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1-21 趣味と実益と見せかけの旅

テスト期間ですが三週間経ってたので書きました

「そもそもなんでそんなこと思いついたんすか?」

「色々考えてたのが嵌って。あ、実験始めちゃって、やりながら話そう」

「はいっす」



まず最初、なるべく小さく、薄く調整した空間魔法を手の先で使う。ここから範囲、濃さを増やしていくことで空間魔法を正確に把握する。



「まずいちばん重要だったのはさっき出かけた時に感じた違和感。風のあんまりない時、ほぼ真上に向かって魔力が引っ張られてる感じがした」

「そんなの感じれるんすね、今までの観測でもそんなのなかった筈っすけど」

「ほんっとに小さな異常なんだ、そうなってると思ってから見ないと多分気づけないくらいの。私が気づけたのは...まあ肌で魔力感じるのは慣れてるからかな」



外魔力が豊富な時代にも、外魔力の僅かな変化から何が起きているのかを察することが出来た。魔力が薄い今でもその感覚は残っているのだろう。さらに、風を感じようとしていたこと、買った服が比較的肌面積の多くなるものだったこと、などなど多くの要因が重なって分かったのだろう。そのうち気付いただろうが、今回いち早く気付けたのは幸運だ。



「で、さっきまで炭とかの変換実験しててほんの少しだけここに魔力が残ってて、それが空気の流れとズレて拡散していくのを感じた。それで同じじゃんって気づいたんだ」

「へえ......地面からの魔力放出とかじゃないんすか?」



地面からの魔力放出。

魔力は多い方から少ない方に移動する傾向がある。それは個体液体気体間でも同じだ。ただ、個体や液体は気体より魔力を貯めやすい。現装や前世での魔法武器はその性質を利用していた。



「その可能性も考えたけど、その場合いくつかおかしな点が出てくる。まず、この魔力が薄い状態が『当たり前』なら、とっくにその関係性は平衡状態になってる筈だ。魔力の放出に保持の力が勝ってるはずだ。だから、人為的に魔力の高い物質を持ち込まない限り、固体液体気体間の魔力のやり取りは基本的に平衡。でも、あそこでは僅かなズレがあった。私にしか感知できないくらい小さなズレ、言い方を変えれば私になら感知できてしまうほど大きなズレだ。それほどのズレがあるなら、平衡とは言えない」

「はー、熱みたいなもんなんすかね?」

「熱、物理のに書いてあったな、だいたいそう」



熱力学の法則にも、熱の拡散や平衡があった。考え方としては似ている。



「あと、今まで何度かああやって静かに風を感じようとしてたことがあった。でも、その時には魔力ズレは感じなかった。風の強さが違ったのもあるだろうけど、同じことが起きてるならそれでも少しは感じれた筈だ。そもそも私がそのズレを感じたのは地面の上じゃなくて駅の上。線路とか地下道とか、そういうのの上だ。そこまで地面から離れても流れのズレを感じるから、まず魔力放出じゃない」



魔力平衡効果による放出は、地面から離れるほど変化がわかりにくくなる。地面に寝っ転がったこともあるのに魔力放出は感じなかった。ならば、地面からそこそこ離れたあの広場で魔力放出を感じるのは難しい。



「それなら誰かがそうしてるって言うのが一番ありそうっすね」

「真京に搾ったのは、小平とか南大鳥島だと正直何も感じなかったし、魔力を吸い取るなら世界の中心が一番効率がいいから」

「だからあんなこと聞いたんすね、なるほど......」



有留日が考えている間に、自分の内魔力に少し意識を傾ける。なるべく弱い状態から空間魔法を始めたとはいえ、少しずつ強くしている上にそもそも空間魔法は消費が大きい。どこで大きさの変化を濃さの変化に切り替えるかは見極めた方がいい。



「あの」

「ん?」



そして十秒ほど経って、有留日が口を開いた。



「その駅の地下に大きな魔力を持つ物体が埋まってる可能性はないっすか?」



それは考えていなかった。



「他にも、なんかとんでもないのと戦ったって聞いたっすけどそいつのせいとか」

「その可能性も否定できない」



結局、理奈の述べたものも仮説に過ぎない。

ならばやることは一つ。



「だから情報を集める。アイツらに目的を気づかれないように、色んな場所に行ってズレを確かめる。ちょうど私もこの世界について知りたくなってるところだし」

「お金足りるんすか」

「登山とかにハマればいいんじゃないかな、田舎に転移すれば交通費もないし、まあ都会だと使えないけど、広い範囲を調べるなら多少田舎に偏らせても」



調べたい範囲は世界全体、何百万平方里。陸地に限定しても何万かはあるだろう。地図を見る限り三宿のような密集地体が何十里にもわたって続くような地帯は稀。都市部には何回か行けばすむはずだ。



