壊れてきた日常
「遥ちゃん!」
「店長!」
でも、けして二人の手を離さずに車を停めていた校門前まで連れてきた遥。
彼は、一度迷涼の手を離し千代の手を引っ張りそのまま抱き寄せた。
「なんで?」
「え?」
「大好き。て、言ってくれたやん……」
遥は、一度離れて彼女にキスを、落とそうとするが、避けられた。
「店長」
「やっぱり、さっきの男の方が……」
「違う……人がね……見てる」
「え?」
校門前でイチャついていれば、嫌でも目に映るだろう。
遥かは、堪忍な。と抱き締めていた千代の腕を解く。
が。
今度は、千代の方から彼を抱き締めた。
これには、近くにいた迷涼も驚く。
「千代ちゃん?」
「私が大好きなのは……どうしようもなく、寂しがり屋のおバカな遥さんだけですよ」
その言葉を、聞くと遥かは、嬉しさのあまり涙を流した。
「ずるいわ……キミは、僕の欲しい言葉ばかりくれるんやね」
「あと、泣き虫」
「それは、千代ちゃんもやろ?」
「そうだね」
ニコーっと、微笑む千代。
そんな、仲睦まじい遥と千代の姿を迷涼は、見ていた。
いつもなら、心が安らぐのに……何故なろう迷涼の胸がチクリと傷んだ。
ーー なんでだろう???
と、自分の胸に手を当てた。
三人は、とりあえず車の中に入る。
「ご飯どーする?」
「家の近くのスーパーで、買い物で良くない?」
「今日のご飯の担当は、ちぃちゃんだよ!」
後部座席から、迷涼の声が響く。
「任せて!今日のご飯はッ」
「「卵うどん」」
「なんでわかったの?!!?」
ふぁ!?と、遥と迷涼の顔を順番に見つめる。
車内は、笑いで満ちていた。
「だって、ちぃちゃんて卵うどんしか作れないやん」
「ふぁ?店長に言われたくない」
「なんで?」
クスクス、微笑みながら迷涼が尋ねた。
「店長なんか、肉じゃがしか作れないのよ?」
「ええやん、肉じゃが。ちぃちゃん、好きやろ?」
「好きだけどね」
この三人の中で一番、料理ができるのは迷涼のみ!と、言っても過言ではない。
そんな話しをしている間に、近所のスーパーに着いた。
「さてと、じゃあ買い物……」
ーープルプル
遥のスマホが鳴り響く。
名前を見た瞬間、彼の顔色が一気に雲がかかる。
「どうしたの?」
千代の顔も、曇る。
「大丈夫やよ。会社からや!先行ってて」
いつもの優しい笑顔を、貼り付けて千代の頭を優しく撫でた。
「分かりました」
「んーー!あとでな」
千代は、迷涼を連れて先にスーパーへと消えていく。
彼女たちが、居なくなったのを確認してから電話に出る遥。
「もしもし……」




