実在した。あるいは実在する日本の政党とは一切関係ありません。
いつかの時代のどこかの国のどこかの政党を彷彿とさせる内容ですが、作中に登場する政党及び人物は実在の政党、人物とは一切関係ありません。
西暦二千XX年、衆議院選挙で大勝利を収めた主権在民党は永年に渡り政権与党を担ってきた民衆自立党から政権を奪取した。しかし万年野党であったことによる政権担当能力の無さに起因する行政運営の稚拙さによって、その船出から暗礁に乗り上げてしまうこととなった。脱官僚を謳いながらその政権の実体は財務省官僚の傀儡政権に過ぎず、衆議院議員選挙の目玉政策だった各省庁の特別会計削減公約は各省庁官僚の激しい抵抗に遭って完全に失敗に終わってしまう。さらにその特別会計を財源に当て込んだバラマキ政策は予算不足から全くの「絵に書いた餅」と化しただけでなく、政権公約だった消費税減税を無期限凍結したのみならず財源不足を理由に民衆自立党でもしなかった消費税、所得税、固定資産税の大増税を数を恃みに可決して内閣支持率は急降下した。それだけではなかった。財務省主導の強引な経費節減は民衆自立党の長期政権に嫌気がさして主権在民党についた財務省以外の官僚を敵にまわし、中央省庁改革はストップ。元々行政経験の無い内閣閣僚はただの飾りとなってしまった。あまりの稚拙な政権運営は「さんずい宰(滓)相の四無し(無知、無策、無能、無責任)政権」とネットやワイドショーで揶揄されてしまう有り様だった。その中に起きた拉致との関係が疑われる不審船対応では八方美人的な対東アジア外交政策が仇となり、拿捕や臨検、威嚇射撃といった有効な対応を対処した海上保安庁にさせないまま防空識別圏外に逃げられてしまった。市民運動家(プロ市民)上がりで野党時代に自衛官に対する露骨な不信感を公言していた首相は、この事態の対処に陸海空自衛隊に出動を命じないどころか出動禁止命令を出す有り様であった。対米外交でも現実的な安全保証を無視した米軍基地返還、在日米軍予算削減を押し進めようとした結果、米国との関係は修復不可能なほどに悪化した。首相の八方美人は政権内部にも混乱をもたらした。連立を組む保守系の新国民党や左派革新系政党の「民衆による社会を創造する党(略称:民社党)」におもねった議会運営は元々寄り合い所帯だった主権在民党内に不協和音を生じ、旧民衆自立党系議員と旧民社党系議員との内ゲバとしか表現のしようのない見苦しい党内の主導権争いか起きた。この混乱を首相も主権在民党幹事長も収拾できず、離党して民衆自立党や民社党に「出戻り」する議員や新政党を立ち上げる者が続出した。民心は完全に主権在民党から離れ、民衆自立党政権の復活や保守新体制を望む声が高まった。そんな中行われた第×回参議院選挙では現職閣僚を含む主権在民党の候補が一人区で次々と敗北、比例区でも票が伸びずに軒並み落選し、かつての与党だった民衆自立党や新進保守系政党の「青年日本の党」が大きく議席数を伸ばし、衆議院と議席数が逆転した「ねじれ国会」となった。参議院で過半数を勝ち取った民衆自立党を中心とした保守系政党は衆議院で可決された主権在民党の法案を片っ端から否決させて議会は空転、両院協議会が開かれるも調整は全くつかずに廃案となる法案が続出した。国政の混乱を収拾するべく衆議院解散、総選挙を行うべきとする声が民衆自立党だけでなく与党の主権在民党内からも上がりはじめた。しかし政権の座に固執する首相はこの声を黙殺、混乱したまま臨時国会は閉会した。そんな中、これまでの政権による対米追従、媚中媚韓媚朝媚露外交に異議を唱え、現行政治外交体制に疑問を投げかけて参議院選挙に出馬するも掲げた政策が急進的、反米で、かつ国粋主義的だったために全員落選した「大日本回天党」党首の大宝寺義人は暴挙とも言える方法での主権在民党政権打倒を画策していた。
大まかなプロット(粗筋)だけで結構な分量になってしまっています。これはまだ前章、最後に出てきた大宝寺がとんでもないことを画策します。