約束
そして、現在。
「なんで、別れちゃったんでしたっけ?」
とりあえず、会議が終わり、茜が千代に尋ねる。
「……なんでだっけ?」
「覚えてないんですか?」
「まぁ、昔のことだし」
「でも、今は、大事な人いますもんね。如月副店長」
「?」
とりあえず、店長が帰ってくるまで待機ということになった。二人は、仕事着である着物を更衣室で着替える。
千代は、首を傾げた。
「大切な人?」
「え?奥山店長とお付き合いしてるんじゃ」
「してないけど?」
「え??!だって、この前バイトの瑞月ちゃんが、二人が資料室でキスしてるの見たって」
頭の整理がついていけない茜とは、対照的な千代。
「あ~……キスはするよ?」
「え?!夜の方は?!」
ぐいぐいと、聞いてくる茜に軽くデコピンを食らわせる。
「朝から下ネタぶち込んでくるの辞めてくれるかな」
「すみません。でも、奥山店長は、如月副店長のこと……」
その言葉に、千代はあることがフラッシュバックする。
ザーザーッ。雨が降る中、涙を流して立っていた遥。
『僕は、あの人には要らない存在みたいやねん…僕が、どんなに頑張っても……千代も……いつか……僕を見捨てるん?』
『そんなことない!!!私は、遥さんの傍にいるから!だから、何処にも行かないで!』
彼の胸板に、顔を埋めて必死にそう呟く。
そこから、遥と、千代の謎の関係が始まったのだ。
「如月副店長?如月副店長ったら!」
少しの間、上の空だったようだ。茜が、千代の前で手を振る。
「あ、ごめん」
「で?!奥山店長とどんな関係?」
一から説明するのが、面倒臭い千代からでた答えは。
「セフレ?」
あ、今私最低なこと言ったわ。まぁ、いっか茜ちゃんだし信じるワケないはず…。
「な、なるほど……」
ーー あー……信じちゃった。
誤解を解くのも面倒臭いので、とりあえず遥にテレパシーで、『ごめんなさい』と、謝っておいた。