スキー&温泉旅行編4
~スキー&温泉旅行 当日~
時刻は、朝の6時。
いつもより早く起きた遥、千代、迷涼。
朝食担当は、千代だ。
「たんと召し上がれ」
テーブルには、二つの皿に目玉焼きとトースト二枚が置かれていた。しかし、どう考えても一人分足りない。。。
遥の分が足りないのだ。千代は、何事も無いように自分の席に、腰を下ろす。
恐る恐る迷涼が、尋ねる。
「ち、千代ちゃん?は、遥ちゃんの分は?」
「だぁれ?ソレは」
完璧笑顔がこれまた、怖い。
「千代ちゃん…コレは、流石に可哀想だよ」
当の遥は、思わずショックの為硬直してしまっていた。
そんな彼を見て、諦めがついたようにため息を一つ着く千代。
「分かった分かったわ!ちゃんとあります」
彼女は、立ち上がり台所からお皿を取り彼の前に置く。
そこには、焼かれていない食パン2枚。
目が点になる遥。
「召し上がれ」
「千代ちゃん…せめて、焼いて…」
「そこなんだ…。」
遥は、一度立ち上がり千代に近付く。真剣な彼の瞳に、後ずさる。壁があり、行き止まり。
「千代…」
「は、はい」
手を振りかざされ、一瞬殴られるっと思い目を閉じる千代。
しかし、遥は彼女の頬に優しく手を添えた。
「店長???」
「堪忍な…僕、ヤキモチ妬いてもうた。千代には、僕だけ見てて欲しいねん…ダメ?」
「だ、ダメって言うか…その…っン」
気が付くと、唇を奪われていた千代。
「旅行の間だけでええから…僕のものでいて?」
彼女の肩に、おでこを添える。この行為は、彼がおねだりの証拠。
千代は、この行為にとても弱い。
「しょうがないなぁ…旅行の間だけ…てん…遥さんの彼女でいます」
その一言を聞いた瞬間、遥の曇っていた表情は、一気に晴天に変わる。
「千代ちゃん、ラブっ!!!」
「ぐはっ!」
力一杯、千代を抱き寄せる遥と、まるでカエルが潰れたような声を出す千代。
そんな、二人を見て本当は仲直りをした遥と千代を喜んであげないといけないのに、迷涼のココロが、チクリと痛んだ。
私…最低だ。
迷涼は、ココロの中でそう叫ぶ。
「すず?」
少しの間、上の空だったようだ。千代に呼ばれ、ハッと前を向くと心配そうな遥と、千代の顔。
「なんでもないよ!!ほぉら!2人ともご飯だよ?食べたら、早く行かないと!千代ちゃんも、遥ちゃんもご飯食べて!!」
食パンにジャムを塗り、いかにも元気という表情を浮かばせた迷涼。
この旅行で、この日常を愛していた遥たちを変えてしまう。




