学園祭3
「あ・・・お邪魔でしたか?」
失礼しましたぁ。と、教室から去ろうとしていた兄の龍夜を必死に止める弟の右京。
「待って待って!!兄さんっ!!ここは、俺の弟に何すんだ!でしょ!?」
閉まりかける扉に、抱きついて訴える。
「オレノオトウトニナニスンダ」
「なんでそんなに片言!?てか、逃げないでよ!!」
必死な右京を見て、嫌々部屋に入る龍夜。
「面倒くさい・・・。お前が撒いた種でしょ?なんで、俺が処理しないといけないんですか?」
はぁ・・・。と、溜息をつく彼は目の前にいるロリータ姿の迷涼と、セーラー服姿の遥を見た瞬間、眼の色を変える。光の速度で、遥の手を握りしめる。
「貴女は、なんて罪深い人なんだ・・・この俺の心を一瞬で、捉えてしまうなんて・・・」
「ホンマ、この兄弟なんなん?発情期にも程がある」
流石は、兄弟とでも言ったところか美しい人を見るたびにこの反応。遥は、思わず目を据わらせる始末。
「あれ?その声」
「僕だわ、ボケ」
なーんだ。と、握っていた遥の手を離す。ざわざわと、騒ぐ女子生徒達に思わず何もなかったように、いつもの笑顔を貼り付けて対応する。
「こういう悪い大人も世の中にはいるから、みんな気をつけて下さいね」
はーい。と、手を挙げる女子生徒達。まるで、小学校低学年の授業の様な光景に遥が、吐き捨てるかのように口を開く。
「詐欺師みたいな顔した奴にだけは言われとーないわ」
彼の言葉に、頷く千代達。しかし、右京が頷こうとした際に龍夜がその場にあった教科書。
「なんで!?」
スタスタと、笑顔で近付いては女子生徒達から見えない場所まで連れて行き、壁に押し付けて前髪を掴み上げいつもの笑顔とは打って変わって、真顔で呟く。
「誰せいでこんな事になってると思ってるんですか?」
「いや・・・それは、兄さんが・・・」
「お前が、仮眠室に居なかったからだろうが」
「なかなか兄さんが起きなくて・・・」
「起こし方が悪い」
「え・・・それって、俺が悪いの?じゃあ、どやって起こせばよかったのさ」
「殴るなりすればいいでしょう??」
「え・・・そのあとは?」
「お前が殴られる」
「理不尽!!!!」
遠くから見たら、仲睦まじい兄弟の姿だろう。しかし、話している内容は酷いものだった。それを、聞いていた遥達は、少し右京が可哀想に思ってしまうのであった。




