私と私の戦い
[第一話]
365日、そう、一年の中であなたが一番好きな日はありますか?例えば、バレンタイン?クリスマス?
恋人との記念日?
「えー、好きな日なんて沢山あるよ~ってか全部!!イベント系とか記念日とか全部!!」
「でもさ、まあ強いて一つに絞れというなら絶対これじゃない?」
女の子二人は口をそろえて言う。
「誕生日」
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私はテレビをぼぅーっと見ていた。
テレビに映る女の子たちが話を続ける。
「誕生日はさ、みんなお祝いしてくれるじゃん?その日だけはラインがたくさん来るし」
「誕生日プレゼントたくさんもらうしね!京子はもらいすぎなんだよ」
「あすかだってたくさんもらってたじゃん!クラスの子にお菓子いっぱいもらってたし」
「京子だってもらうじゃん!しかも彼氏までいてさ、夜サプライズで家来てたし、ビトンの財布もらったんでしょ?あ~羨ましいにもほどがある~。私も彼氏ほしい!!」
と、テレビのインタビューだと忘れているのかというぐらい二人で会話を楽しんでいる。
「あ!!とにかく!!誕生日だけは一番最高の日です!!幸せです!!」
といってピースしているのを最後に私はテレビを切った。
暗闇のなか一人ベットにあおむけに横たわる。
「私は最高じゃありません~」
今日5月25日が私の誕生日ですがラインは5件。親や親せきからお祝いされるだけ。
私、白河渚は傍から見たら多分普通の22歳(今日で)
小学校から高校までバスケをやっていたから運動はそこそこできるし、学校のレベルも普通のところ通ってたし、性格は男っぽくてひねくれやすいし一人で突っ走ってしまうことあるから多少は難ありだけど、友達もいるし、遊ぶからいうほど別に変ではない。と思う。
私は別に友達がいないわけではない。が、お祝いされないのだ
他の人の誕生日はちゃんと覚えてお祝いしている。失礼だけど5人以上は確実に。
キャラ的にも盛り上げ役だから盛大に。
なのに、自分の誕生日は全くもってお祝いされないのだ。
みんなが思う世間一般の誕生日なんて私にはない。
この日だけは早く終わってほしいと思う。この日だけは心がすだれていく。
この日だけは本気で死にたいと思う。
私は目をつぶった。
自分の前に友達の幻影をたくさん作った。
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あなたがお祝いしたいと思うのはどんな人ですか?家族?友達?恋人?好きな人?
この日が来ると毎回思う。
友達は友達でもお祝いしたい人の誕生日は忘れないよね。
学校、仕事、部活。
みんなそれぞれ忙しくて大変だと思う。でもどんなに忙しくても
大切な人の誕生日は忘れないよね。
誕生日とは
他人が決める自分の存在意義の成績表である
と思う。
他人は自分の為に生きているわけではないし、見返りを求めて友人をお祝いしているわけではない
が、どうしても、どうしても思ってしまう。
あぁ、あなたたちにとって私とはどうでもいい存在なんだ
少なくともあまり価値観を置いていないんだ と。
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目を開けるとうっすら豆電球がオレンジ色に光っていたが
それを打ち消すかのように私の部屋は真っ暗すぎた
だんだん下に引きずり込まれていくかのように
暗くなっている気がした。
「シニタイ」
「シニタイ」
思わず口に出してしまった。耐えられない。
この寂しさに。そう思ってしまう自分にも。
「人生やり直したいな」
そういった瞬間、全てが消えた
豆電球も家具も、部屋の空間も全てが消えて本当の真っ暗になった。
ただそこには私と私そっくり・・・というか私がいた。