彼女たちの想い
くっらい過去は、終わりましたがまだまだ千代ちゃん編が、続きます!
御付き合いして下さると嬉しいです
全ての事情を聞いた迷涼は、信じられないと言う表情を、浮かばせた。
「これが、私のすべて……」
「え?ちょっと、待って?なんで?え?ごめん、理解できない」
「そりゃあ……いきなり、全部は理解できひんわな。」
遥と、千代は、顔を見合わせて苦笑いをする。
「え?じゃあ、今二階堂グループの会長さんて……」
「多分、葵希兄さんが継いでる。私は、途中で、辞退てコトにされてるから……」
「千代姉ちゃんの捜索願いとかは?何年も、家に帰ってこない娘を心配しない親は、いないは………あ。」
話しの途中で、迷涼はある事を思い出した。
何年か前に、やっていたニュース。
『有名化粧品会社二階堂グループが経営しているスノードロップ、会長令嬢謎の死亡』
その出だしが、迷涼の脳裏を通る。
「家出少女なんて……体裁上良くないでしょ」
「だからって、自分の娘を死んだことにするの?!おかしいよ!!千代姉ちゃんが、何したのよ!!?」
「すずちゃん……」
遥は、曇顔で彼女の名前を呼ぶ。
「私、抗議してやるッ!」
しかし、迷涼の怒りは収まらない。バッ!と、勢い良く立ち上がった迷涼は、そのまま千代の肩を掴み揺らす。
「すずちゃん……」
「だって!おかしいよ!!本当のお父さんなんだよね!?お母さんなんだよね!?それなのにッ「迷涼ッ!!!!」
迷涼は、千代の実母、実父、兄に腸が煮えくり返る思いで、我を忘れていた。
そんな、彼女の腕を握り締める遥は、大声で迷涼の名前を呼ぶ。
ふと我に返ると、自分の手から伝わるカタカタッ……。 と、震える千代に、一言謝る迷涼。
「冷静にな……僕かて、何度二階堂グループ潰そうとしたことか……でも、千代はソレを……望んでない。一番、辛いのも痛いのも……僕達やのうて……千代なんよ」
「だったら……」
「私はッ!」
遥と、迷涼の言い合いをこれ以上聞いていられなかった千代は、立ち上がり2人に笑顔を向けた。
「私は、今が一番幸せなの!遥さんがいて、迷涼、あんたが居れば!それだけ!!ごめんね、情緒不安定なところ見せて!でも、もう大丈夫だから!」
「ウソツキ」
「え?」
「千代姉ちゃん、前に私に言ったよね?!『怖がるな、負けるな、自分に』て!!怖がってるのは、誰??!負けてるのは、誰よッ!!!」
「ごめん、すず……この話し……コレで終わりにしよ。私、もう寝るね……おやすみ」
千代は、まるで本当に逃げるように自室へと消えていった。
取り残された迷涼と、遥。
「さっきは、大声出してもうて……堪忍な」
迷涼の方を向くと、彼女の大きな瞳から大粒の涙が流れて居た。
「すずちゃん……」
「生きてるのに……千代姉ちゃんは、生きてるのにッ!ちゃんと、ここに居るよ!」
「うん」
「なんで、隠れてコソコソ生きていかないといけないのよッ」
「うん」
「これじゃあ……本当に千代姉ちゃんの存在が否定されてるみたいじゃない」
「すずちゃん……こっちおいで」
まだ、学生の迷涼には分からない悲しみ、理解できない怒りなのだろう。
遥は、大丈夫大丈夫。と、彼女を優しく抱きしめて頭を撫でてやる。
この時、彼自身もとても悔しかった。愛おしい愛おしいと、あれだけ言っていた自分にも、何もしてあげられない事に、無力な自分に……。




