世間は、狭い
~次の日~
また、彼女たちの日常が始まる。
迷涼に、起こされて。
優雅にお茶をしている遥に、からかわれてパンダのぬいぐるみを投げつける。
そのまま、迷涼を大学に送り遥と、千代も仕事場に向かう。
「さぁー、着いたで」
迷涼の大学から、仕事場まで車で約10分。家から、歩いて来れない距離ではないけれど、仕事場の途中にある為、遥に甘えている。
千代は、ふと気付く。後部座席に置いてあった、1枚のクリアファイル。
「あー……これ、あの子のだわ」
クリアファイルを、手に取り車から、降りて遥に見せる。
「ん?なにそれ」
「多分、レポートだと思う。昨日、夜中まで掛けて書いてたから」
「なるほど。て、コレないとすずちゃん困るんちゃうの?」
「そうですよね、私届けてきます」
走り出そうとする千代の手を、引っ張る遥。
「足、ヒールやろ?それで、転んでもうたら大変やん。僕が、車でチャチャッと行ってくるわ」
「でも…店長、朝の会議は?」
「あー、遅れるっていっといて?」
千代の頭をポンポン。と、叩いてからクリアファイルを手に取り、車に乗ってそのまま行ってしまった。。。
「変な店長」
「あ!如月副店長!!」
店から出てきたのは、バイトの茜だ。良く、彼女とは恋の相談などをしている。
「どうしたの?」
「今、かすみ大学行ったらダメですよ!!」
「なんで?」
かすみ大学は、迷涼の通ってる大学だ。
「あの人がいるんですよ!」
「あの人?」
「如月副店長の元彼!!」
「え?」
止まっていた幸せな時間が、動き出した。