千代の過去編3
「千代姉ちゃんに、お兄ちゃんがいるの?」
話は、現在に戻り迷涼は思わず眉を寄せた。
そんな、深刻な表情を浮かばせる彼女を見て遥はその名前を口にした。
「千代のお兄さん名前は、二階堂 葵希」
「二階堂?千代姉ちゃんの苗字って……確か、如月じゃ……。それに……二階堂って……確か、高級化粧品会社の会長さんと苗字が同じ……。」
何故、迷涼がこんなにも詳しいかと言うと、二階堂グループは、中高大学生に大人気な化粧品会社が経営している「スノードロップ」と言うブランド。彼女も、いくつか持っている。
「え?! じゃあ、千代姉ちゃんて…… 二階堂グループの会長令嬢?! 」
「そうなるな」
遥は、何処か悲しい表情を浮かばせて説明を始めた。
「でも……なんで?如月って……名乗っているの?」
「それは……」
遥は、口を噤んだ。再び、口を開こうとした瞬間、彼の後ろから声が聞こえる。
「ちゃんと……話してなかったね」
「千代姉ちゃん!?」
「千代!?」
そこに居たのは、辛そうにリビングの壁に寄り掛かり、悲しそうに微笑みながらこちらを見ていた千代だ。
今にも倒れそうな体を、慌てて遥は支えになる。
千代は、遥に『ありがとう』とお礼を言ってから彼の座っていた椅子に腰を下ろした。
その横に、彼も腰を下ろした。
「私の本当の名前は、二階堂 千代。二階堂グループ『スノードロップ』の会長令嬢……ずっと黙っててごめんなさい……」
「え? 遥ちゃんは、知ってたの?」
「うん……ずっと前から、ちなみに千代のお兄さんにも会ったことあるで」
「でも、なんで?……隠してたの? 」
千代は、迷涼の質問に一瞬、言葉を失った。
「私は……二階堂家から、逃げてきたの」
「え?」




