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ちよすず物語  作者: ひな菊
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昔の話しをしましょうか


コレは、まだ千代が遥と会う前の話だ。


千代は、遥と出逢う前は料亭で受け付けで働いていた。


近くには、『かすみ大学』と言う大きな学校があって、良く学生や職員たちが通っていた。


「いらっしゃいませ!」


笑顔で、彼女は接客をしていた。


四人の職員か、若い男達が店にやって来た。


その中の一人に、金髪にピアスの如何にもチャラい!を絵に描いたような男がいた。


その時の千代も、チャラい人だなぁ。としか、思っていなかった。まぁ、人は中身だ。と、思いつつ彼女は、注文を取りに行く。


「えっと……俺は、トンカツ定食3と……おい、お前は?」


「さば味噌煮定食」


以外にも、チャラい人が渋いモノを頼んできた。


食べ物をメモっていると。


「ねね、お姉さん。彼氏とかいるの?」


「はい?」


「名前は?歳いくつ?」


前言撤回、人は中身ではなく、見た目かもしれない。


千代は、持っていたお盆で頭を殴りたい衝動に駆られたが、営業スマイルを貼りつけた。


「あの…」


「俺は、七倉!七倉 陽平」


七倉は、笑顔でそう呟いた。


これが、千代と七倉 陽平の出逢いだっ

た。


彼は、良く来るようになった。


一週間、土日以外のお昼やたまに閉店ギリギリに来る、七倉。


「今、学校がテスト期間でさ。みんな、カップ麺とか食ってるんだけど、俺は、ここのさば味噌煮定食が妙に食いたくなるんだよな」


七倉に段々と、慣れてきた千代は良く彼と話すようになった。


一人飯は、寂しいと同じテーブルに座り彼が、さば味噌煮定食を食べているのを見ながら、他愛もない話しをするのが、いつのまにか彼女の日常になってきた。


次は、いつ会えるのかな?


次は、どんな話しを聞かせてくれるのかな?


次は……次は……。


そう考える内に、千代は、思うのだ。


あ、私あの人が好きなのかも。


曖昧な気持ちだった為、わからないが。


ガラガラ。と、店の扉が開く音がした。


「いらっしゃいませ!」


「よっ!千代!」


彼に名前を呼ばれると、微かに胸が高鳴るのだ。


いつもの窓側の席に座る。お冷を持って彼のところに持っていく。


「俺は、さ」


「さば味噌煮定食ね!」


「お?以心伝心??」


「ワンパターンなのよ!誰だって覚えるわ」


「相変わらず、可愛くないねぇ」


「七倉さんに言われたくない」


ふん。と、澄ました顔で厨房に戻る。


そんなある日のことだった。


また、お昼頃にいつものかすみ大学の職員たちがやって来た。しかし、七倉の姿がない。


「いらっしゃいませ!」


「あ、いつもの三つで」


メガネを掛けた腹黒そうな男が、注文する。


確か、『龍夜』て、七倉さんが呼んでた気がする。


「畏まりました!…あのぉ」


「はい?」


「七倉さんは、今日は?」


「ああ、あいつは今風邪引いて寝てると思いますよ」


「え?!」


大丈夫かな?……あの人、ひとり暮らしって言ってたし……。


「七倉の家の住所教えましょうか?」


「え?」


そう、龍夜は呟くとテーブルに置いてあったスーパーのチラシに、器用に地図を書き始める、


「え?え?で、でも」


「アイツ、最近貴女のことばかり話すんですよね」


テーブルに頬杖を付いて、横目で千代を見つめる。


「おじちゃん、おばちゃん!ちょい、行ってくるね!」


三角巾とエプロンを脱ぎ捨てて、彼女は店を飛び出した。


「兄さん、なにを考えてるの?」


「べーつーにぃー」


楽しそうに笑う、龍夜であった。


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