コクハク
どうも桜渓です。
第3作目を投稿しました。
初ホラー作品を書いたのですが、お楽しみいただけると嬉しいです。
夏の暑さが吹き飛ぶような作品になれば、と思います。
「私、ずっとあなたを見ていたの」
卒業式のあと、私はあなたを連れて屋上で告白をした。あなたが顔を真っ青にしたあと、歪んで、泣き出したのを見て、嬉しくて、ついつい頬を赤くし、恍惚とした顔になってしまっていたかもしれない。夕日が向かいの山に沈んでいく瞬間と重なって、綺麗になったあなたによりいっそう愛おしさが増した。
かっこいいところも、可愛いところも、少しお茶目なところも、私は全部全部知りたいの。ほんの些細なことだって。
「どうしてっ…ぼ、僕なんですかっ…」
「そりゃあ決まってるじゃない。あなたが好きだからよ」
なんのためらいもなく笑顔で私は答える。好きなものは好きって言わなきゃ伝わらないもの。あなたもなにか言いたいことがあるなら言えばいいの、私はなんでも聞いてあげるつもりなんだから。
「僕らの関係は1年前に…」
「そうね、2022年2月15日火曜日の放課後、17:30頃にあな
たにフラれたわ」
「ひっ…!なんでそんなことまで覚えてるんですかぁ…」
「だから、あなたが好きだからと言っているじゃない」
私はあなたの全てを知りたいの。その私を恐れているような顔も、私と付き合っているときには見せてくれなかったから今、見せてくれてとっても感動しているの。
私に初めてその表情を見せてくれてありがとう、高校最後の最後にまた1つあなたを知ることができた、と心からそう思った。
「ねぇ、私たちが初めて出会った日のこと、覚えてる?」
「覚えて…ないよ」
少し間が空いたのと、なにか言いたくなさそうな彼の表情が気になったが、私は構わず続けた。
「そう、残念ね。
じゃあ、思い出せるように今から私が教えてあげるわね」
「いやっ、だいじょう…」
「あれは3年前の入学式のことだったわ…」
彼の言葉を遮るような形になってしまったがそんなつもりはなかった。しかし、せっかく私の話を聞いてくれているのだから彼に話させるのも悪いと思い、喋り続ける。
「私、あなたに一目惚れだったの。
見た瞬間、あなた、犬みたいで可愛いわ、と思ったのよ」
「ひいぃぃぃ…」
彼は尻もちをつき、そのまま後ろに下がっていこうとする。ズルッ、ズルッ、と制服が砂を擦る音が聞こえる。
私はそんな彼がフェンスに背中をぶつけて止まったのを見て、彼の隣に座った。
「ちょっと長くなるかもしれないけど最後まで聞いてくれる
かしら? ねぇ、千秋くん?」
そう言って、悦に入った様子で彼に微笑みかけた。
読んでいただきありがとうございました。
少しずつ投稿していきたいと思いますので、読んでいただけると嬉しいです。