのだけれど。なんてね。
「じゃあ行こっか!」
「ええ」
一緒に歩き出したはいいのだけれど、私はどこにいく予定なのかは知らないわ。今日まで連絡はとっていたけれど、頑なに教えてくれず、今日までのお楽しみと言われてたから。
私はただ着いていく。たわいもない話をしながら。それだけでも十分幸せだけれど。
「ねえ...せっかく2人きりでお出かけだし、これってデートでしょう?手とか繋がない?」
「え...」
「だめ?」
「だめ...じゃないけど...」
「けど?」
「いや、なんでもない!繋ごう!」
「リードよろしくね?」
私にしてはかなり勇気を出して攻めたと思うわ。学校じゃ周りの目もあって話しかけるのは緊張しちゃうけど、誰の目もない今日はなんだか緊張しなかったわ。そのせいかなんだかいつもより大胆になっていたかも。あなたも照れていたものね。でもただ話しながら行くよりカップルらしいことしてみたいじゃない。
「それで、今日はどこに連れてってくれるの?」
「ここだよ」
駅から歩いて15分先にあるこの街にある中で最大規模のショッピングモールだったわね。私は普段あんまりお出かけしないからあまりこういったところに来ない、って知ってたからかしら。この中には映画館もゲームセンターもあるらしいけれど、何よりお店の数が多いって言ってたかも。1日回っても飽きないくらいって。
「じゃあ行こっか」
「またリードよろしくね」
あなたの大きな手をぎゅっと握って一切を任せたわ。少しゴツゴツした手の甲。少しザラついた手のひら。手を繋ぐだけでこんなにも胸が高鳴るの。多分今日は1日中幸せ。
そこからはたくさんお店を回ったわ。雑貨屋さんに行ってみたり、100円ショップに行ってみたり。午前中はお、伊勢巡りだったけれど、お昼時に映画に行ったわ。ちょうどみたい映画があったらしいものね。お昼ご飯は食べていないから、大きめのポップコーンを買ったわ。あっという間に食べちゃったけどね。
映画を見たあとは少し感想をお互いに言い合ったり、ドーナツを食べたり。それだけでも楽しかったけれど、楽しいと時間はすぐ過ぎちゃってもう夕方になってたわ。何を食べるか話し合っていたらたこ焼き屋があったのでそこで買って食べたの。たこ焼きなんて滅多に食べないから、というよりあなたと食べるからかしら、感動するくらいとても美味しかったの。
食べ終わってご馳走様を言ったあと時計を見ると、もう19時になっていたわ。お互い疲れていたけれど、最後にプリクラに入って今日の思い出を記念に撮ったわ。それ以外にもたくさん写真は撮っているけどね。
やりたいことを全部やり終わったので今日はもう解散になって、手を繋いだまま駅に向かったわ。最寄りの駅は違うけれど、方向は同じだから帰りは同じ電車なの。
帰りの電車がホームに着いてそれに乗ったわ。今日は楽しかったねという今日の振り返りのような会話もしたわ。この時が永遠に続けばいいのにと思っていると、私の最寄駅に着いてしまった。もう終わってしまうと少し名残惜しいと思いながらも。
「楽しかった、またね」
それだけ伝えて私はあなたに手を振って電車が発車するのを見送ったわ。電車が見えなくなるまで手を振って
今日はありがとう
と見送ったあとにメッセージを送ってみたわ。するとすぐに
こちらこそ
と絵文字付きの返信が来たを確認して、いえいえだにゃという文字付きの猫のスタンプで返信したの。そのスタンプに対抗してか、犬のスタンプが返ってきて笑ったのは秘密にしておくわ。
今度は恋人としてお出かけしたい、というメッセージは送らずにそっと消して、代わりにおやすみとだけ画面越しに伝えておいたわ。
読んでいただきありがとうございます
今回は学生の夏休みの話ということでやや長めになっております。