スキー&温泉旅行5
そして、三人の家族旅行が始まった。…と、遥は思っていた。
現地の旅館に着くなり、遥が見たくない顔が勢揃い。
七倉に、笹木部兄弟。
悪夢だ。思わず、眉間にシワがよる遥。
車から、荷物を下ろしていた千代に近付く七倉に、彼女は驚いて軽く声を上げた。
「うわっ!び、っくりしたぁー!え?本当に来たの?!」
「千代…ちゃんと話しが…」
「いやぁー。大学教授って暇なん?簡単にお休みとって、人の彼女(仮)に手を出すなんて、指導者がしていいことなんかね」
「お生憎様、こちとらちゃんと仕事してるんで」
睨み合う、遥と七倉。
「で、本当に大学教授がお休みとって大丈夫だったんですか?」
「はい、ああ見えて七倉結構仕事できますので」
「俺たちもだけどね。ね!兄さん」
兄である龍夜の肩に、腕を回して迷涼の質問に答える。
再び、三人の視線は遥と、七倉。それを、ガン無視して、荷物を全て下ろし終わる千代。
「遥さん、早く部屋行きましょうよ。寒い」
「は、遥さん!?」
ーー この前は、『店長』とか『プリン』呼ばわりだったのに?!?
と、内心の焦りを隠せない七倉。
「ごめんごめん、中に入ろうか…千代」
千代の肩を抱き荷物を持ってやる遥たちの後を追う迷涼。
「もう、あんまり虐めないの」
「ごめんな、嬉しくて」
「嬉しい?」
「千代が、旅行期間だけでも恋人で要られるのが嬉しいんよ」
ニコリっ。と、無邪気に微笑む遥を見て、不覚にも胸が高鳴る。
「本当におバカさんですね!」
「ええやん」
前までなら、二人のこのやり取りを見るのが大好きだった迷涼。
なんか、本当の家族みたいって、夫婦みたいって思えた。
いつか、迷涼も遥みたいな優しくて、好きな人を一途に愛するような人と付き合うんだ。と、決めていた迷涼。
でも、今は……。
彼女の瞳に映るのは。
「んー?どないした?すずちゃん」
お顔が真っ赤やで?と、付け足す遥。
「な、なんでもないっ!!」
なんで、神様ってこんなにイジワルなのかな。




