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短話入題1-1 ちゃんさん

たまにこうやってちょっとしたエピ入れてもいいよね

それは、連日の魔法講義の三日目のこと。



「理奈ちゃん」

「何だ」



幽谷(かそだに)有留日(あるひ)は、ここまで全ての講義に最前出席していた。今まで多くの時間を研究に費やしてきた彼女がこうやって長時間研究室から離れるのは久しぶりだった。そうしようと判断した理由は勿論、この講義に出た方が時間当たりに得られる知識量が段違いだと判断したからである。唄の話や回収させてもらった現装の記録から、まだ自分の知らない魔法がいくつか使われていたのは明白だったのだ。

その判断は正しかった。自分の知る魔法のどれとも異なるような式を持つ魔法が結構現れる。同じような魔法でも実は違う、みたいな魔法もあれば、起きていること自体が今まで再現出来ていないものもある。溢れる新しい知識に、興奮が止まらなかった。



「ちょっと質問いいっすか?」

「いいぞ、何についてだ」

「さっきの魔法の伝播についてなんすけど、この───」



さらに彼女は、親切なことにどんな質問にも答えてくれる。講義が終わったあと一時間拘束しても、説明するのは好きだから、それに新しい視点を知ることが出来るのは自分にとっても利益があると言ってとことん付き合ってくれる。



「 ああ、それは───」



彼女の話によると、前世の記憶、そして内魔力を保存した状態で転生したため、この知識を持っているのだと言う。また、前世では英雄として名が知られており、それもこの知識量に関係しているそうだ。本人も言っていたが、にわかには信じ難い話だ。しかし、三日間質問攻めにして感じたのは、彼女は自分をよく見せるような嘘は吐かないし、人のために動き続けるんだろうということ。ただ事実を述べ続ける巨大な歯車のようなものなのだ。無かった視点に気付かされれば素直に受け入れ、こっちが疑問解消できれば満足する。そういう人。

だから、多分信じていいんだろう。彼女は本当に前世は英雄で、魔法の満ちた世界はそこにあった。



「───ってことだな。この魔力の流れ、後でまた出てくるから」

「はあ〜、そういう情報の記録の仕方もあるんすね」

「ただ、この時代だと外魔力が薄いからすこし比率を考える必要がありそうだ」

「反変化は減らせそうっすね」

「分かってんじゃん」

「今の説明のおかげっすよ」



しかも彼女、微妙に研究者気質なところがある。質問の中で彼女もまた気付きを得て、そこから新しい魔法の使い方を模索し始める。

それに、こうやって長い時間連日話しているからか、なんとなく彼女の喋りも柔らかくなってきている気がする。打ち解け出来てきているのだろう。


そういえば、ここまで彼女を自分は理奈ちゃんと呼んでいる。最初見た時、小さな少女だからとちゃん付けしてしまったが、ここまで先生のようなことをしてもらってそれもどうなんだろうか。



「他には何かあるか?」

「あ、今日はこれだけっす。...あの」

「ん?」

「なんかすいません、こんなに教えて貰ってるのに、なんかちゃん呼び続けちゃってるなって」



彼女に感謝が深くなっていることに気づいたからだろうか、なんだか急に恥ずかしくなってきたのだ。



「何の問題があるんだ?」



しかしそんな自分とは逆に、理奈は眉ひとつ動かさずにそう言った。



「呼び方なんて分かればいいんだけどな...それにもうリナチャンリナチャン言われて慣れちゃったとこもあるし」

「そうなんすか?うーん、どうしよ...なんか私はすごい変な気分になってるんすよね...」

「それなら変えてもいいけど」



自分はちゃん呼びすることにむず痒くなってきてしまったが、肝心の理奈は理奈ちゃんになれてしまっている。どうしたものか。


両方つければいいか。



「理奈ちゃんさんで行くっす」

「ちゃんさんって」

「理奈ちゃんを変えずに私はさんを付けられるっす。三秒で考えたにしては上出来っすね!」

「それ自分で言う?でもちゃんさんって、もう半分以上名前じゃなくなってるし......ふふ」



何かが彼女に刺さってしまったらしく、今までにない笑い方をしている。楽しいからだけではなく、面白いからみたいな。

ああ、この人も人間なんだな、と思えた。自分を機能として認識しているように見えても、人である限り面白くて楽しければ笑うし、もしかしたら泣くこともあるかもしれない。敬意だけではなく親近感まで湧いてくる。



「じゃあ理奈ちゃんさん、今日がありがとうございましたっす」

「うん、また明日」



今日のところはここまでにして、講義室を出て研究室に向かう。あの楽しそうなところがちゃん、色々尊敬出来るところがさん、たまたまいい具合に合致した呼び方ができてしまった。

浮ついているのだろうか、昨日よりも、何となく足が軽い感じがした。

賢者の弟子を名乗る賢者さんアニメ化するってほんと?なろうと漫画しか読んでないけど結構すき、主にTSと魔法と科学のミックスみたいなとこが。仙術はまあ、そっか的な感じだけど

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