「あー...理奈ちゃんさんならそれでもいいのか......高原散策なんかもいいかもしれないっすね」

「それもいいね」



技術飽和社会だからこそ成立しているだろう自然を見るだけの観光の存在がこんなところで役に立つとは。美味しいものだ。



「とにかく、この計画は実験が終わったら他の面子にも話しに行こう」

「はいっす、後どれくらいやるっすか?」

「三十分でいいや」



ついに見つけた、異常の足がかり。この機は絶対逃さないと心に決めつつ、あわよくば全て解決してくれと願う。そんな簡単な話あるとは思えないが、願うだけなら許されるはずだ。





ーーーーーーー





ほぼ同刻。透き通る天空の城、その中心部。



「あなたたちに聞きたいことがありまして」



そこにいるのは燐、そして二人の男と一人の女。



「アラタノオロチが動きました。理由はわかりません。しかし、おそらくあの正体不明の肉塊に反応したのだと思われます。三人は、何かわかることはありませんか?」

「十中八九、『独りの魔法使い』だろう」



燐の言葉に、最初に答えたのは、長身の眼鏡の男水上(みなかみの)義光(ぎこう)。推進魔法を得意とする処理部隊の第二副長。



「あれの使う魔術は我々とは全く別物で、連中とも空間転移以外は違う。それに、十何年か前にオロチが反応したのは奴だった」

「そうね。その前は......いつだっけ。その時も似たような奴に反応してたわ、突然湧いて消えるあの集団」



返すのは黒髪の女。名を辰巳御前。処理部隊の第三副長。



「その前も似たような奴だったな。何百年前だったか」

「やっぱり転移に反応してるのかしらね。でもそうなると連中に反応しないわけないし」

「ああ。結局確実に言えることは何もない」

「そうですか」



燐は落胆する。どうにもわけのわからないものを使わされるのは気分が悪かった。



「人でないもの、の転移に反応しているのかもしれない」



そこで口を開いたのは、先ほどから黙っていた白髪の青年、名を洲江遮那(すえのしゃな)、処理部隊隊長であった。



「僕たちの見た『独り』は異形の化け物に近かったし、その前にオロチの反応した奴らも人のような形をしているだけで、まるで違うものだった。連中はみんな人だから、そこで分けられるんじゃないかな」

「言われてみればそうだったな」

「確かに、色の薄い青鬼赤鬼みたいな形してたわね」

「なるほど、参考になります」



確実性はないが、さっきよりはかなり絞れる有効な意見。価値はあると思えた。



「しかしなぜそんなことを?」

「いえ、あの強敵をオロチに食わせることはできないかと思って。まあ無理でも私が倒せばいいだけですね」

「ああ、あの少女。あの強さ、もしかしたら伊部(いべ)天明(てんめい)の生まれ変わりとかかもしれないね」

「平世時代の大陰陽師ですか。そんなことあるんでしょうか」

「話にしか聞いたことないけど、転生陰陽術くらい開発してそうだ」

「へえ...とりあえず、私から聞きたいことはそれだけです。あなた方は引き続き、天城の護衛をお願いします」

「ああ」

「では」



燐は城の最深部へ戻っていった。巫女の仕事の全ては本来そこで行われる。有事の時以外の居場所だ。



残された三人は、燐の姿が見えなくなり、しばらくして話を再開した。



「やっぱり、あれは完全な巫女じゃないな。色々欠落してる」

「妙な人格が生えた代わりに伝承の記憶がかなり消えた、ってところかしらね。他にも色々機能が消えてるし」

「オロチを操れないどころか機能も知らないとはな」

「何が起きてるんだろうねえ」



今代の巫女の異常性は、触れたものの全てが感じていた。今までの、まるで神の操り人形のような、意思のない武器がごとき巫女とは違い、活発に活動する意思を持つ。

しかし、それでも巫女であるのもまた事実。



「巫女としての機能が残っているあたり、あれは天に選ばれてるんだ。僕たちは基本それに従うしかない。それは忘れないでおこう」

「わかっている」



処理部隊は千年以上、天とその使いである巫女に従ってきたもの。天は全てなのだ。



「......あれが巫女である限り、ね」



巫女には従い続ける。そして、この世界の平衡を見出すものは処分する。それこそが、処理部隊のすべきことなのだ。

三人は燐に言われた地点へ戻った。なぜ天城を守るのかもわからない。ここに敵が攻めてきた音は千年に一度もない。だが疑問はあれど歯向いもしない。


天の考えだろうが、あの異常な巫女の考えだろうが、巫女をとしている時点でそれは命令なのだから。

あと一週間で執筆タイムなんじゃ......

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