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第三話


…川のせせらぎが聞こえてくる。

遠くからギャアギャアという騒がしい獣のような声も、微かに。


瞼越しでも分かる日差しを眩しく思いながら、わたしの意識はゆっくりと浮上した。


静かに目を開けると、そこには気を失う前に見た風景と寸分変わらぬ景色が広がっていた。

穏やかな川、鮮やかな緑色をした森の木々、川辺に投げ出されたベージュ色のリュックサック。

…いや、少し違う。

さっきよりも幾分か明るい。



周りを警戒しながら体を起こす。

上を見上げてみれば、太陽によく似た白い光が青い空の真ん中に浮かんでいた。


(異世界といっても、地球によく似た環境なんだな。…今のところはだけれど)


地球を基準に考えれば、太陽らしきものの位置から考えて今は昼過ぎといったところか。

あまり意識していなかったが、倒れる前は夜明け頃だったらしい。

今はあたりに太陽の光が燦々と降り注いでいる。




そこでわたしは自分の体の違和感に気がついた。





(なんだか身体がカサカサしているような気がする)


首を傾げながら身体中をペタペタさわる。


(…?)


巻いた覚えのない箇所…顔や手足の先に至るまで包帯が巻かれている。

ミイラのように白い包帯で覆われた身体は痩せ細っていて、今にも折れてしまいそうだ。

それに…


(なんでかな…身体が怠い…)


なんとも言えない倦怠感。


(力が入らない)


朦朧とする意識のまま周りを見渡すと木陰が視界に入ってきた。

その木陰がやけに魅力的に見えて、フラフラと木陰に向かう。

木陰に入り一息つくと、思考が少しずつクリアになり、身体の怠さが消えていくような気がした。

自分がいた川辺を振り返ると、ポツンと置かれたリュックサックが太陽光に照らされている。


(ああ、そうだ。リュックサックを回収しないと)


そう思いリュックサックの元に歩み寄ろうと木陰から一歩出た瞬間、急激な身体の怠さが襲ってきた。

驚いて身体を木陰に引っ込める。

少しばかり思案した後、今度は少しだけ手を木陰から出してみた。


予想通り、木陰から出した手は瞬く間に怠くなり手から這い上るようにジワジワと身体の感覚が鈍くなってきた。

ソッと手を木陰に引き入れる。

少しすると、手の感覚が元に戻ってきた。


(なるほど…どういう原理かは分からないけれど、どうやらわたしは太陽光に照らされると不調をきたすらしい)


でも、やっぱりリュックサックは回収しておきたい。

わたしは木陰を伝うようにして少しずつリュックサックに近づいていった。


(あと少し…)


もうすぐリュックサックを掴める、というところで木陰が途切れる。

わたしは意を決してサッと手を伸ばしリュックサックの端を掴んだ。

日に照らされた手の感覚が鈍る。

間髪入れずにリュックサックを木陰に引っ張り込むと、木陰の中に座り込んだ。


(とりあえずリュックサックは回収できた。日向にいると不味いみたいだし、とにかく森の中に入ろう)


慎重に木陰を経由しながら、わたしは森の方へと歩みを進めた。







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