1-0 噴煙とともに英雄は
壮大な物語を始めようとして前書きから誤字ってた(ものが足り)
その火山は、世界で最も過酷と言われていた。
二日に一回大爆発を起こし、二ヶ月に一回火砕流が流れ、二年に一回山体が吹き飛び、二世紀に一度世界の気温を下げるほどの灰を吐く。故にその周囲には人どころか動物も植物も生えず、そしてそれらが入ってくることもない。
しかし、ここ数日は違った。
「空間剣装・次元断裂斬!」
「概念誘導・障滅!」
その中央火口にて、時代最強の二人の男が激闘を繰り広げていた。
その一人は魔法闘士アスラ。その拳は山を砕き、海を沸かし、空を貫くとも言われる、人呼んで極限の兵である。
その一人は魔法剣士クレイ。その一太刀は山を斬り、海を燃やし、空を凍らすとも言われる、人呼んで真なる剣聖である。
数ヶ月前、彼らの活躍により、永遠かと思われた地上の戦乱は終結した。世界中が二人を称え、人々は彼らを英雄として称えた。
しかし、二人には新たな問題が発生した。
二人は文字通り世界最強である。逆に言えば、そのレベルの戦力が二つ存在する訳である。二人がもし敵同士となってしまった場合、何が起きるかは想像に難くなかった。
世界最強とは言え二人も人間。考え方が異なることは当たり前であり、ここまで二人が対立しなかったことは世界にとって幸運なこと。ここから先、何が起きるかも分からない。
だから、殺し合いをすることにした。
戦略兵器は複数あるから火種になるのであって、一つであれば抑止力である。幸い互いに互いがその力を私欲に使わないと信じていたため、その点で二人の考えは一致した。
だから、二人で殺し合って、生き残った方が世界を守ることにしたのである。
しかし、二人は大きなミスを犯した。
二人は世界最強なので、対等と言える敵に会ったことがない。これが初めての本気の戦闘である。
結果、二人の闘争本能は今までになく昂り、ただ戦いを楽しむ二匹の獣になってしまっていたのだ。
三日三晩の戦いの末、無数の傷と限界を超えた疲労が二人を蝕んでいたが、それでも二人は戦っていた。
アスラが最上級の火属性魔法を付与した拳を振るい、クレイはそれを回避して独自魔法である空間剣装で斬りかかる。それは最強の障壁によって阻まれるが、その余波だけでアスラの体を無数の斬撃が襲う。
全ての属性の魔法が飛び交い、剣と拳がぶつかり合う。空が揺れ、大地が割れる。もはやそれは災害と言っても過言ではない闘いだった。
しかし、それはついに終わりを迎えた。
アスラの集中が一瞬途切れ、クレイはそれを見逃さず自身の最高の技、畢剣万華を放つ。アスラは障壁魔法で受けるが足りず、遂に致命傷を負ってしまった。
「ああ......」
アスラはそこで力なく崩れる。
「くそ......俺の負けか......」
力なく、微かな、しかしどこか清々しい声で呟く。その声は、クレイの耳にしっかりと届いた。
「そうだな......俺の勝ちだ......」
「これが敗北ってやつか......悔しい......これが......」
「な、ら、今俺が感じてんのは...達成感ってやつか......」
「そうだろうな、ははは」
2人は最後の軽口を交わす。決して美化してはいけないが、しかし懐かしい日々が2人の頭を駆け抜けた。
「後は......」
「何だよ」
「いや、何でもねぇ......じゃあ......お先に............失礼.........するぜ........................」
そう言って、世界最強の闘士は動かなくなった。
「分かってやがったな......あいつ......」
アスラの最期を見届けたクレイは、空を見て、そのまま後ろに倒れる。彼もまた既にほぼ限界であり、もはや人の居る街に帰ることは叶わない。
片方が生き残るための戦いで両方とも死ぬなんて、と愚かな自分達を彼は笑った。
「こうなったら......」
しかし、万事休すという訳でもない。クレイは、独自に研究し、開発した魔法を起動する。
「分の悪ぃ賭けだが......まだマシだな......」
転生魔法。自分の魂と魔力の才能を保存したまま、どこかへと送る魔法。天から授けられる魂たちと混ざり、赤ん坊として蘇るための魔法。
その代償は、もちろん自分の命と、加えて肉体の全て。遺骸の欠片も残らない。
しかし、友との約束を叶えられる可能性が少しでもあるのなら、躊躇うことはなかった。
「出来るだけ早く......戦争の......ないうちに」
こうして、世界最強同士の戦いは幕を閉じた。
──────────
千年後。一人の十歳の少女が、ベッドの上で頭を抱えていた。
「うわ......全部思い出した」
2話の終わりだけ書いてないのでいい加減書こうと思って追い込むために投稿しました 期限がないと何も出来ないのか?