表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

騙すのが有効なのは短期間だけ

 前もって断っておく。この物語は100%僕の妄想だ。

 ――ただし、だからと言って、それが警告としての機能を果たさないとは限らないのだけど。

 

 ある小説投稿サイトで、とある作品のアニメ化が話題になった。

 良い意味で話題になっていたのではない。その作品は多くの利用者から、批判されていたのだ。

 月間ランキング一位を獲得したとはいえその作品には、盗作疑惑や複数アカウントによる評価のかさ上げ疑惑があり、しかも一般向けには相応しくない性的な表現が多数使われていたからだ。

 特に盗作疑惑は深刻で、“誤字脱字までそのまま”と激しく非難されていた。「下手すれば、著作権侵害になるのではないか?」という声まで上がっている程だ。

 

 ――だが、その小説を投稿した本人は、それをほとんど気にしていなかったのだった。

 

 「これ、他の作品の寄せ集めだろう?」

 

 そう僕が尋ねると、彼は悪びれた様子も見せず、むしろ得意げな表情で「まぁね」と笑って言った。

 僕が彼を知ったのは偶然だった。あるSNSで出版社に勤めている人が立ち上げたコミュニティがあったので面白いと思って参加してみたのだけど、そこの参加者の一人が彼だったのだ。それはある飲み会の席での事で、彼は酒が入ってとても上機嫌だった。

 もちろん、作品のアニメ化が決まったからだろう。これで本の売り上げがアップすれば、当然、収入だって多くなる。

 「でも、批判されまくってるぜ、君の作品」

 僕がそう言ってみると、彼は「いいさ」とそう返す。

 「とにかく、スピードと量が重要だったんだ。それに、悪い噂の宣伝効果ってのは意外に高いもんなんだぜ」

 僕はそれで返す言葉を失った。

 確かにそれは彼の言う通りだった。悪い噂の宣伝効果は意外に高い。そして実際に彼は実績を出している。

 だけど、それでも僕には腑に落ちない点があった。先ほども述べた通り、彼はそれで著作権侵害の疑惑までかけられているのだ。どうして、そんな彼の作品が出版社に選ばれたのだろう? 地雷にしか思えないのに。

 もちろん、それくらい、恐らく彼だって分かっているだろう。

 

 ――では、どうして、そんな手段を執ったのだろう?

 

 「いよぉ、楽しそうにやっているね」

 と、そこで声がかかった。見てみると、コミュニティのリーダー、出版社のお偉いさんが姿を見せている。

 そのリーダーが来たのを見ると、彼はペコペコと頭を下げつつ、「ああ、どうも。お陰様で」などと言った。

 そしてそのまま席を立つと、リーダーの近くの席に腰を下ろした。

 少しの挨拶もなく、席を移動された僕はなんだか軽んじられたような嫌な気分になった。それでって訳でもないけれど、その時妙な予感が走ったのだ。

 彼はこのコミュニティに参加してから、出版デビューが決まった。つまり、デビュー前から、出版社と繋がりがあった事になる。

 僕は“まさか”と思いつつ、彼の傍にそっと寄るとこっそりと聞き耳を立てた。すると……

 

 「ええ、心配しなくても、稼いだ印税の半分はお渡ししますよ」

 

 そう彼が言っている声が聞こえて来たのだった。

 つまり、そういう事だろう。

 彼は前もって出版社の人間と約束をしていたのだ。「もし、デビューさせてくれるのなら、印税の半分を渡す」と。

 だからどんな作品でも良いから、早く仕上げる必要があり、どんな手段でも良いから、話題になる必要があった。「それくらいの出版させる理由がなくちゃ、流石にデビューさせる訳にはいかない」とでも言われたのかもしれない。噂通り、複数アカウントで、評価を上げるくらいの不正もやっている可能性だってあるだろう。

 

 ――なるほどね、と僕は思う。

 ただ、これが頭の良い手段なのかと問われれば、僕は疑問を感じざるを得ない。

 彼の手段は、読者を騙しているも同じだ。そして、“騙す”という手段は信頼を傷つけてしまう。

 断っておくが、これは綺麗事を言っている訳じゃない。

 騙されれば、普通は二度と同じ手段は通じない。つまり、“騙す”という方略は、短期戦においてのみ有効なんだ。

 例えば、もし仮に、たったこれ一回で、彼が一生困らない程の収入を得られたとしたなら、このやり方は充分に有効だと言えるだろう。

 が、失礼だけど、僕は彼の本が書店で売られているのを見たことがない。つまり、充分な収入にはならないはずだ。

 しかも、彼が長期間、作家をし続けるのが難しいとなれば、一般職を探すしかないわけだけど、この悪評だ。それにも支障があるのじゃないだろうか?

 

 ネットが普及して、様々な情報が入るようになった。

 それにはたくさんのメリットももちろんある訳だけど、同時にデメリットもある。そして、犯罪を引き起こすというのもその一つで、“交換殺人”なんていう、物語の世界でしか起こりそうにもない事件が、現実に起こってしまっている。

 彼も出版社の人間になんか知り合わなければ、こんな事はやっていなかったのかもしれない。

 そう思うと、なんだか僕は彼も被害者のような気になってしまった。


つまり、今の時代、小説家を目指す人は、何かしら他の生活手段も持っていた方が良いって話ですよ。

(そっちかい)

いや、でも、これは本気でそうで、有名な女流作家の人が「ネットが普及してから、収入が一気に減った」なんてコメントを出していました。

自分の身は自分で護ろうぜ!


もし、政治汚職みたいなことが、小説家プロデビューであったなら、こんな感じじゃないかと思って書いてみました。

まぁ、こんなことは起こってないと思います。ただ単にエロ分多目なら、ある程度の読者や視聴者を獲得できるとか考えたとかじゃないですかねぇ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 百さんが仰っている通り、全くの創作なんでしょうけれど、もしかしたら本当にあるかも……って思ってしまいそうな話で、ちょっと怖いです(;^ω^) 現実では、売らんかな主義で作家を使い捨てる出版社…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