悲鳴
30番は悲鳴で目が覚めた。
悲鳴なぞ生まれてから聞いた事もなかったので、それが悲鳴だとは思えなかった。
奇声を発していたのはマザーだった。
振り向くとマザーが何かしら黒い影に覆いかぶされている。真っ赤な液体と内蔵らしきものが飛び散っていた。
「痛い!ドクター助けてください!誰か!誰かこの獣を退けて!」
人々は呆然とその様子を見つめていた。
平穏だったはずのこの部屋にそんな獣が現れるわけがない。
しかし、目の前でマザーは次々に現れる獣に食われていく。
「痛い!苦しい!ぎゃああああ!!」
マザー以外の誰かが悲鳴をあげた。
それを皮切りにそれが現実のものと分かった。
「逃げろ!食われるぞ!」
多くのものが逃げる為に走り出したが、ずっと横になっていた体は重く上手く走れなかった。
マザーを食した獣は一回り大きくなって体は血でぬらぬらしていた。
「30番、こっちだ!」
52番が声をかけてきた。指さした先には破棄される者が通る扉があった。
「待ってくれ!そっちには行きたくない!」
「何言ってるんだ!死にたいのか!」
「ぎゃああああああああ!!」
悲鳴に振り返ると42番が獣に抑え込まれて腹を食いちぎられていた。
「うわああああああ!!」
誰もが無我夢中で逃げようとして人を押しのけて破棄の部屋へ向かっている。
しかし、次々に捕まって鋭い爪で引き裂かれて行った。
30番と52番は逃げ回って血まみれになっていた。




