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1-20 百万頭上の収束点

試験 レポート 課題 課題 課題 試験 プレゼン プレゼン 課題

基地に帰還した後、一部の面々に情報の共有を行った。一部にした理由としては、色々衝撃的だったので一気に広めたら混乱の元になりそうだった、そもそも聞いたところでどうしようもない人の方が多かった、の二つだ。


主な内容としては次の通り。

まず肉塊について、理奈ですら知らない魔法が使われていると思われるほどの再生速度と再生可能度、空間転移魔法による遠隔の魔法使用が見られたこと、そして現状見つかっている倒し方。空間魔法が必要なので、空間魔法のより簡単な操作を研究することが決定した。


次にアラタノオロチについて。敵意と暴力、戦闘に反応して襲ってくる()()()()()、対象が死んで5分後まで口を開かないらしいこと、そして圧倒的な大きさと速さを持つため回避は現実的でないということ。対策のしようが無いため、中に誰がいても勝ちやすいようになるべく理奈が先頭には参加するようにしたい旨も伝えた。


そして、世界の果てが果てじゃない、という情報。少し考えただけでも解釈の仕方が複数あった上に、知ったところで理奈以外に重要な何かがあるとは思えない。ただ、もしかしたら誰かがいつか、重要なことに気づくかもしれないと思い共有した。対策とか、そういうものは無い。考えたい人は考えておいて程度だ。



こうして情報共有と一旦の対策に関する集まりは終わり、解散した。ここまで多くの新しい情報が出てくるのは初めてだったそうだが、意外とすんなりと進行し、しっかりとした新しい対策が提案され次第それを共有して固めていく方針となった。



さて。

次に理奈のすべきことはなんだろうか。

普通に部屋に戻って休んでも、色々あったから何も言われはしないだろうが、自分が何か言いたくなる。そんな暇かお前と。

そして、(アスラ)とやり合ったせいだろうか、気分がなんだかクレイ寄りな気がする。つまり何となく魔法を使いたい感じの気分なのだ。

となるとやはり、空間魔法についての研究でも早速進めてみるべきか。アラタノオロチや世界の果てより、今出来る上に効果が比較的大きいだろう。


早速研究の区画に向かってみることにした。研究区画にある訓練場は、魔力の流れをかなり正確に観測することが可能な為、空間魔法を使用する際何が起きているのかを確かめられるのだ。

空間魔法の仕組みについては既に講義しており、また訓練場での魔力観測も何回か行っているが、まだ情報量は足りないだろう。正確に現象を把握するなら、十かそこらの回数だけでは実験は足りない。



そして訓練場に行くと、有留日が何かしていた。広場の真ん中にある刃を、端の硝子で隔てられた部屋から遠隔操作して、炭に突っ込んでいるようだった。

その部屋を覗いてみる、



「何をてるんだ......?」

「あ、ちゃんさんおかえりっす」

「ちゃんさん......で、何してんの?見た感じ変換魔法だけど」

「そうそう、変換魔法について調べてる感じっすね、なんか有機物全部変換できるわけじゃないっぽいんで。そっちは?」

「さっきの会議で空間魔法の操作の簡約化研究を進めることに決まったから、魔力の流れの情報を増やそうと思って」

「じゃあもう少しで終わるんでちょっと待っててくださいっす」

「ああ」



他にも訓練場はあるが、すぐに終わるなら移動するのも面倒だし、有留日の実験の様子も見てみたい。

部屋の真ん中の炭を見ると、刃が触れているものの何も起きてはいないようだった。



「アレは有機物じゃないんだ」

「有機物じゃないけど、炭素を含むんで試してたっす。さっき言ったっすけど、有機物でも変換が起きる時と起きない時があるみたいで、何が魔力変換に必要なのか確かめてたんすよ」

「あー、そういえば有機物って色々あるみたいなの見たなぁ」



化学の教科書に、炭素とやらで骨格ができていれば有機物とされると書いてあった。昔は生物が作るものを有機物としていたが、生物由来の物質の人工合成に成功して以来定義が変わったらしい。そうなると、もし有機物にあの魔法が反応するなら、それは炭素に反応している可能性が大きいと思うのは当然だ。

しかし、一部の有機物に反応せず、炭素の入った炭にも反応しないと来た。この研究はなかなか奥が深そうだ。解明出来たら使える物質だけを持ち歩くことも出来るし、実用面でも素晴らしい研究である。



