スキー&温泉旅行編3
自室へと引きこもっていた千代。
パンダだらけのベッドに、倒れ込む。
その時の振動で、仕事用のバックが倒れた。そして、パンダの予定帳が顔を出す。
薄暗い部屋の中で、千代はその予定帳に手を伸ばして、一番最後のページに挟んである一枚の写真に目を止めた。
その写真には、まだ七倉と付き合っていた頃の写真。
確か、七倉の姉である陽菜が、撮ってくれたのだ。
今と余り変わっていない七倉と、髪を下ろしてオシャレな女の子らしい服装の千代。
好きだった。
いや、、、、今も好きなのか?
彼のことが?
千代は、自分でもわからなかった。
こんなこと、遥に言ったりでもしたら、また大騒ぎするだろう。
写真を、枕の下に入れて明日のスキー旅行の準備を始めた。
同じ頃の七倉宅。
「千代と、旅行かぁ~何年ぶりだ?」
いやぁ~と、腕を組みながら、胡座をかき、色んなことを思い出す。
「あ、確か……」
ハッと思い出し、ベッドの下の収納ボックスからなにやら古い写真立てを手に取る。
「やっぱり、あった」
写真立ての中には、一枚の写真。
「うわぁ……俺、若いわ」
千代が、持っていた写真とお揃いの一枚だった。
まだお互い、自分たちの写真を持っているのだ。
目を閉じると、思い出す。
『ちょっ!陽平くん!!近い近い!!』
くっつきたがる俺を、真っ赤な顔で退かす千代。
『いいじゃんいいじゃん!それよりさ、千代』
『な、なに?真剣な顔して』
『和装も好きだけど、ワンピースにゆるふわの、髪型もこれまた最高だな』
『もう、黙って』
まるで、リンゴのような顔で俺を睨みつける千代が、これまた可愛くて抱きしめた。
『ようへい、ちぃちゃん。写真撮るわよ?』
『おう!わりぃな、姉ちゃん!』
ハイ、爆ぜろ。と、言うと同時にカメラのシャッターを、押す陽菜。
この写真は、決して捨てられない七倉であった。
アイツも……まだ、持ってるかな?
なんて、考えてしまう。




