平和が1番
「先生、今日も退屈です。我々は確かに癌を抱えていますが、何故横にならなければならないのか、どうか教えてください。」
30番は次の日も耐えられずにカウンセリングルームの部屋を訪れた。
「あなた方の体の中には危険な細胞があって、動けば動くほどその危険な細胞が大きくなるんです。じっとしているのは辛いでしょうが、生まれた時からの運命なのですよ。」
「そうなのですね…。耐えられなければ破棄されるんですね…。」
「あなたはそうならないですよ、とても頑張っていますから。」
30番は苛立ちながらベットに戻った。
乱暴に横になる姿を見て42番が声をかけてきた。
「大丈夫?荒れてもどうしようもないわよ。寝てるしかないんだから。」
「分かってるけど…。なぁ、君はいつも平穏そうだけど、どうしてそんなに落ち着いていられるんだ?」
女は一息ついて、
「そうねぇ、想像するのよ。私が自由になったら何がしたいか。海へ出かけたり、旅行に出かけたり。でもそれもこの体じゃ様にならないわよね。結局ここで寝てるのが私の運命なんだなぁと思うの、そしたらこのままが1番幸せだって分かるのよ。」
「つまり、悟ったって訳か。」
「そういう事ね。」
「俺には分からないよ、見せられるのはいつの時代なのか分からないけど、外で楽しそうな人達ばかりだ。目の前にあるのに掴めないなんて、残酷だよ。」
「それでも私たちは生きてるのよ、受け入れるしかないのよ。」
男は自嘲気味に笑いながら言った。
「君は笑うだろうけど、例えば俺と君が恋に落ちて、家族を築くんだ。そして旅行に行ったり、時々ケンカして、仲直りして…。そういうのは全て夢なんだろうな…。」
男の目から涙が流れた。
「そうね、そういうのは叶わない夢なのよ…。」
男は薬を1錠飲んで眠りについた。