「今のところどう考えてるんだ?」

「原子単位なら燐か窒素、それか化合物なら糖っすかね」

「蛋白質とかは...木も変換できるから無いか」



木も魔力に変えられると言う言葉通り、塵となった木に変換を使った時に大量の魔力が生まれていた。そのおかげで生き延びられたところもある。



「んー、炭からはほとんど出てないっすね。ほんの少しだけ出てるけど無機物もそうだったし、流通上で着いた有機物の塵が反応してるのかな」

「長時間かけ続けてみたらどうだ?もしかしたら目に見えないくらい減ってるかもしれないし」

「そうっすね、じゃあ今度長めにやってみるっす」



そう言うと有留日は、台車を押して部屋の中央に向かった。そこで刃と炭を回収し、雑巾で炭などのカスを拭く。



「外魔力どうしますー?今抜いてるっすけどー」

「そのままで大丈夫ー」

「はいっすー」



実戦は外魔力が希薄な環境下で行われるし、より正確な魔力の流れを観測するには別の魔力流がなるべく発生しないよう外魔力のない方が良い。

有留日は掃除が終わったようで、端の部屋まで帰ってきた。



「そうだ、わたしあんまり空間魔法見たことないんで見学してていいっすか?観測の協力もするっすよ」

「お、それはありがたい」



この海底基地の実験環境に慣れた彼女の参加は、主に機器操作の面で心強い。あまり人に仕事をさせたくないため一人でやろうとしていたが、一通り説明は受けているとはいえ不安だったところだ。前向きに自発的に協力してくれるのはとても助かる。


早速観測を始めることにした。魔力の観測状況を見やすいように、予想される値域が大きく映るよう画面の表示を調整する。こちらの魔力を大きく変える時は、有留日に範囲を変えてもらう。



「あ、ちょっとさっきまでのがそこそこ残ってるかもなんで、実験前に一回外魔力空にしてくださいっす、なんかで」

「ほーい」



訓練場の中心部に向かい、止まって集中してみると、確かにまあまあ残っているのが感じられた。

そして。



「......あ」



そうだ、これだ。いろいろあって完全に頭から抜けていたのか、これについて完全に忘れていた。

そして何より、同時に疑問が解決した。十割ではないが、七、八割進展したと言っても過言ではないだろう。



「どうかしたんすかー?」



今必要な情報は何か、真実を見抜くために必要な土台、支えを探す。



「なあ有留日、真京ってこの世界の真ん中にあるんだよな確か」

「へ、そうっすけど」

「小平は?」

「でかい都市だけど端の方っすね」

「あと、この部屋の術式、仕組みとしては魔力の流れを一方向にするだけで、その結果内部で拡散した魔力を外に出すことで魔力を空っぽにしてるんだよな」

「そうっすね」

「術式の効果を強める...流し出す魔力の量は変えることは出来る?」

「出来るっすけど、いきなりどうしたんすか?話が見えないっすよ」

「ひとつ、気になったことがあって」



真京は今のところ世界とされている領域の中心である。

魔力の半透膜は流れを一方的にするだけである。

魔力の半透膜は強化できる。


この三つの情報といくつかの体験、そこからひとつ、信ずるに足る仮説ができ上がる。



「なあ有留日、なんで本土はあんなに外魔力が希薄なんだろうな」

「なんでってもともとじゃ...あ、でも理奈ちゃさの時代だと濃かったんすよね」

「そう。私はそれを、地域の違いか時間の経過で、自然がそうしたんだと解釈してた」



魔力の研究自体はあれど、それが少なくなる時の想定はしていなかった。だからか、この現状の分析が難しかった。



「それが違うと?」

「ああ、多分違う。今日外出した時のことを思い出して、分かった」



訓練場の端まで歩き、壁な触れる。内魔力を放出すると、半透膜によって魔力が部屋の外に流出する。内側の魔力はそれに伴い、ほんの少しずつ、ゆっくりと、引っ張られるように幕の方向へと向かう。



「これだ。半透膜で、魔力をどっかに吸い取ってるんだ。おそらく数百年とかその単位で前から、この膜に近いものを、世界の中心である真京の上空に張ってる」

「そんな大規模な魔法が使われてるってことっすか!?」

「そう、まだ確信は出来てないから、何とかして情報を集めなきゃいけないけど......」



だが、もし、これが正しかった場合。魔力が上空へと吸われる事で、外魔力が薄くなっていたとしたら。



「もしかしたら、この世界をもう一度、外魔力溢れるものに出来るかもしれない。魔法が普通に使える世界を、公立的なものとして人々に捉えさせることが」

ちゃんと書きます 夏が来たらもっと書けるかも

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