早朝ダッシュと武器選び
01
午前5時。
僕達は城の外にいた。
何故こんな早くに起きているのかと言うと、走るためだ。
しかし、朝のジョギングというわけではない。
地面を思いきり蹴るほどの全力疾走である。
「どうした!まだ半分だぞ!気を抜くな!」
僕達の前を走っているルシウス部隊長は息切れしていない。
「ゼェ…ハァ…ハァ…」
対して僕達は彼の走りに必死でついていくだけで精一杯だ。
城の周りは約10㎞。
僕達にはまだ鎧は支給されていないので、普段着なんだけど、部隊長は重い鎧着ながらそれをものともせずに走っている。
「隊長…ハァハァ…化け物すぎるだろ…!」
ニトはヘロヘロになりながらも頑張って走っている。
全くだと思いつつも、僕は走る前に部隊長から言われた言葉を思い出した。
「私は君達の命は優先して守る。だが、時には私の力では守りきれない時もあるだろう。そうなった場合、君達には自力で逃げてもらわなければならない。だから、今日から毎日城の周りを走ってもらう!」
そうだ、これは僕達の命を守るための訓練なんだ。
だから必死についていかなけらばならない。そうしないと、死んでしまうから。
2時間後、僕達は城の周りを走り終えた。
皆は地面に膝をついたり、倒れたりと休憩をしていた。
「皆。よくやってくれた。なかなか良い体力持ってるじゃないか」
ルシウスはストレッチをしながら僕達を褒めてくれた。
彼はやはり汗はかいているものの疲れた様子は全くない。
「今日はお前達の体力測定も兼ねて少し早めに走ってみたんだが、最後尾のアヤメでも2メートルしか離れていなかったな」
「ハイ……アリガトウゴザイマス……」
アヤメは息をきらしながらに仰向けになっていた。
「明日からは私の普段のペースで走る。心配は要らん。今日よりは遅いからな。30分位休憩を取る。その間に水分補給等をわすれるなよ。」
「「「「「「………はい」」」」」」
ルシウスが一旦城へ戻った後僕達は近くの水飲み場へ行き水を飲んだ。
飲んだ瞬間、体が芯から冷える感じがした。
「ぶはぁ!!あ゛あ゛冷てぇぇ!!」
「ぶはぁ!!あ゛あ゛冷てぇぇ!!」
ニトとカイルは豪快に水を飲んでいた。動きがシンクロしてるって、どんだけ仲いいんだよ。セリフまで同じじゃねえか。
「こんなに冷たい水、初めて飲んだぜ!」
水を飲んだニトは嬉しそう言った。
ん?
水なんて何処でも同じじゃないのか?
「ねぇニトさん。水は何処でも美味しいじゃないですか?」
アルキールは不思議そうに聞いていた。
「いや、俺が住んでいた国では水っていうのはぬるいのが普通だったぜ!」
ニトはさも当然のように答えた。
「へぇー。そうだったんですか!でも、どうしてです?」
「それは俺にはわかんねえや……」
「火山や砂漠等の熱い地域では水がマグマの熱や日光でぬるくなってしまいます。一方でシュメールや密林大国ハリストは気候が穏やかであったり気温が低いので、水は比較的冷たいたいまま保たれるんですよ。」
「あとはー、植物のお陰でもあるんだよー。」
ニールとアヤメが二人に説明をした。
「植物たちが水を貯めたり地表の熱を葉っぱで遮ってくれるからー、冷たい水が飲めるんだよぉー。だからニトくんの他にもー、ライナちゃんも冷たいって感じたんじゃないかなー?」
「…はい。確かに私の国とは違い、冷たくて美味しかったです…」
ライナはアヤメの言葉に頷いた。
「なるほどです」
「なるほどな!」
ニトとアルキールは納得したようだ。
ところで……
クラインは、何処にいった?
「なぁアルキール。君のお兄さんは何処いったんだ?」
僕は質問せずにはいられなかった。
昨日の一件もあるので、クラインの行動が気になるのだ。
「ああ!?あのバカにぃ!また一人でふらふらと!」
アルキールは青ざめながら、クラインを探しに何処かへ走って行ってしまった。
「クラインって、今まで誰にも気づかれてなかったんだね。」
「うん。ある意味才能だよね!」
僕とカイルは彼の特技?について話していた。
才能というより、抜け出す為に磨き上げた技術だろう。
休憩開始から20分後。
僕達は木陰で休憩をしていた。
そこに、上空から謎の影が映しだされた。
影は次第にくっきりとしてきて、それがはっきり人の影だと分かった瞬間。
何かが落ちてきた。
砂埃がやんで、前をみると。
そこには、頭に無数のコブができたクラインが
倒れていた。
「ってぇぇ!何すんだいもうとぉ!」
頭のコブをものともせず、クラインは誰もいない方向に叫んだ。
いや、誰もいないというのは嘘である。
その方向からは、さっきの疲れを感じさせないほどに勢いをつけて走るアルキールの姿が見えた。その表情は怒りを浮かべていた。
「訓練サボって、なに城下町の女の子ナンパしとるんじゃぁーーー!」
そんなことを言いながらアルキールは、兄めがけて飛び膝蹴りを繰り出してきた。
「おい、バカ!もうコブは十分だ!もっと兄ちゃんに優しくし…どわぁぁぁ……!!」
言い終わる前にクラインはみぞおちに蹴りを食らっていた。
アルキールは、きっと体術に長けているんだろう。
そう思わされた休憩時間だった。
02
10分後。
部隊長が戻ってきたと同時に僕達にこんなことを言った。
「皆。今からある所に向かう。付いてきてくれ」
僕達は部隊長に言われた通り付いていった。
