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ワタシノキミニッキ  作者: 桜渓凪愛
10/13

クリスマス

10話目投稿しました。

2020年12月25日。今日は誰でも分かるあの日。クリスマス。彼からのお誘いを受けてクリスマスの夜に遊園地にいるの。ほんとは昼からいるのだけれど夜もまだイルミネーションがあるからって。でも、冬の遊園地はイルミネーションがメインって言っても過言じゃないような気がするわ。私はライトアップされた遊園地の方が好きだもの。どちらにしても楽しいことには変わりないからどちらも好きだけれど。


「この時期は日が沈むのが早くてライトアップが映えるね」


「ライトアップってそれを見越してされてるんじゃないの?」


「たしかに!それありそう」


そんなたわいもない話をしながら遊園地内を見て回ったわ。昼にも同じ場所を通ったはずなのに違った場所のように思えて、本当にそうなんじゃないかって思えちゃうの。それくらい別世界だったわ。びっくりよね。ただのイルミネーションでしかないのに聖なる夜って感じられるだけじゃなくて、どこかワクワク、いいえ、ドキドキさせられるんだもの。聖なる夜の魔法にかかりそうって思ったわ。この時間がずっと続けばいいとさえ。そんな高揚感が私に少しだけ勇気を与えてくれるの。背中を押してくれてる、そんな気がしたの。


「ね、手が冷たいの。」


「え、手袋とかは?」


「ないの。忘れちゃって」


「じゃあ、どこかお店に入る?」


「違うでしょ。分かってるくせに...」


私はただ静かに、なにも身につけていない裸の手を前に差し出したの。

冷たい気温のせいか、勇気を出したせいか、私の頬が赤くなっているのが分かったわ。でも、あなたも。お互いしばらく沈黙してたの。その間の心臓の音がもうものすごくて。寒いと心臓の鼓動がより強く、より鮮明に聞こえてこないかしら。でも、そのおかげで周りの音が何一つ入ってこなくて。視界には周りの人が歩いているのが見えるけれど、私の脳がそれを情報として認識していなくて。ただあなたと見つめ合っていて。世界で私とあなたの二人きりに思えたの。そんな世界も好きだったけれど。


「これでいいかな」


「...うん」


少し恥ずかしそうに俯きながら返事をした私。たどたどしくも私の手を取ってぎゅっと握ってくれるあなた。その温もりが私の氷のような固い決意を溶かしたと思うの。


「好きよ」


この先、私の生涯では考えられないと思うけど。そんなこと、この一度だけだと思うけど。私からは言うつもりのなかったはずの嘘偽りのない気持ちが、突然口から出たの。私からは想いを伝えないって決めてたのに。それなのに。


ドオオオオオオン!!


急に世界が赤く色づいたの。何かと思って空を見上げると、花火。

この時期に、このタイミングで?と思ったわ。なんでも今日だけの特別サプライズイベントだったとかで。驚いて私も彼もほんの一瞬だけ顔を見合って。すぐに空を見上げたけどね。


「さっきさ、なんか言った?」


ふと、そう隣から聞こえた気がしたの。隣にいる人を見ようと横を向いた瞬間、いろんな考えが頭を駆け巡ったわ。私の一世一代の告白を聞こえなかったって言ったのかしら。最初は何を言っているのか理解できなかったわ。いや、理解したくなかったわ。だって、花火で告白が聞こえないとかそんなベタなこと現実に起こるなんて誰も思わないじゃない!聞こえなかったって、なかったことにしたいけどしたくないじゃない!

そんなことを心の中で思っていると。


「ごめん、やっぱり卑怯だった。ちゃんと聞こえてた。でも、女の子から告白されて、好きって伝えないまま付き合っちゃったら男がすたるっていうか...って考えちゃって。男の自分から告白したかったから」


「...そんなこと、全然気にしないのに」


「僕が気にするんですよ」


私の告白はなかったことになったような、ならなかったような。よかったような、よくなかったような。嬉しさ半分、悲しさ半分って感じだったわ。でもね。


「あの、女の子から告白されないと勇気が出ない臆病者の僕ですが、今日告白しようと思ってたのに勇気が出なくてタイミングを見計らってできなかった僕ですが、夏から気になってて、今日好きだって強く認識した鈍感な僕ですが、そんな僕でよかったら付き合ってもらえませんか!」


「ふふ、告白長いよ」


「そ、そうかな」


「でも、そんなところも好きよ。私も、あなたの全部が好き。自信のないところも、優柔不断なところも、可愛いところも、女の子の手を恥ずかしながらもぎゅっと握ってくれるところも。こんな私でよければよろしくお願いします」


「うう...よかった...」


「ちょっと、泣かないでよもう」


そんな泣き虫なあなたも好きだけれど。と思ったけれど口には出さなかった。また泣かせちゃいそうだったからね。

こうして私たちは晴れて付き合うことになったの。遊園地はカップルって感じではないまま帰っちゃったわ。だけど、これからカップルっぽいことをしていけばいいの。そう思ったわ。

読んでいただきありがとうございます。

1年生編完結まであと3話です。

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