向かった先にあったのは城内の武器庫だった。
中に入るとそこには、直剣や曲剣、ダガー等の剣があった。
それだけじゃない。
大小ある弓やクロスボウの遠距離武器。ハンマー等の打撃武器。またはハンマーと斧の合体した武器等があった。
しかし、僕がみたのは武器庫のほんの手前だけで、しかも見たことのない武器もあるので正確な規模はわからない。
「うわぁ!おっきーい!」
カイルは目をキラキラさせて武器を眺めている。
こいつは素直だから、リアクションも顔に出てしまう。
「さすが、各国から騎士を集めるだけありますね。武器の種類が豊富です。なかにはマイナーな武器も。機械仕掛けの武器まであるなんて…」
ニールは興味深く武器を眺めている。
「今から皆には、この中から自分の武器をえらんでもらう。迷ったら使いたいと思った武器を選ぶといい。選んだら外にある練習場で試してみろ。合わなかったら変えることもできるぞ」
私はここで待っている。そう言って部隊長は脇にずれた。
「よし!まずは探索だ!」
言いながらニトは奥へ消えて行った。
「私はあれがいいなぁー。ここにあるかなぁ ー?」
アヤメはおっとりとした顔で回りを見渡している。もう決めてあるのか、探し初めていた。
「振りやすい武器がいいです……」
ライナは目の前の武器に呆気に取られていた。
「俺は使い馴れてるのにするかぁー」
クラインも何を使うか決めてるようだ。
僕はカイルと一緒に探すことにした。
「小さい頃は木の棒で遊んでたから、そのくらいの長さの武器がいいよね」
カイルのいう木の棒は、長さが50㎝位の棒のことである。
そのくらいが僕もちょうど良いと思っていた。
「そうだな。騎士デビューというわけじゃないにしても、馴れない武器を使うのは難しいからな」
でも。
僕達は武器は見たことあるが触ったことがない。だから実際どうなるかは分からない。
「案外、変わった武器が使いやすかったりしたりして。」
「ありえるかもね!」
結局僕とカイルは40㎝程度の直剣に落ち着いた。
サイズが変わっているのは、50㎝の直剣を持った時に振るうことができなかったからだ。
同じ横幅3㎝程度でも、10㎝違うだけでこんなに違うのかと驚かされた。
他の皆が何を選んだかと言うと―
ニトは打撃部分がギザギザになっているハンマー(ドワーフらしい)
ライナは刃が途中から半円になっている小さめの双剣(曲剣なのかな?)
クラインは少し大きめの弓と短刀(エルフっぽい!)
アルキールは武器という武器ではないが、手には金属製のグローブのようなもの。足には小さいトゲや収納可能な刃がついたものを装備していた。(初めて見るものなのでよく分からないけど、なんだこれ?)
ニールは大小別の剣(双剣の類いだろう)
アヤメは振ることで刃が出てくる鞭(見た目と反している!)
アルキールとアヤメの武器に関してだけど、エルフは弓と短刀を使うイメージなのでアルキールが選んだものには驚いた。
アヤメの武器は使う場所によってはご褒美になるだろう。
需要があるからこそ言えることだ。僕はそんなのがご褒美とは思えないけどね。
「なあ、アルキール。それって武器なのか?ぱっと見ただの鎧なんだけど?」
ニトがアルキールの武器に関して質問していた。
「はい。ちゃんとした武器ですよ!」
「でもよぉ、エルフって弓とか短刀使うイメージあんだけど。お前、なんでそんなの選んだんだ?」
「えっと…それは…………あの……」
ニトのその質問でアルキールは急にモゴモゴしはじめた。ちょっと顔が赤くなっている。
「…?なんだよ。ハッキリ喋ろよ」
歯切れの悪いアルキールにニトが話すように促すとアルキールは「…………」と沈黙を続けた。
アルキールが黙ったままでいると、横からクラインが
「こいつ、小さい時から弓とか刀使うの全然駄目だったんだよ。逆に、体術だけはすごいんだぜ。俺みたいな奴なんてぶっ飛ばせる位にな」
と説明してきた。その顔は明らかにアルキールを横目にみながら笑っていた。
「ちょっと兄さん!そんなこと言わないでよぉ!」
クラインに自分の秘密を暴露されてアルキールは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。
「アハハハハハ!小さい時、弓の練習で俺に射ったときもあったよなー!」
「……あれは……ほら……んえぁぁぁぁ…」
とうとうアルキールが泣いてしまった。
彼女気は強いが一度崩れると以外と脆いようだ。
クライン。
後でアルキールにボコボコにされても知らないぞ。
ちなみにアヤメの鞭に関しては誰も質問しなかった。
なぜなら、それは彼女の満足そうににやけた表情を見ればだれだって想像できるはずだ。
皆が武器を選び終えたのを見計らって、部隊長が確認してきた。
「よし。皆、自分の武器は見つかったかな」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「はぁい…」
「それでは、次は君達の中にある潜在魔力が何なのかを見に行こう」
……せんざいまりょく?
僕は初めて聞くその言葉に、僕は内心首をかしげた。
投稿ペースは2週間といったな?
あれは嘘だ。というわけではありませんが、早めにできたものは出来上がり次第投稿したいと思います。作者の勝手で申し訳ありません。
物語が展開されるのはまだ先です。